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事業承継フォーラム

 新型コロナウイルス感染症の出現によって、従来の⽣活様式や勤務スタイルが一変し、これまでの事業の在り方が大きく変わってしまった2020年。

 しかも、近年は台風や震災といった自然災害の脅威も社会に大きなダメージを与えており、こうしたさまざまなリスクに備えながら、事業継続力の強化に務めることが、今後の中小企業経営者に求められる課題といえる。

 その一方、現在の中小企業は経営者の高齢化が極めて深刻になっており、事業承継の問題は待ったなしの状態が続いている。後継者不在の会社は年々増えつつあり、それが原因で廃業に追い込まれるということも少なくなく、地域経済にとって大きな損失にもなりかねない。こうした中小企業の現状から何が見えてくるのか。中小企業基盤整備機構 事業承継・再生支援部審議役の木口慎一氏に話を聞いた。

木口 慎一 氏
独立行政法人
中小企業基盤整備機構
事業承継・再生支援部審議役
木口 慎一 氏

 「(平均引退年齢である)70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は、2025年には約245万人となり、うち約半数が後継者未定の状態です。これを放置すると、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われるといわれています。特に地⽅における⾼齢化が深刻で、地⽅経済の再⽣や持続的な発展のためには、事業承継の問題解決が急務といえるでしょう」(⽊⼝⽒)

 全国の事業引継ぎ⽀援センターに寄せられる事業引継ぎの相談件数は近年増加傾向にあるという。令和元年度の相談社数は1万1514社となり、過去最高を記録。今年度はコロナ禍の状況にも関わらず、ほぼ前年並み(11月末時点で前年同期比97%)に推移しており、ニーズは着実に増えつつある。

 しかし、まだ多くの経営者は、事業承継への取組みを後回しにしてしまうことが多いのが実態だが、事業承継による世代交代は、後継ぎの確保というだけでなく、会社の業績や売上等にも影響するということがわかってきている。「経営者の年代別による直近3年間の売上高の傾向を示したデータを見ると、30代が51.2%と最も多く、次いで20代以下の38.9%となっています。30代をピークに年代が上がるにつれて、売上高が増加した割合が低下しています。つまり、若い経営者ほど売り上げが増える傾向にあり、企業の成長や経営革新には、経営者の世代交代が有効であることが分かります。事業承継による経営者の世代交代は、事業の拡充はもちろん、地域経済の活性化にもつながります」(木口氏)

直近3年間の売上高の傾向(経営者の年代別)
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 早期から事業承継に取り組み、できるだけ若い世代に経営をバトンタッチすることが、自社を発展させるきっかけ作りになるといえるだろう。

 今回の「事業承継フォーラム」は、そんな若い世代への架け橋となった企業をピックアップ。創業100年の和菓子の老舗「恵比須堂」(福井県)と、西陣織の製造に始まり、時代とともに最先端技術を融合させた製品作りを目指した「ミツフジ」(京都府)の両社の新旧経営者が登壇し、事業承継の一部始終を振り返ります。旧経営者はこれまで培った経験を伝えつつ、次世代経営者のイノベーションを後押し。一方、新経営者は伝統の技を継承しながら、若い感性による新たな付加価値のある新商品開発に取り組んだ例を、パネルディスカッション形式で紹介します。

事業引継ぎ支援センターが今春、業務範囲を拡大

 事業承継を検討している中小企業には、まさに今が追い風といえるだろう。

 「政府が積極的に後押ししており、後継者が決まっている人には、税制面の優遇や補助金制度、経営者保証の解除等の支援制度があります。また、後継者不在の人には、事業引継ぎ支援センターが第三者承継の支援を行います。なかでも第三者承継は近年増加しており、同センターの成約件数は、令和元年度には年間1000件を突破しました。小規模な企業でも第三者への承継が十分可能です」(木口氏)

 事業引継ぎ支援センターは、今春より業務範囲を拡充し、第三者承継に加え、親族内承継の相談や事業承継ネットワークの業務までをカバーするようになる。事業承継を検討している経営者にとっては、まずはセンターに相談してみる、というアクションを起こしやすい環境が整ったといえるだろう。

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