特別鼎談 富士通と三井物産のDXキーパーソンに訊く テクノロジーを価値に変えるDX戦略、次の一手は「DAP」にあり

DX時代では業務アプリケーションの
マニュアルレスが大きな流れに

ある調査によると、最も経営に影響を与える外部要因としてここ10年、ほぼ「テクノロジー」がトップでした。テクノロジーに責任を持つポジションであるCIO(最高情報責任者)として、どのような取り組みをされていますか?

富士通
執行役員 EVP
CDXO(最高デジタル変革責任者) CIO(最高情報責任者)
福田 譲 氏

富士通 福田(以下、福田) 2020年10月に、富士通自身を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」を始動しました。フジトラでは、ビジネスモデルからビジネスドメイン、ビジネスプロセス、仕事の進め方まで、様々なものをモダナイズしていきます。このベースとなる施策が「OneFujitsu」です。そこではグローバル連結300社超・従業員12万人横断で、オペレーションの標準化を図ります。「OneERP+」や「OneCRM」など、主要な業務領域ごとに1つのグローバルスタンダードに統一することで、データ駆動型経営への転換、業務の全社最適、ひいては生産性を最大化します。従来の日本流ではなく、世界で戦えるやり方に変えていくという意志が、フジトラの根幹にあります。

フジトラの重要施策である「OneFujitsu」。そこにおける3つの軸の1つが、グローバルでのビジネスオペレーション標準化だ

三井物産
常務執行役員 デジタル総合戦略部長
真野 雄司 氏

三井物産 真野(以下、真野) 三井物産は「中期経営計画2026」(2023-2026)を進めている最中です。その実現に向け、デジタル領域では5つの課題に取り組んでいます。1つ目が「1人当たりの生産性向上」。労働力人口の減少が続く中、今のチーム体制のままでもっと大きな仕事を、効率的かつ効果的に推進していく。2つ目が「グランドデザイン」。システムのサイロ化から脱却し、会社全体でシステムの最適化を図る。3つ目が「総DX戦力化」。経営者から新入社員まで、全従業員をDXの戦力とする。さらに4つ目が「データドリブン経営の推進」、5つ目が「セキュリティー」です。

全社DXを一手に担うのがデジタル総合戦略部です。事業部ごとに存在していたIT組織やDX推進組織、IT推進部などを統合し誕生しました。人事、経理など部門の枠を超え、組織横断で5つの課題に取り組んでいます。

三井物産の「中期経営計画2026」では「データドリブン経営の推進」や「グループアセットの利活用」、
「1人当たりの生産性向上」を図ることで「今のチームでもっと大きな仕事を」できる体制の確立を目指す

「OneFujitsu」や「グランドデザイン」の実現に向け、両社では「DAP(Digital Adoption Platform)」を導入されています。日本ではまだなじみの薄いこの「DAP」に、いち早く着目した理由をお聞かせください。

福田 DAPは従業員が業務アプリケーションを簡単に理解し、効果的に使用できるようにサポートしてくれるデジタルツールです。マニュアルレスで誰でもシステム本来の力をより早く、最大限に引き出すことを支援します。システムは使われることで、初めてその効果を発揮します。だからDAPが重要になるのです。従来のITでは、システムを使いこなすことが課題となっていました。そもそも、マニュアルがどこにあるか分かりにくい、マニュアルを見ても、使い方がよく分からない。マニュアルの中から、必要な情報を見つけ出すのが大変。こうした経験は珍しくありませんよね。

スマートフォンのコンシューマー向けアプリでは、誰もがマニュアルを見ずとも使いこなしていますよね。Z世代の新入社員は、マニュアルが出てきただけで“やる気”をなくすかもしれません。DXでは、全従業員がデジタルツールを使いこなすことが求められます。従業員個々のITスキルの差をいかに埋めるか。「OneFujitsu」では、生産性を高めるためにオペレーションの標準化とDAPをセットで捉えています。

真野 ユーザーにシステムをいかに活用してもらうか。DXでは、UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上が重要なポイントとなります。確かに、マニュアルを読むのは面倒です。DX時代では、業務アプリケーションのマニュアルレスは大きな流れになると思います。生産性向上とともに、操作時のストレスが解消され、リアルタイムでのデータ入力もしやすい。総DX戦力化を推進する上では不可欠な要素のひとつだと思います。

WalkMe
代表取締役社長
小野 真裕 氏

WalkMe 小野(以下、小野) 技術革新によりコンピューティングパワーが向上していく中で、生産性の観点では「システムを使いこなせていない」ことがボトルネックであり、改善レバーとなります。そこに、DAPの存在意義があると思います。WalkMeはDAP市場を切り開いてきました。全世界の顧客数は2000社、全世界ユーザー数は3500万。全ての業界、160以上の国で利用されています。2019年に日本法人設立以来、日本でも大手企業を中心に導入が進んでいます。「DAPは人とテクノロジーの垣根をなくし、テクノロジー価値を最大化する」というポリシーのもと、WalkMeはDAPを開発してきました。

UX改善やデータ入力の
プラットフォームとして高く評価

DAP製品を選択する際に重視したポイントについてお聞かせください。

福田 他社製品と一緒に、実際に導入し試した結果、機能性はWalkMeが優れていました。採用のポイントは発展性です。DAPはまだまだ発展途上の分野です。WalkMeは世界中の多くのユーザーに使われており、継続的な投資により機能拡張や新技術採用が継続することを期待しています。また、「OneFujitsu」は世界中の拠点に展開していますので、グローバル多拠点・多言語での対応力も重視しました。

真野 当社も導入前に比較・検討しました。その結果は、富士通さんと同様です。WalkMe採用の決め手となったのは、グローバルで活用できるという点です。当社は総合商社ですから海外でのオペレーションも含め、世界中どこでも使えないと意味がありません。

WalkMeをどのように活用していますか?

福田 現在、ERPのSAP、CRMのSalesforce、ワークフローのServiceNow、経費精算のSAP Concur、人事のSAP SuccessFactors、サービス購買のSAP Fieldglassをはじめ、一部スクラッチのシステムにも展開し、全世界10万人規模で活用しています。主要なITサービスの全てにWalkMeを導入する方針です。目的は、単なる便利ナビゲーションツールの導入ではなく、ユーザーがどこで迷い、つまずいてるかなどのデータを収集・分析し、UXを継続的に向上し続ける仕組みの構築です。WalkMeのサポートのもと、専従チームCoE(センターオブエクセレンス)で導入のルール、デザイン、テンプレートなどを整備しました。組織横断で均一的に展開していく体制をとっています。

真野 当社では人事システムのSAP SuccessFactorsからスタートし、経費精算のSAP Concur、営業物流システムの3製品でWalkMeを導入しており、今後横展開を図っていきます。ユーザーからはConcurを使った精算に要する時間が、これまで必要であった関連部署とのやり取り削減も含め、感覚的には1/3程度になったとの声を聞いています。短縮した分の時間は本来集中すべき業務に当て、生産性向上につなげます。またSuccessFactorsは従来、使い方の習得が難しいためか、社員情報の入力率が50%程度でした。WalkMeの導入以降、入力率がほぼ100%に到達。データドリブン経営を推進する上で必須な、データを収集する観点でもWalkMeは非常に有用です。

小野 富士通さんと三井物産さんは、WalkMeを先駆的に活用いただいている2社です。UX改善に向けたPDCAサイクルを回すプラットフォームとして、またデータドリブン経営を支えるデータ入力プラットフォームとして、マニュアルレスだけではない、DXの本質に関わる部分を評価いただいています。今後WalkMeがさらに真価を発揮するシーンだと認識しています。

WalkMeは、ユーザーがどこで迷い、つまずいてるかなどのデータを収集・分析することで、UXを継続的に向上できる
※図左の「×」は、システムの活用が不十分である状態を、「=」はシステム間におけるUXの不一致による断絶を表す
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WalkMeは「あって当然」。
ROIは気にしていない

WalkMeの両社内における位置付けはいかがでしょうか。

福田 アプリケーションは違っても、社内の主要なITサービスのUXレベルを一定以上に強化・維持する目的でWalkMeを活用しています。小野さんからお話がありましたが、マニュアルレスの観点からもWalkMeはあらゆるアプリケーションに有効です。インターネットやメールを導入する時に、ROI(投資利益率)を気にしないのと同じ理由で、WalkMeの導入においてROIを過度に気にすることはありません。「あって当然」だからです。

WalkMeはセルフサービスで使いこなせるという点も重要です。ユーザーは問い合わせるというムダな業務がなくなり、情報システム部門は問い合わせ対応の手間を削減でき、人的リソースの有効活用が図れます。

真野 WalkMeは当社でもシステムの一部となっています。一体化してどのシステムにも柔軟に溶け込むアーキテクチャは、WalkMeのアドバンテージですね。冒頭に挙げた課題である「総DX戦力化」を推進する上では、自律自走が欠かせません。また、当社でもWalkMeに対して単独でのROIという考え方はしていません。データ入力率、問い合わせ減少数、1つのプロセスが完結する時間(秒単位)などのデータはとっていますが、UX改善の指標としており、ROIはWalkMeを含めたシステム全体による業務改善の観点で見ています。

福田 ROIが出るから導入するのではなく、それぞれのシステムが想定するROIを出すためにWalkMeを導入するという発想です。例えば、Concur導入に対する投資の一部にWalkMeが入っています。ConcurのROIも、システムだけでなく、コーポレートカードの全社導入など、IT以外の施策と合わせて見ています。システム導入は目的ではなく手段です。目的に対するリターンで投資を判断します。その中の一部にWalkMeがあるという位置付けです。

小野 日本法人を設立して4年が経過し、最近評価が変わってきたと実感しています。「WalkMeは、エンドユーザーにとっては“なくてはならないもの”ですし、そういったUXを提供するために会社にとっても“なくてはならないもの”になってきた」というユーザーの声をお聞きする機会も増えました。経営課題として“やりたいこと”の実現に向けてシステムを導入し、それを生かし目標を達成するために、WalkMeを活用する。富士通さんや三井物産さんのように、経営課題にひも付いた構図でWalkMeを捉えていただけるケースが多くなってきました。

生成AIの活用で
UXに付加価値をもたらす

今後、WalkMeを活用した展開についてお聞かせください。

福田 「OneFujitsu」の展開は、グローバル全体で完遂するまで、まだ数年続きますので、それに合わせてWalkMeも拡大していきます。また、適用して終わりではなく、データに基づいてUXを改善し続けることが重要です。ITと人間の関わり方はこれから大きく変わっていくと思いますが、DAPはまさにその領域にあります。テクノロジーをどう価値に変えるか。UXは重要テーマだと思っています。

真野 個別最適化によりサイロ化したシステムを全体最適化したかたちへと持っていく、グランドデザインが今後の最大テーマです。グランドデザインではシステム間連携、データの流れとともに、複数システムを利用するユーザーが迷うことがないよう、UXをデザインすることも必要です。UXに関してWalkMeの活用価値は大きいと思っています。生成AIの活用など付加価値の高いUXにも大いに期待しています。

小野 全体最適の観点から、UXをどう設計するかは従業員エンゲージメントにも関わる要素だと思います。WalkMeではシステムを意識することなく、ユーザーはどの業務を処理したいかを指示するだけです。WalkMeが一貫して正確なデータインプットをガイドし、最短処理を支援します。

今後UX向上で重要なポイントとなるのが、生成AIの活用です。WalkMeでは企業が認める適切な利用方法をガイドする「For AI」と、生成AIを活用しWalkMeの機能向上を図る「Powered by AI」の2つのアプローチで取り組んでいます。DX時代が進む中、WalkMeはITと人をつなぐUXを徹底追及していきます。

WalkMe株式会社

https://walkme.co.jp/