台風や地震、新型コロナウイルスの感染拡大など、毎年のように「想定外」の出来事が企業を直撃している。
東日本大震災から10年、中小企業の経営者は今、何をすべきなのか。
近年、中小企業を取り巻く経営環境が急速に変化している。さらに新型コロナウイルスの感染拡大や、台風や水害などの大規模災害が相次ぐ中、いかに対応し、事業の継続力を強化するか、が課題になっている。
政府は2019年7月に施行された「中小企業強靱化法」に基づき、中小企業が自ら作成する「事業継続力強化計画」や、複数の企業による「連携事業継続力強化計画」の作成を推進している。防災・減災の事前対策となる計画について国の認定を受けた中小企業は、補助金の加点や、日本政策金融公庫による融資、信用保証枠の拡大などの支援措置を受けることができる。
事業継続力の強化は、単に地震や台風、水害などの有事の備えのためだけに必要なわけではない。取引先からの信用力向上や、経営の棚卸しをすることによって、業務改善やコスト削減などの平時の経営力強化につながる。
中小企業や事業者の事業継続力強化への取り組みをサポートするため、商工組合中央金庫、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)、一般社団法人中小企業診断協会、日本政策金融公庫の政府関係機関4者が、全国中小企業強靱化支援協議会を設立した。各団体がそれぞれの強みとネットワークを活用し、計画策定の支援や支援人材の育成、専門家によるコンサルティングや金融支援を行っている。
中小機構は事業継続力強化に関するシンポジウムやセミナーを通じて施策を周知している。
2020年秋に「中小企業『強靱化』シンポジウム」を実施。9月プレセミナーでは、成長戦略としてのBCPに着目した株式会社賀陽技研の平松稔代表取締役が、取り組みを通じた社員の変化や、新卒採用での成果、ブランディング効果について講演した。
10月には第1回シンポジウムを東京会場とオンラインの同時ライブ配信で開催した。北海道ナンバーワンのコンビニエンスストア「セイコーマート」を運営する株式会社セコマの丸谷智保会長が、2018年の北海道胆振東部地震で北海道全域295万戸が停電する中、95%以上の店舗が営業を続け、被災直後の市民の生活を支えることができた理由や、地震への対応を契機とした平時業務の効率化などについて語った。
後半のパネルディスカッションでは株式会社生出の生出治社長、特定非営利法人事業継続推進機構の伊藤毅副理事長、日本気象協会の木村知世子氏が中小企業の事業継続力強化について意見を交わした。2021年2月には第2回シンポジウムを開催する予定だ(参照)。
また、具体的な計画の作成、申請をサポートするため「事業継続力強化計画対策セミナー」を開催している。このセミナーは①オンラインによる基礎講座②対面またはオンラインによる計画策定演習、両者を同時に受講できる講座演習セット(基礎講座+計画策定演習)の3つのプログラムがある。
計画策定演習は実際の申請に利用できる計画書を作成する体験型講座。他の参加者とそれぞれが立案した計画書について意見交換も行う。なかなか他の企業の取り組みを知る機会は少ない。他社の取組みを見ることで自社の強みや課題に気付き、経営の見直すヒントになるだろう。
このほか、専門人材を派遣して具体的に計画の作成を支援している。中小機構では、特に「連携事業継続力強化計画」(連携型)を重視する。
「中小企業・小規模事業者による事業継続力強化計画の認定件数は2020年11月時点で約1万8000件となっており、そのうち「連携型」は80件。複数の企業が連携して経営資源を補うことで、単独ではできない緊急時の対策を実現するとともに、平時の経営力がより強化されることも期待されることから、連携体の組成から支援して「連携型」の計画策定を推進します」(中小機構担当者)
2011年3月11日の東日本大震災から10年。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、改めて事業継続への備えや、経営の強靱化の重要性が注目を集めている。
地震、風水害や感染症をはじめ「想定外の事態」を予想することは不可能だ。しかし想定外の事態が発生した時にどのように事業を立て直し、我が社を存続させていくかを考え、経営を見直し続けることが、強みを伸ばし、積極的な事業展開にもつながる。事業継続・強靱化対策は計画書を作るだけではない、日々の経営そのものなのだ。
URL:https://www.smrj.go.jp/sme/enhancement/kyoujinnka/index.html