
それまで見えていなかったデータが
見えるように
先述の課題を踏まえて、ローン企画部とDA部がDomo上に構築したのが、個々の案件データを可視化するカード(ダッシュボード)だ。これにより、申込後の案件の状況を継続的に追えるようにした。これにより、以前は月次または四半期ごとが主だった住宅ローン関連の営業レポートも、日次で自動的に集計・表示され、ローン企画部の担当者がデータを集計する手間も削減している。
「見えなかったデータが見えるようにもなりました。例えば、チャネルごと、もしくはより細かいレベルで融資実行率が分かるようになり、より的確なアドバイスや支援が行えるようになっています」と木村氏は効果について説明する。
ソニー銀行株式会社
データアナリティクス部
アナリティクス1課
森川 拓氏
重要なのは、ローン企画部のメンバーの大半が、いつでもこのダッシュボードにアクセスできる点である。これにより、常にデータに立脚して考えるスタンスや、様々なデータを多角的に検証する習慣が部内に定着し、データ活用が「当たり前」のものになった。従来は見過ごしがちだった顧客の変化にも気付きやすくなったという。気になるデータの掘り下げなど、高度な分析作業が求められる場合はDA部に依頼する形で対応している。
「当社は2019年からDomoを使いはじめましたが、ローン企画部は社内でも早い時期から活用を開始した部門です。データ活用がもたらすビジネスインパクトの大きさを鑑みて、まずは活用してみようと話し合ってスタートしました」と同社 DA部の森川 拓氏は振り返る。
担当者の経験に頼らない、
効果的な広告出稿を実現
Domoの効果を引き出している、もう1つの部門がマーケティング部だ。この部門は、行内の各部門と連携しながら金融商品や各種サービスのキャンペーン、プロモーションを推進している。以前はWeb広告の展開を広告代理店に任せていたが、2019年からその運用をインハウス化。広告効果を自ら検証することが必要になったという。
ソニー銀行株式会社
マーケティング部
マーケティングコミュニケーション課
板谷 由依氏
リスティング、ディスプレイ、アフィリエイトなどのWeb広告の種類や媒体ごとにアクセス数を集計し、それぞれで効果の大きいターゲット、広告クリエイティブなどを分析する。これを市場の変化に先回りする形で実施し続ける必要があるが、決して簡単なことではなかった。
「当初は、広告運用に慣れた担当者1人がExcelベースでデータをまとめて分析していました。しかし、誰もが媒体ごとのLTVまでの広告効果を、社内データとひもづけた状態で素早く把握し、施策に活用できる状態にすることはできていませんでした」と同社 マーケティング部の板谷 由依氏は語る。
マーケティング部とDA部は、この状況を脱却する上で、多様なデータソースから簡単にデータを抽出して活用できるDomoが生かせると考えた。具体的には、主要媒体におけるターゲットセグメントごとの広告利用金額と、それに関連付けられる社内データの口座開設数、申込件数などのコンバージョン数をひもづけて、投資対効果を可視化するダッシュボードを作成したのである。
「アプローチしたいお客様の層に、より的確にリーチできるのはどの媒体か。これを考える際、従来のように担当者のスキルによって分析レベルにバラつきが出るのではなく、誰もが見ることができるダッシュボードを基に判断できるようになりました」と板谷氏は話す。
見えるデータの質も、以前より高まっている。例えば過去に行ったカードローンのキャンペーンでは、媒体・ターゲットセグメントごとに、申込した顧客の属性情報や契約ステータス、投資対効果などをまとめて確認できるようになった。これらの情報を、次回キャンペーンに向けた改善策の検討、広告出稿の最適化などにつなげている。
また、効率的なデータの分析・可視化により、広告運用のスピードも高まっている。実際、現在の広告出稿の世界では効果測定のスピードが極めて重要だ。データの取得や集計に時間と手間を費やすことなく、効果をタイムリーに確認できるようになった。このことが、ソニー銀行のマーケティング活動の質を高めることに大きく寄与している(図1)。

図1 マーケティング部が作成したダッシュボードのイメージ
属性情報やステータスを一目で分かるように可視化。また、様々なフィルター項目を設定し、経営層から担当部門各々が、自身のニーズに応じてデータを表示、分析できるようにしている
加えて、広告効果を多面的に分析できるようになったことはマーケティング部の活動スタイルにも変化をもたらしつつある。例えば、各部門から依頼を受けてプロモーション施策を検討する際、多面的な観点からより良い提案を行えるようになったことはその一例だ。「私自身、Domoでどんなデータを扱うか、どう分析するかは引き続きトライアル&エラーを繰り返しながら、より良い方法を探っていきたいと考えています」(板谷氏)。
今後も、Domoはソニー銀行が“攻め”のマーケティング活動を行う上での重要な基盤になることだろう。
三位一体のデータ活用で
“データの民主化”を加速
各部門のデータ活用を支えているのがDA部である。各業務部門を自分たちの「クライアント」と捉え、口座、ローン、外貨預金、投資信託など、商品ごとに専任の担当者がデータの可視化・分析の依頼に対応する体制をとっている。
「新たにダッシュボードを作成する際は、最初にビジネス部門と何度も話し合い、可視化すべきKPIの定義づけを行っています。これがすべての起点になるからです」と森川氏は説明する(図2)。

図2 ビジネス部門とDA部が連携してデータ活用を推進
図のプロセスで協力しながらDomoを含めたデータ活用を進めていく。なお、特にDA部が注力しているのが要件ヒアリングの部分だ。ここでニーズ、課題を基に要件を固め、認識のズレをなくすことがあとのデータ活用の高度化につながる
紹介した2部門以外にも、ソニー銀行では複数の部門・プロジェクトでDomoが活用されている。また、経営層にもDomo活用が浸透していることは前回紹介した通りだ。そこにDA部を加えた「三位一体」のデータ活用が、ソニー銀行のデータ活用の成功を支えている。データの専門家だけでなく、全社員が日常的にデータを扱い、その価値を引き出す――。“データの民主化”を目指す企業にとって、同社のアプローチは非常に参考になるものといえるだろう。
「以前はデータの単純な集計を依頼されることが多かったのですが、最近はほとんどの計数がダッシュボードで見えているので、その分DA部には一段レベルの高い分析を頼まれることが増えてきました。これは社内のデータ活用レベルが高まっている証拠なので、この流れをさらに加速させたいですね」(森川氏)
ソニー銀行株式会社
データアナリティクス部長
伊達 修氏
またDA部長の伊達 修氏は次のように続ける。「当初は強いビジネス課題を持っていた部門からスタートしたDomoによるデータ活用も、現在では広く全社に広がっています。データ活用の高度化そのものはもちろん、社員のマインドセットに変化をもたらしてくれたことが、Domoの最大の導入効果といえるかもしれません。ユーザーへの定期的なアンケートも行いながら、さらに効果を生み出せるような活用を模索していければと思います」。
データ/デジタル技術の活用において、他業界より一歩リードする金融業界。特にソニー銀行のようなインターネット銀行にとって、データからビジネス価値を生み出すための取り組みは、競合との差別化において不可欠といえるだろう。ビジネス部門を中心に、全社のデータ利活用を支えるDomoが、その取り組みを後押ししている。
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ドーモ株式会社
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