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海外子会社との 連結経営管理を高度化 NECの戦略から見えたデータドリブン経営の一つの答え

データドリブン経営の重要性が叫ばれる一方で、個人情報を含めデータの取得を制限する様々な規制が増えている。そうした相反する状況の中で、日本のエンタープライズ企業はいかにCX(顧客体験)を高めていくべきなのか。NECの榎本 亮 執行役員兼チーフマーケティングオフィサー(CMO)に、日本オラクルの三澤智光 執行役社長が聞いた。

歴史の長い企業ほど
情報発信の“落とし穴”を抱えている

榎本氏
日本電気株式会社
執行役員兼チーフマーケティングオフィサー(CMO)
榎本 亮
アーサー・アンダーセン(後のベリングポイント)でコンサルティング業務などを担当。09年から14年まで日本IBMで理事。14年、セールスフォース・ドットコム日本法人の執行役員に就任。15年からNECの執行役員、コーポレートマーケティング本部を担当し、17年4月からCMOを務める。

三澤:榎本さんは、大企業と呼ばれる日本のエンタープライズ企業が、データ利活用を進める上での課題とは何だとお考えでしょうか。

榎本:その課題に対する一つの答えとして、当社の事例を紹介させてください。120年企業であるNECは、お客様との長いお付き合いによって築き上げた信頼関係をビジネスのベースとしている企業です。それが、COVID-19によって急速なマーケティングのデジタル化を迫られました。しかも、それと並行する形で個人情報保護に対する社会的な意識も高まり、板挟みのような状況に追い込まれたわけです。

 デジタルでの情報発信においては、とくにお付き合いの深いお客様ほどオプトインが不明確でした。もちろん、お客様のデータベースは持っているので、出そうと思えば何十万というお客様に一斉メールを出すことはできます。しかし、出してもいいのか。お付き合いが深いがゆえに、許諾についてはグレーな部分が大きかったのです。

 そこで、2020年7月に大きなデジタルイベントを行ったときに、ご招待するお客様の役職に関係なく、きちんとした説明の下、NECの個人情報の考え方にご賛同いただいた上でIDとログインの手続きをお願いすることにしました。本当の意味でデジタル社会のマーケティングに使える顧客データベースというものを、COVID-19が発生した2020年の春先から7月に向けて急速に整備したのです。

 歴史の長い会社ほど、当社と同じような“落とし穴”を抱えている可能性があると思います。

三澤氏
日本オラクル株式会社
執行役社長
三澤 智光
1987年、富士通に入社。95年、日本オラクルに入社。専務執行役員テクノロジー製品事業統括本部長、副社長執行役員データベース事業統括、執行役副社長クラウド・テクノロジー事業統括などを歴任。2016年、日本IBMに入社し、取締役専務執行役員IBM クラウド事業本部長などを務める。20年10月にオラクル・コーポレーションのシニア・バイスプレジデント、同12月に日本オラクル執行役社長に就任。

三澤:榎本さんが指摘されたように、急速なデジタル化と個人情報保護意識の高まりの中で、データ取得をどう考えるかというのは非常に重要なことです。

 今、グローバルではGDPR(EU一般データ保護規則)や米中貿易摩擦の高まりなど、情報の取り扱いに関する制限が厳しくなっています。もっと身近なところでは、GAFA規制やCookie規制ですね。データドリブン経営が叫ばれているので、本来ならデータ活用を考えなければいけないのですが、世界を取り巻く情勢を見ると、データを活用することに対して若干慎重になっているわけです。

 また、情報セキュリティの観点で言うと、「活用」と「データを守る」ということは相反するので、それをどう両立させるか。これは経営レベルが考えるべき課題だと思います。

 営業・マーケティングにおいては、今までのようなサードパーティCookieを利用した広告アプローチはほぼ難しくなっています。ということは、自社内に精緻なCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を作らないと効果的なアプローチが難しい時代になってきている。この点を理解しているお客様は少ないので、それに対してどうアクションを取っていくかが日本オラクルの重要なテーマだと思っています。

NEXT/情報を得ることで顧客に価値をもたらすウィンウィンの関係が必須