日経ビジネス電子版 Special

製造業が目指すべきITガバナンスとは 不確実性への対応力を高める経営基盤

製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性は誰もが痛感しているが、行く手には多くの課題が立ちはだかっている。中でも大きな障害が経営者のイニシアチブ不足と、ITガバナンスへの対処だ。これらの課題との向き合い方について、リコーの小林一則氏と、ServiceNow Japanの原 智宏氏が語り合った。

「いずれ紙はなくなる」
危機感をバネにデジタル変革を推進

原: 本日はよろしくお願いします。本題に入る前に、なぜ日本の製造業は今、DXに正面から向き合うべきなのかということを一度整理しておきたいと思います。

 これまで日本の製造業は、現場の改善の力によって競争力を形作ってきました。しかし、取り巻く経営環境が激しく変化する中で、現場による改善だけではビジネスの継続性を担保できなくなってきています。

 現場の強みを生かしていく上でも、デジタルテクノロジーを積極的に使うことが必要であり、それが競争力を高めるためのカギとなってきているのです。

 ですから、もはや製造業には「DXに取り組まない」という選択肢はありません。今日のようにテクノロジーが自由に使えるようになり、かつては数年がかりで構築していた大がかりなシステムが、クラウドですぐ導入できるようになったのですから、使わない手はないと言えます。

小林 氏
株式会社リコー
理事
デジタル戦略部 基盤開発統括センター 所長
小林一則
1990年リコー入社。欧州勤務を経て2019年3月に帰国。デジタル推進本部の本部長として、社内IT、ならびに社内のデジタル変革をリード。21年4月より、社内ITの責務に加え、Cloud Application向けの技術基盤、AI/ICT技術基盤の開発統括責任者として、リコーの変革を技術面から支える。

小林:おっしゃる通りだと思います。何に、どう取り組むか、ですね。

原: 製造業が本腰を入れてDXに取り組むには、まず「何のためにやるのか?」という課題を明確にすることが大切です。まず、小林さんにお聞きしたいのですが、リコーはどんな課題に挑戦されようとしているのでしょうか。

小林:私たちリコーは、すでに何十年も前から存在価値を問われ続けてきました。「いずれ紙はなくなる」と言われ続け、危機感の中で事業をしてきたのです。

 コロナ禍による働き方の変化とともに、その危機感は現実のものとなりました。これまでも、今も、社内では「自分たちはどうなりたいのか?」「どうあるべきか?」という議論が真剣に行われています。

原: コロナ禍で、お客様企業における従業員の出社率が低下する中で、従来のリコーが提供してきたサービスモデルが立ち行かなくなりつつあるわけですね。3~5年先に起こるだろうと思っていたことが、急にやってきたという感じでしょうか。

小林:近い将来こうなるだろうと予想していたものが、現実に目の前で、突然起こってしまいました。とはいえ、お客様の中には、今まで通りの働き方を急には変えられないという方もいらっしゃいます。

 これまで通りのサービスをしっかり提供することに加え、何を新しく提供できるのかということを考えなければなりません。

 ところで、ServiceNowでは数多くの製造業のDXを支援されていると思いますが、他社はどんな悩みを抱えているのでしょうか。