日経ビジネス電子版 Special

DXとセキュリティは同時に進めなければならない 2つのDXを推進する横河電機の哲学

コロナ禍によって
業務の仮想化が一足飛びに進む

 社員が出社しなくても、リモートや自動化の技術で業務が問題なく回り、生産性や顧客への提供価値は、むしろ向上する──。これが、横河電機が目指す「デジタルエンタープライズ化」の理想像だ。その実現に向け、少しずつ社内業務の変革を進めてきた。

 その取り組みを一気に加速させたのが、2020年初めに発生した新型コロナウイルス感染症の拡大である。

 「感染が拡大し始めた20年2月には、すぐさま原則出社禁止の方針を打ち出しました。ところが、在宅勤務のための制度は整っていたものの、リモートワークのためのインフラが追いついていませんでした。そこで、3月から6月にかけて、クラウド上で仕事が回せる環境を急いで整えたのです」と舩生氏は振り返る。

 グローバル全体で1万7000人を超える社員をリモートワークに移行させるのは容易ではなかった。一人ひとりの「働き方」に対する考え方や、ワークスタイルそのものを抜本的に変えさせる必要があったからだ。

 「非常に負荷のかかる緊急対応でしたが、数年がかりで取り組むはずだったリモートワークのためのインフラ環境整備が、たったの3カ月で完了しました。そして、これをきっかけに目標とするデジタルエンタープライズ化を、一足飛びで推し進めようということになったのです」と舩生氏は語る。

 その第一歩として、コロナ禍への緊急対応が終了した後、横河電機は「Moving to Virtual」(仮想への移行)というグローバルプログラムを立ち上げた。

 「担当する装置や設備に故障、不具合などが生じたら、すぐに対応しなければならないので、現場に張り付かざるを得ないのは当然です。しかし、そんな状況のままでは工場やプラントが“密”になり、クラスターが発生する恐れもある。そこで『Moving to Virtual』では、現場のリモートエンジニアリング(遠隔によるエンジニアリング業務の提供)、リモートサービス(遠隔によるメンテナンスサービスの提供)を中心に、7つのプロジェクトを立ち上げ、業務の仮想化をさらに推し進めました」と舩生氏は説明する。

インターナルDXで得た知見を基に
顧客企業のDXを支援する

 前述したように、横河電機は、DXを「インターナル」と「エクスターナル」の両面で推進していく方針を掲げている。

 インターナルDXは、社内各部門のデータと業務プロセスをつないで、プロセスの流れを整流化、適正化、自動化するものだ。これにリモートワークの環境を組み合わせ、社員が出社しなくても、仮想化された業務環境の中でビジネスが回る仕組みを作ろうとしている。その究極の姿こそが、横河電機が目指す「デジタルエンタープライズ化」なのである。

 舩生氏は、「インターナルDXではありますが、その範囲は社内だけに限定せず、お客様やサプライヤーまで広げていきたいと考えています。バリューチェーン全体として最適化された業務プロセスを実現したいのです」と語る。

 一方、エクスターナルDXは、横河電機がインターナルDXで培った知見、ノウハウを基に、顧客企業の「デジタルエンタープライズ化」を支援する取り組みと位置付けている。

 「当社がコロナ禍をきっかけにリモートオペレーションに取り組み始めたように、お客様である石油・ガス会社や化学メーカーでも、プラントの遠隔運用に本格的に取り組もうという気運が高まっています。これに対応し、IIoT(製造業向けIoT)やAIを活用しながらリモートオペレーションを行うための基盤として、『Yokogawa Cloud』というサービスの提供を開始しました」(舩生氏)

 これを実現するため、横河電機はOTとITの知識を兼ね備えたエンジニアの育成にも力を入れているという。

 横河電機がエクスターナルDXに積極的に取り組んでいるのは、顧客を取り巻くビジネス環境も急速に変化しているからだ。

 「お客様が時代の要請に応えながら変化し続けることが、私たちの事業継続にもつながるのですから、エクスターナルDXは非常に重要な取り組みです。今後も社内での変革をさらに推し進め、知見とノウハウを蓄積して、お客様のDXを支援していきます」

 舩生氏は、「DXを推進する上では、万全のセキュリティ対策が欠かせない」と考えている。データと業務プロセスの連携が緊密になればなるほど、ひとたび脅威にさらされたとき、ビジネス全体にもたらされる障害のインパクトも大きくなるからだ。

 そして、その脅威に対応するために選んだのがServiceNowだという。

横河電機のDX方針

横河電機のDX方針
横河電機は、「インターナルDX」で自社のデジタルエンタープライズ化を推進し、その知見とノウハウを基に、顧客のDX(エクスターナルDX)を支援する方針を掲げている。