日経ビジネス電子版Special

企業を脅かす身近な脅威「不正経費問題」に対峙する Vol. 2
企業を脅かす身近な脅威「不正経費問題」に対峙する Vol. 2

企業における不正支出、業務上横領などの不祥事は依然として後を絶たない。経費精算の不正が発生するたびに経理部門にはチェック業務の負荷が重くのしかかる。不正はなぜ発生するのか、どう防げばよいのか。本企画では、調査に基づく不正経費の実態と有識者による考察、ならびにソリューション提供側から見た課題と解決策をそれぞれお届けする。

Vol.2 コンカー×NTTデータ・スマートソーシング 社長対談 経費精算業務のデジタル化は「DXの1丁目1番地」 Vol.2 コンカー×NTTデータ・スマートソーシング 社長対談 経費精算業務のデジタル化は「DXの1丁目1番地」

企業は不正支出問題の解決にどう取り組んでいけばよいのか。経費精算のクラウドサービスで国内トップシェアを占めるコンカーと同社のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)パートナーであるNTTデータ・スマートソーシング、両社のトップに話を聞いた。

モデレーター
日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員 大和田尚孝

理想は経費精算自体をなくすこと

――日本CFO協会の調査でも、財務・経理の担当者の多くが「経費精算の不正を見聞きした経験がある」という実態が明らかになっています。企業としてはどのような心構えや備えが必要でしょうか。

和田 まずは従業員に対しコンプライアンス厳守の教育を徹底することが重要です。社内規程を定期的に伝達することで理解を促し、違反があった場合はその事例を教え込む。それに加えて、経費管理システムを活用してチェックを厳格に行うことができる仕組みを構築することが重要だと考えています。

三村 経費管理システムをご利用いただくお客さまの傾向として、以前の「不正を抑止するために従業員の生産性を犠牲にしてシステムを強化する」という考え方から、最近では「働き方改革の一環として生産性向上を重視し、その実現のためにシステムを導入する」という動きが広がりつつあります。したがって、企業としてはガバナンスと生産性のバランスをどう取っていくかが今後の大きなテーマになると思います。

――膨大な数の経費申請の中から怪しいものを見つけ出すのは至難の業です。経理業務の現場ではどんな課題があるのでしょうか。

和田 コロナ禍における現場の課題として、紙で処理しなければならない業務が残っているため月末・月初などに出社を強いられていることが挙げられます。不正を探すのは内部監査の仕事であって経理本来の役割ではありませんが、チェックはしなくてはなりません。しかし人手で対処するには限界がありますのでツールを活用する必要があります。そこで当社ではAIで経費不正を検知する「「Fraud Checker(フラウドチェッカー)」」というチェックツールを開発しました。まず社内で利用しようと2019年から使い始めています。Fraud Checkerは、コンカーの経費精算システムのデータに出退勤や入退室のデータ、飲食店など支払先のデータを突合して監査するシステムです。ただし、こうしたチェックツールを効果的に運用するには、費用対効果を考え、ある程度の割り切りが必要だと思っています。

三村 確かに海外企業ではそのような割り切りが是認されますが、日本企業は不正をゼロにしようという志向が強く、特に事前申請や事前承認などの前工程で対処しようとするため、手続きが複雑になりがちという状況が見受けられます。経費精算をシンプルにするには、前工程でのチェックから後工程でのチェックにシフトし、蓄積したデータをAIでチェックする形にしていくべきでしょう。

 理想は経費精算という業務自体をなくしてしまうことです。支払いを現金からキャッシュレスに移行することで、経費精算申請、承認までのすべてのフローをシステムで対応することができます。データは自動で蓄積されますから、それをAIでチェックし規程違反や不正を抽出すればよいのです。事前申請や事前承認といったプロセスをなくし、正しく経費を使えばお金が即座に戻ってくる世界を実現していきたいですね。

NTTデータ・スマートソーシング代表取締役社長 和田泰之氏、コンカー代表取締役社長 三村真宗氏、日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員 大和田尚孝
(写真左から)NTTデータ・スマートソーシング代表取締役社長 和田泰之氏、コンカー代表取締役社長 三村真宗氏、日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員 大和田尚孝

ユーザーの約半数がBPOサービスを併用

――経費精算の承認業務をサポートするコンカーの「Audit(オーディット)サービス」の特長と、アジアで初めてSAP Concur BPOパートナーになったNTTデータ・スマートソーシングの強みをお聞かせください。

和田 コンカーから受託して運営しているAuditサービスは大きく2つのサービスから構成されています。経費精算レポートの入力情報と領収書の情報を突合して正しく入力されているかを監査する「領収書監査サービス」と、経費精算レポートの申請内容が会社の規程に合っているかを監査する「規定監査サービス」です。いずれも目視で行っています。

 約40人のオペレーターが専任で担当していますが、コンカーから提供いただいているBPO向けのプラットフォームのおかげでミスも少なく、スピーディーな対応が実現できています。コンカーによる経費規程の自動チェックと同様に、Auditサービスが正としない申請は差し戻しますから、けん制効果はあると考えています。

 もともと2013年にコンカーのシステムを見てその素晴らしさに感動し、2015年からパートナーとして協業させていただいています。青森にユーザーサポートデスクを設け、日本企業の要望に応える個別BPOのメニューを設けるなど、この協業を拡大しており、現在では多くのお客さまにご利用いただいています。

1. Receipt Audit (領収書監査サービス)または2. Policy Audit (規程監査サービス)
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目視による領収書画像の確認や規程違反のチェックを代行することで承認者の負荷を軽減。生産性の向上に加えて、「第三者視点で見られている」という認識の下、不正を防止し、従業員の意識改革を推進する

――Auditサービスのメリットはどんなところにあるのでしょうか。

三村 経費精算などの間接業務は極力スリム化し、コア業務にシフトしていくべきでしょう。Auditサービスをはじめとするコンカーの各製品はそのためのクラウドサービスです。

 BPOも同様で、システムを利用するだけでなく、それに関わる業務もまとめて引き受けるものです。従来、経理部門や業務部門の担当者が実施していたチェック業務をBPOに任せることで、その担当者はこういった間接業務に割いていた時間をコア業務に充てることができます。本BPOサービスは、日本市場への導入以来大変ご好評をいただいており、現在では49%のお客さまがクラウドサービスとあわせて利用されています。

 大手企業グループのシェアードサービス企業の多くは、グループ各社の業務プロセスがバラバラでスケールメリットが出せずに苦労しています。しかし、コンカーを使うことで業務プロセスを標準化することができ、グループ横断のサービスとしてご利用いただけます。加えて、リソースが共有できるので、負荷を分散させて繁閑期の差を埋めることができます。

 また、オペレーターは専業でモチベーションが高い担当者を揃えており、専用のチェックツールをあわせて活用することで、コストを抑えながら高い精度のサービスをご提供することができます。このAuditサービスを導入することで、担当者のチェック作業などにかかる業務時間を48%削減するなど、高い効果を上げています。

Auditサービスによる業務削減効果
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出所:コンカー試算 *1:内容により削減率は変動