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令和3年度 中小企業「強靱化」シンポジウム

 台風や地震、新型コロナウイルスの感染拡大など、毎年のように「想定外」の出来事が企業を直撃している。

 東日本大震災から10年、中小企業の経営者は今、何をすべきなのか。

 近年、地球温暖化などによる影響で、台風や集中豪雨、河川氾濫、土石流など大規模な自然災害が全国各地で頻発している。加えて、今後30年の間に約70%の確率で南海トラフ、首都直下型の地震が発生すると予測されている。こうした自然災害と常に隣り合わせにある状況は、日本が世界から「災害大国」と言われるゆえんだ。

 ひとたび災害が起き、企業が長期間の操業停止になれば、関連するサプライチェーン全体にも混乱が波及する。そうした事態を回避するためにも、経営者は事前に起こりうる災害を想定し、緊急時でも早期に事業を立て直せる仕組み作りが欠かせない。現在、企業にとって「事業継続力の強化」が今まで以上に求められているといえる。

 中小企業庁は、中小企業の自然災害等に対する事前対策(防災・減災対策)を促進するための「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(中小企業強靱化法)」を提出し、国会での審議を経て、2019年7月16日より施行された。さらに、現在新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていることを踏まえ、昨年10月1日からは感染症対策に関する事業継続力強化計画の認定が始まっている。

 事業継続力の強化は、企業にとってメリットが多い。事業継続力強化計画(ジギョケイ)を策定し国から認定を受ければ、取引先からの社会的な信用力向上につながるほか、ものづくり補助金において、審査の際に加点を受けることもできる。また、事業継続のための課題をクリアしていくことで、コスト削減や作業効率アップといった収益面向上への期待や、日々の訓練を通して従業員に周知させることで、平時より安全面向上への意識を高めることもできる。

 この中小企業強靱化法を推し進めるべく、中小企業基盤整備機構、中小企業診断協会、日本政策金融国庫、商工組合中央金庫の4機関で、全国中小企業強靱化支援協議会を設立した。これらの機関が情報を共有し、それぞれの強みを生かすことで、中小企業の事業継続力強化計画の策定、専門家によるコンサルティングや融資の相談などを行っている。

先月防災の日(9月1日)に、
中小企業強靱化の情報ポータルサイトが一新した。

 「BCPはじめの一歩 事業継続力強化計画をつくろう!」としてフルリニューアルした同サイトには、事業継続力強化計画の書類作成方法や申請方法といった手順を具体的に解説しているほか、すでに事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業の事例、事業継続力強化に役立つ情報などを掲載している。これからジギョケイに取り組む中小企業の経営者にとって、大いに参考になる内容ばかりだろう。

 そして、令和3年度 中小企業「強靱化」シンポジウムを10月27日(水)にオンラインで開催する。基調講演には、西松屋チェーン 代表取締役社長に昨年就任した大村浩一氏が登壇し、業績を短期間で回復させた経緯や、取り組んだBCP対策についてお話し頂く。

 後半のパネルディスカッションでは、辻野建設工業 代表取締役 辻野浩氏、近藤印刷 代表取締役社長 近藤起久子氏、迫田運送 代表取締役社長 迫田浩荘氏、カメダライン カメダグループ常務取締役 亀田康寿氏の4名に参加いただき、「連携」による事業継続力強化計画に取り組んだ理由を伺う。複数企業からなる“連携型”は、より強固な事業継続力の強化につながるが、あえて連携型に取り組んだ各経営者の思いは、大変興味深い内容ばかりだ。

 事業継続力強化計画について、より具体的なアクションを起こしたいと考えている経営者や災害担当者は、中小企業基盤整備機構が主催するオンライン実践セミナーや専門家派遣(ハンズオン)支援への参加をおすすめしたい。実践セミナーでは、約4時間の講義で認定申請までのプログラムを受けられるようになっている。ハンズオン支援では、事前対策・課題の検討や具体的な策定について、専門家の派遣による個別支援を実施している。

 毎年のように、全国各地で自然災害が起きている。だが、“自分だけは大丈夫”だと考え、何の対策もしていない中小企業はまだ多い。事業継続力強化計画は本当に必要なのか? そう思っている経営者は、自社の本拠地、営業拠点、倉庫、工場など主要設備がある場所のハザードマップを確かめられてみてはいかがだろうか。自社に地震や風水害のリスクはないか、そこに注目するだけでも事業継続力強化に踏み出す第一歩になるのだ。

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