──そうした変革を下支えするプロジェクトITSはどのようなものだったのでしょうか。
大槻 このプロジェクトは、IFRSと連結納税(TAX)、ERPの導入により、グローバル経営の基盤づくりを目指したものです。
基本方針は3つ。第1に、「合理的に質を落とすが、スピードは落とさない」。100点を目指すのではなく、80点でもいいのでスピードを重視しました。第2に、「小さな成功体験を積み上げる」。プロジェクトメンバーのモチベーションが成否を左右すると考え、個々人が達成感を得られるよう工夫しました。第3に、「仕組みを変えることにより、企業文化を変える」。プロジェクトITS自体は予定より1年早く完了しましたが、この企業文化の変革は道半ばと考えています。
宮﨑 国内外のグループ従業員数7万人を超える大きな組織にもかかわらず、IFRSとTAX、SAPに関する変革を5年かからずにやり切ったというのは、驚異的なスピードであり、多くの大企業にも学ぶべきところがあります。大槻さんをはじめとするリーダーが掲げる確固たる方針、プロジェクトの意義やビジョンを繰り返し社内外に発信したことが、大きな成果につながったのではないでしょうか。
──グローバル経営の基盤整備は、既に効果を生んでいるのでしょうか。
大槻 具体的な効果が出てくるのは、これからだと思っています。ただ、統合された仕組みの中に国内外の多種多様なデータが集まるようになり、高度な分析やデータドリブンの意思決定の基盤ができた意味は大きい。この基盤の上で業績管理、あるいは管理会計のあり方も見直していきます。将来的には、非財務KPI(重要達成度指標)がどのように財務KPIに影響を与えるのかを可視化し、事業と経営の改善に生かしたいと考えています。
──効果を生み出すためのアプローチとして、具体的にはどのようなものが考えられるでしょうか。
大槻 NXグループはグローバルでCRM(顧客関係管理)の仕組みを活用しています。ここにはお客様と営業活動に関する情報が集まっており、ERPと連携させれば新たな気付きが得られると考えています。例えば、営業担当者の何らかの行動が、数カ月後の売上増に効くことが分かったとしましょう。その行動を世界展開すれば、業績にもインパクトがあるはずです。いずれにしても、ERPなどに蓄積したデータをいかに活用するかは今後の重要なテーマです。