最新のビジネス状況や目標数値を
必要なときに確認できる
財務・経理業務の領域で取り組んだのは、決算業務プロセスの見える化と、会議で使用する報告資料のダッシュボード化だ。直近のデータや目標数値などをリアルタイムに可視化したダッシュボードを作成することで、必要な情報を必要な人がいつでも確認できるようにした。
KDDI株式会社
コーポレート統括本部
コーポレートシェアード本部
コーポレートDX推進部 BPR推進グループ
グループリーダー
鳥井 太貴氏
これにより、紙の会議資料をまとめる作業が不要になったほか、それまで見えなかったことが見えるようになり、新たなアクションを起こせるようになった。「Domoは、目の前の課題を解決するのみならず、組織にDXのマインドを根付かせる上でも有効なツールだと思います。我々はバックオフィス業務が主なので、業務改革に取り組んだり、その成果を感じたりする機会はそれほど多くありませんが、Domo活用の過程ではそのような体験ができます」と鳥井氏は強調する。
財務・経理の領域で成果を上げたDomoは、すぐにほかの部門から注目を集めることになる。そこで同社は「Domo事務局」を編成し、社内への横展開に力を入れることにしたという。
「押しつけられたツールでは活用は進まない」との考えから、導入判断は各部門に任せている。そのため浸透はゆるやかだが、利用開始から数年をかけていくつかの注目すべき事例が登場してきているという。一例が、物流統括部のケースだ。
取扱商品に関するビッグデータを
RPAで集約して分析
KDDIは、全国のauショップや家電量販店、個人ユーザーに配送する携帯電話や関連アクセサリーなどの入出庫管理を、東日本(神奈川県相模原市)と西日本(大阪府茨木市)の2つの物流センターで行っている。
KDDI株式会社
購買本部 物流統括部
東日本物流センター 業務運営グループ
グループリーダー
寺内 宏允氏
これを運営・管理するのが物流統括部である。2021年度から管理会計の基準を見直し、それまで大枠しか見えていなかった物流コストを業務効率化や納期短縮などの定量効果を把握できるかたちに変更した。業務改善の促進・採算意識の向上により、物流専門領域を生かした継続的な業務改善の取り組みを展開。KDDIグループ全体の物流基盤強化と利益創出の最大化に貢献する。
「そのためには物流にかかわる様々なデータを多角的に分析することが不可欠ですが、扱う商品の種類・点数が膨大なため、簡単ではありませんでした。以前は、担当者がExcelで集計していましたが、多くの手間と時間がかかる上、データの網羅性に欠けており、的確な分析は望めませんでした」と同社 物流統括部の寺内 宏允氏は述べる。
そこで着目したのがDomoだ。Domo事務局のサポートのもと、データの可視化・活用を軸とした物流領域のDXに取り組むことにした。
KDDI株式会社
コーポレート統括本部
コーポレートシェアード本部
コーポレートDX推進部 BPR推進グループ
コアスタッフ
濱口 諒平氏
2022年初頭に「物流コスト分析プロジェクト」を立ち上げ、まずは既存の業務プロセスを洗い出し、RPAで自動化・最適化した上で、本丸であるデータ活用に踏み込むことにした。また、RPA活用の段階では、平行してデータ活用項目の選定も行うことでスムーズにその後のプロセスを進められるようにしたという。
「約1年をかけて、分析したいデータをDomoに取り込んで可視化する仕組みが構築できました。その結果、扱うパラメータ数は以前の4倍に増えながら、作業工数は4割減らすことができました」と説明するのは、同社のDomo事務局メンバーである濱口 諒平氏だ(図1)。

図1 扱うパラメータが増えても、作業工数は削減できている
業務プロセスの見直しを行い、データ収集をRPA化してからDomoを導入。扱うデータのパラメータは4倍に増えたにもかかわらず、作業工数を4割削減することができている
この取り組みにより、個々の配送単価や作業単価の実績が自動的に可視化され、増減したコストの要因(自分達の業務改善効果なのか需要変動影響なのか)をより正確に切り分けて把握することができるようになった。これが、物流統括部におけるデータ活用の最初の成功例となった(図2)。

図2 物流領域における採算管理データの作成プロセス(イメージ)
作業ごとのコストを可視化し、コストへの影響が大きい作業を改善することで採算性を高める。今後はデータを活用した物流運営にも生かしていく狙いだ
感覚的なものをデータで
可視化することで改善が可能になる
しかし、話はこれで終わらない。寺内氏は、物流現場の膨大なデータに対してより踏み込んだデータ分析を行うことで、さらなるコスト削減を実現できるはずだと踏んでいた。現場には経験と勘によるコスト削減のアイディアを持っているメンバーはいたが、その効果を定量的にシミュレーションし評価することができれば、根拠を持って施策を実行することができるためだ。
では具体的に、物流統括部はDomoでどんな分析を行なっていったのか。多岐に渡った分析テーマのうちの一例が「配送箱の空間容積率※」である。
空間容積率を調べると、運ぶ商品のサイズに対して箱のサイズが適正かどうかが分かる。空間容積率が大きいほど内部の隙間が多く、輸送効率が悪い。これをつぶさに見ていく中で、例えば携帯電話を配送する際、同梱するパンフレットに合わせて大きな箱を使っているケースが見られたという。これらを改善することにより配送コストを削減できると判断した。
「改善策として、パンフレットを二つ折りで納品して箱をサイズダウンしました。新たに折り作業費が発生しますが、箱のサイズダウンによる効果がそれを上回るという結果に基づいています」と寺内氏は説明する。
従来も「パンフレットのサイズに箱を合わせるのは不経済だ」ということは、感覚的に分かっていた。ただ、改善に向けたアクションは起こせていなかった。それがDomoを利用することで、どの改善施策を行うと実績ベースでいくらのコスト削減が見込めるのか、現場やマネジメントに定量的に説明できるようになり、意思決定を進めやすくなったという。
「様々なデータをつなぎ、課題の仮説を立てて分析を進めるというプロセスは非常に高度で複雑ですが、可視化されたグラフや表はとてもシンプルで分かりやすい。この点が素晴らしいと思います。また、データを可視化する過程では潜在的な課題も明らかになってきます。今後は、倉庫内スペースを有効活用するための占有率、作業ごとの生産性の可視化・需要予測などにも取り組みたいと考えています」と寺内氏は語る。
ドーモ株式会社
シニアテクニカルコンサルタント
中島 達彦氏
単なる現状の可視化を超えて、高度なデータ分析とそこで得たインサイトの提示にまでステップを進めた点が、物流統括部のDomo活用の特徴といえる。これについてドーモの中島 達彦氏は次のように話す。
「データ活用プロジェクトには3つの欠かせない要素があると我々は考えています。それが『テーマ』『人材』『データ』です。適切な重要度と難易度のテーマ設定がされているか、推進力となる人材をアサインできるか、そして必要な粒度・鮮度のデータを用意できるか。KDDI様にはこの3つが揃っており、それが成功につながった要因だと思います」
同じくKDDIが成功できた要因として、ドーモによる導入・活用支援が挙げられる。財務・経理で活用をスタートした当初から、ドーモのコンサルタントがプロジェクトに伴走する形で活用・定着化を支援してきた。「ソリューション提供にとどまらず、業務に寄り添ったコンサルティングや支援を提供してもらえたことが、Domoの活用を拡大できた理由だと思います」と濱口氏は評価する。
現在は個々のダッシュボード構築をドーモが行っているが、今後は徐々に内製にシフトしていく計画だ(図3)。これについてドーモは、データ活用の基礎知識を習得できる教育プログラムも用意している。「それらのサービスも積極的に活用しながら、各部門の担当者が自発的にDXに挑める風土を醸成していきたいですね」(濱口氏)。

図3 作成したダッシュボードの例
ビジュアルを多用した直感的に分かりやすい画面構成になっている。現在はドーモが作成を請け負っているが、将来的には内製化を進める考えだ
※包装容積に占める空間容積の比率
シェアードサービスの品質向上にも
Domoが貢献
2022年度にKDDIは、全社の共通業務を組織横断型で請け負う組織としてコーポレートシェアード本部を立ち上げた。このコーポレートシェアード本部は、これからのKDDIのDXを担う組織として一層の活躍が期待されている組織でもある。具体的には、多種多様なデジタルツール/サービスを活用することで、高品質なシェアードサービスを提供するとともに、各部門が抱える課題の解決にも貢献するのだ。
「ここでもDomoが重要な役目を果たします。例えば、社内では様々なSaaSが使われていますが、会計システムとワークフローシステムなど、異なるSaaS間のデータ連携がスムーズにいかないといったことがままあります。そんなとき、多様な連携コネクタを備えるDomoを『ハブ』にし、SaaSのデータをDomoへ取り込むことで可視化・分析することが可能です」(濱口氏)。このように、グループ各社・各部門に向けて新たな課題解決策を提案できるようになったことも、Domoがもたらした重要な価値の1つだ。
ドーモでは、組織のデータ活用をけん引する人材を「データアンバサダー」と呼び、変革推進のキーパーソンと位置付けている。鳥井氏、濱口氏、寺内氏は、まさしくその役目を務める人材といえるだろう。
「Domoを初めて見たときに私たちが感じた、『面白そうだ』『使ってみたい』というワクワクした気持ちを多くの社員に味わってもらいたいですね。それが、全社にデータ活用が広がっていく原動力になるはずです」(鳥井氏)
2023年度には全社員がDomoのデータを閲覧できる環境を整えた。物流統括部のような成功事例が、さらに多くの事業部門で生まれていくことは間違いないだろう。KDDIの取り組みに引き続き注目したい。



