――約1年にわたり実施した研修は、2025年2月に終了しています。その後、現在までに生成AI、データ利活用のプロジェクトが17件生まれているそうですね。
瀧本
はい。その1つが、地方自治体向けの事業を行う公務部のケースです。公務部は、各自治体が発行する予算書を読み込んで提案を行います。これまでは100ページ以上あり、かつ自治体毎に形式が異なるレポートを担当者が読み込み、検討、提案という流れを踏んでいましたが、一連のプロセスに生成AIを使って効率化、高度化するものです。
具体的には、生成AIに構造化が不十分な大量の情報を含むレポートを読み込ませて、各自治体が計画している公共事業の内容を要約、タグ付けし、データベース化することを試みました。このデータベースにより、「キャッシュレス」、「教育」、「脱炭素」など各自治体が注力する領域の把握が容易となり、自治体間の比較分析も行いながら、生成AIが提案のアイデアも出すことが実現できました。作業時間を短縮しつつ、より深く検討して質の高い提案につなげることを目指しています。
また、この事例のポイントは、同じ業務を行う東名阪の3拠点が同時に取り組んでいることです。最初から公務部長が舵を取り、「3拠点でやる」ことを明言して進めています。マネジメント層がAI/生成AIの価値をしっかり理解したからこそ、生まれた事例だと思います。
摂待
素晴らしいですね。大量の資料の読み込みやサマライズは生成AIの得意分野です。内容も、今回の研修で扱った演習テーマや取りあげた課題に符合するものであり、現場の課題と生成AIの強みが結びついた、よい事例だと思います。
瀧本
もう1つは総務部の事例です。株主総会では、株主からの質問に備えて多岐にわたるQ&Aを用意しますが、そのQ&A作成に生成AIを活用していきたいと考えています。
現在は、事前に準備する想定Q&A作成への生成AIの活用可能性を検証している段階です。ゆくゆくは、株主総会当日に株主からの質問をリアルタイムで音声認識し、事前に準備したQ&Aの中で最も類似するものを抽出するツールを作成することで、株主への適切な回答と行員の業務効率化の両立を目指していきたいと考えています。
文珠四郎
ほかにも、法人営業部門における提案先の絞り込みや、提案書作成の自動化、これまで属人化していた知見の共有化などのアイデアが出ています。
奥園
私は研修の講師を務めましたが、そこで出たテーマで印象に残っているのが、「粉飾決算する企業を事前に予測して対処する」というものでした。もちろん、これがプロジェクトとして形になるかは分かりませんが、このようなアイデアは、マネジメントとして銀行業務を知り尽くした方ならではものだと感じました。業務のノウハウと生成AIを掛け合わせることで、業務効率化や生産性向上を大きく加速することが可能になると思います。