日経ビジネス電子版Special

行政サービスに訪れた変革の兆し 自治体のDXの先にある新しい社会

パソコンやスマートフォンを使ったオンライン申請など、行政サービスのICT化は着実に進んでいる。しかし、現状では紙による申請よりも職員の処理負担が増すといったように、業務効率やサービスの質を下げてしまうケースもあるようだ。なぜ、行政サービスはICTを活用しても効率化しないのか。そこには思わぬ“落とし穴”があった。

ICT化を進めると
業務負担が増えるというジレンマ

 あらゆるモノやサービスがオンラインで購入可能となり、食事の宅配や美容室の予約ですらスマートフォンの画面をタップするだけで完了する便利な時代である。新型コロナウイルスの感染拡大とともにステイホーム(在宅)が新しい生活スタイルとして定着する中、こうしたオンラインによる消費や注文はさらに日常化していくことだろう。

野澤 氏
ServiceNow Japan合同会社
第一営業統括本部
エンタープライズ営業本部
兼 公共・社会インフラ営業本部
営業本部長
野澤さゆり
20年以上外資系IT企業にて、ビジネスデベロップメント、プロダクトマーケティング、アカウント営業、アライアンス営業を経て、エリアマネージャー、営業本部長などの多様な経験を積む。Qualcomm、CAテクノロジーなどを経て、2019年ServiceNow Japanに入社。現在はエンタープライズ営業本部 兼 公共・社会インフラ営業部の本部長として、日本市場での「働き方改革」や「デジタルイノベーション」を推進。

 もちろん、行政サービスも例外ではない。すでにコンビニエンスストアに設置された情報端末などから住民票や印鑑証明などを入手できるサービスが始まっている。しかし、日本における行政サービスのICT化は、市民には便利でも、サービスの担い手である職員の業務負荷を増大させるという課題を抱えているケースが少なくないようだ。

 それを象徴するのが、今年5月から始まった新型コロナウイルス対策として一律給付される、1人当たり10万円の特別定額給付金のオンライン申請を巡る混乱である。いくつかの自治体では、受け付け開始からほどなくしてオンライン申請を中止。郵送による申請に一本化せざるを得なくなったことが報じられている。

 「郵送による申請では、まず申請用紙に手書きで必要事項を記入しなければならないのが面倒ですし、身分証や銀行口座の証明をコピーするために外出しなければなりません。そうした不便やリスクを抑えるためにもオンライン申請は有効な選択肢だったのですが、ただでさえ新型コロナウイルスの感染拡大によって職員の業務負担が増大する中、オンラインによる申請がさらなる負担となってしまい、やむにやまれず中止に追い込まれてしまったのではないでしょうか」と語るのは、ServiceNow Japanの野澤さゆり氏である。では、どうすれば特別定額給付金のオンライン申請は継続できたのだろうか。

三木 氏
ServiceNow Japan合同会社
第一ソリューションコンサルティング統括本部
エンタープライズ 兼 公共・社会インフラソリューションコンサルティング本部
本部長
三木 啓一
日系ITベンダーを経て、2007年に日本ヒューレット・パッカードに入社し、ソフトウェア事業部にてプリセールスコンサルタントを経験。17年1月にServiceNow Japanに入社しソリューションコンサルタントに従事。20年1月よりエンタープライズ 兼 公共・社会インフラソリューションコンサルティング本部の本部長に就任。日本市場での「働き方改革」「デジタルトランスフォーメーション」を推進。

 職員の負担を大きくした原因の1つに、オンライン申請を郵送申請と同じ手順・確認作業で行ったことがある。「オンラインで入力された申請者の情報が間違っていないか」「必要書類の画像が正しく添付されているか」といったことを、職員が1件1件照合していては、受付方法が増えるほど、より多くのマンパワーが要求されるのは明らかだ。

 「オンライン申請の確認作業を人の手を介さずに、システム上で『入力間違いをチェック』『問題なければ支払い手続きに移行』『1つでも間違いがあれば申請者に戻す』といった一連の流れが自動化されていれば、職員の業務負荷が大幅に軽減される上に、精度もスピードも上がる。市民と自治体とがウィンウィンの関係を実現できたはずです」

 そう語るのは、野澤氏と同じくServiceNow Japanで公共・社会インフラ向けソリューションを担当する三木啓一氏である。

 これを可能にするのが、あらゆる業務をエンド・トゥ・エンドで自動処理するソリューションである。次のページから、その仕組みについて詳しく解説しよう。

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