• 株式会社 三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部 人材・統括グループ 人材マネジメントチーム 次長(特命) 瀧本 茜氏
  • 株式会社 三菱UFJ銀行 人事部(大阪) 副部長 文珠四郎 豊氏
  • 株式会社 三菱UFJ銀行 人事部 採用・キャリアグループ 調査役 岩泉 典子氏
  • 株式会社ブレインパッド トランスフォーメーションユニット 副統括ディレクター 奥園 朋実氏
  • 株式会社ブレインパッド トランスフォーメーションユニット データ活用人材育成サービス 副リード マネージャー 摂待 太崇氏
  • 株式会社ブレインパッド セールス&マーケティングユニット エンタープライズセールス セールスリード 小田島 匡志氏
研修後、既に17件のプロジェクトが誕生!

「マネジメント層が変われば、成果が変わる」三菱UFJ銀行、生成AI活用高度化への挑戦 「マネジメント層が変われば、成果が変わる」三菱UFJ銀行、生成AI活用高度化への挑戦

欧米企業と日本企業の間で、大きな差があると言われることの1つが「マネジメント層のITリテラシー」である。特にAI/生成AIの登場以降は、マネジメント層がいかにAIを使いこなすかが、企業競争力向上に向けたポイントになっている。多くの企業が危機感を抱き、取り組みを進める中、先駆的な存在といえるのが三菱UFJ銀行だ。マネジメント層約1500人を対象とした「AI・データ利活用実践研修」を実施し、終了後数カ月の時点で既に17以上の新規プロジェクト立ち上げを実現している。大きな成果につなげられた理由や、今後目指す姿について、三菱UFJ銀行と伴走パートナーであるブレインパッドのキーパーソンに話を聞いた。

「研修のための研修」
で終わらせない

株式会社ブレインパッド トランスフォーメーションユニット 副統括ディレクター 奥園 朋実氏
株式会社ブレインパッド
トランスフォーメーションユニット
副統括ディレクター
奥園 朋実
奥園
 最初に問い合わせをいただいたのは2023年の春でした。「情報のインプットだけでなく成果のアウトプットまで行いたい」というご要望を基に、当社の「マネジメント層向けデータ活用セミナー」と「AIビジネスプランナー養成講座」の内容を大幅にカスタマイズしてご提案しました。

瀧本
 多忙な部長クラスを集めるのですから、座学だけの研修は避けたいと考えました。強く意識したのは「研修のための研修」で終わらせず、学びを現場のビジネスに結びつけることです。業務に近いストーリーの組み込み、アウトプットの強化などを要望に盛り込み、ブレインパッドと何度もやりとりしながらつくり込んでいきました。

奥園
 一般的に、このような研修はDX関連部署が主導するケースが多いのですが、今回は人事部様が主導しています。生成AIやデータ利活用に詳しく、目指すゴールが明確で熱意もすごい。そのような人事部の方と会うのは私も初めてだったので、「これは絶対に良いものができるぞ」とワクワクしました。

株式会社ブレインパッド トランスフォーメーションユニット データ活用人材育成サービス 副リード マネージャー 摂待 太崇氏
株式会社ブレインパッド
トランスフォーメーションユニット
データ活用人材育成サービス 副リード
マネージャー
摂待 太崇
摂待
 金融業の実務に即した研修をつくるためには現場感覚が必要です。当社の提案に対して、「現場では実際にこういうことが起きていて、これが課題だと考えている」「マネジメント層に理解してもらうにはこういう仕掛けがあった方がいい」など、実体験に基づくフィードバックをいただくことができました。おかげで、非常に中身の濃い実践的な内容に落とし込めたと思います。

――実際の研修の内容についても教えてください。

奥園
 講義と演習の2部構成で、丸一日をかけて行います(図)。講義パートのテーマはDX時代のデータ活用の重要性や、銀行でのデータ活用事例と考え方について。データを使い、人間とAIの協働で新たな価値を生むため、マネジメント層はどんな意識を持つべきかを座学で学びます。

 演習パートでは講義パートの内容を現場業務に結び付けるため、BI活用とAI上流工程の2テーマの実践形式の演習で学びます。その後、各部署の現場課題にAI/生成AIやデータをどう活用できるか、テーマアップしていただきます。このテーマを持ち帰り、現場を巻き込んで実践するまでを研修と位置付けています。
「AI・データ利活用実践研修」のイメージ
図 「AI・データ利活用実践研修」のイメージ
講義と演習の2部構成にし、最後に実際の課題をテーマアップする。研修冒頭では、生成AIとの対談形式の動画で、三菱UFJフィナンシャルグループの亀澤 宏規グループCEOが登場。経営トップがコミットした取り組みであることを訴え、参加者のモチベーションアップにつなげた
株式会社 三菱UFJ銀行 人事部 採用・キャリアグループ 調査役 岩泉 典子氏
株式会社 三菱UFJ銀行
人事部 採用・キャリアグループ
調査役
岩泉 典子
――受講したマネジメント層の反応はどうでしたか。

岩泉
 事後に行ったアンケートでは「インプットだけでなく、アウトプットを求められることで理解が深まる」「自分ごと化できる」という声がありました。また研修の進行についても「ムダが少ない筋肉質な内容で、時間の使い方もうまかった」という旨の意見がありました。さらに、行内事例を採り入れたことも好評だったようです。「現場が直面する課題とデータ利活用の関係性をイメージしやすくなった」という声がありました。

東名阪3拠点の公務部が
一斉に生成AI活用を推進

――約1年にわたり実施した研修は、2025年2月に終了しています。その後、現在までに生成AI、データ利活用のプロジェクトが17件生まれているそうですね。

瀧本
 はい。その1つが、地方自治体向けの事業を行う公務部のケースです。公務部は、各自治体が発行する予算書を読み込んで提案を行います。これまでは100ページ以上あり、かつ自治体毎に形式が異なるレポートを担当者が読み込み、検討、提案という流れを踏んでいましたが、一連のプロセスに生成AIを使って効率化、高度化するものです。

 具体的には、生成AIに構造化が不十分な大量の情報を含むレポートを読み込ませて、各自治体が計画している公共事業の内容を要約、タグ付けし、データベース化することを試みました。このデータベースにより、「キャッシュレス」、「教育」、「脱炭素」など各自治体が注力する領域の把握が容易となり、自治体間の比較分析も行いながら、生成AIが提案のアイデアも出すことが実現できました。作業時間を短縮しつつ、より深く検討して質の高い提案につなげることを目指しています。

 また、この事例のポイントは、同じ業務を行う東名阪の3拠点が同時に取り組んでいることです。最初から公務部長が舵を取り、「3拠点でやる」ことを明言して進めています。マネジメント層がAI/生成AIの価値をしっかり理解したからこそ、生まれた事例だと思います。

摂待
 素晴らしいですね。大量の資料の読み込みやサマライズは生成AIの得意分野です。内容も、今回の研修で扱った演習テーマや取りあげた課題に符合するものであり、現場の課題と生成AIの強みが結びついた、よい事例だと思います。

瀧本
 もう1つは総務部の事例です。株主総会では、株主からの質問に備えて多岐にわたるQ&Aを用意しますが、そのQ&A作成に生成AIを活用していきたいと考えています。

 現在は、事前に準備する想定Q&A作成への生成AIの活用可能性を検証している段階です。ゆくゆくは、株主総会当日に株主からの質問をリアルタイムで音声認識し、事前に準備したQ&Aの中で最も類似するものを抽出するツールを作成することで、株主への適切な回答と行員の業務効率化の両立を目指していきたいと考えています。

文珠四郎
 ほかにも、法人営業部門における提案先の絞り込みや、提案書作成の自動化、これまで属人化していた知見の共有化などのアイデアが出ています。

奥園
 私は研修の講師を務めましたが、そこで出たテーマで印象に残っているのが、「粉飾決算する企業を事前に予測して対処する」というものでした。もちろん、これがプロジェクトとして形になるかは分かりませんが、このようなアイデアは、マネジメントとして銀行業務を知り尽くした方ならではものだと感じました。業務のノウハウと生成AIを掛け合わせることで、業務効率化や生産性向上を大きく加速することが可能になると思います。

研修参加者を
「孤独にさせない」ことが重要

――わずか数カ月間で多くのプロジェクトが生まれています。その要因はどこにあるとお考えですか。

株式会社ブレインパッド セールス&マーケティングユニット エンタープライズセールス セールスリード小田島 匡志氏
株式会社ブレインパッド
セールス&マーケティングユニット
エンタープライズセールス
セールスリード
小田島 匡志
小田島
 大きいのは、研修作成の当初から、アウトプットを形にするための立て付けをしっかり考えられていたことだと思います。

 例えば、研修冒頭では経営トップのメッセージを流して「変革を共にリードしよう」と動機付けを行いました。また、研修参加者が出したテーマは、十分な精査を行った上でプロジェクト化するスキームも整備しています。このような、研修前後の立て付けも含めてつくりこんだことが、多数の事例が生まれた背景にあると思います。

奥園
 いきなり巨大プロジェクトを目指さず、スモールサクセスを積み上げるアプローチで進めているのも重要なポイントですね。

文珠四郎
 加えて、私は参加者を「孤独にさせなかった」ことが奏功したと思います。部長だけでなく、次長クラスにも研修を受けていただくことで、研修が個人のものではなく部全体のものになりました。これにより、研修後にマネージャー同士が部内で話し合うなど、取り組みを持続させるムードを生みだせたと思います。

 AI/生成AIの活用を進める上で、マネジメント層自身が「めちゃくちゃ詳しい」人である必要はないと思います。ただ、少なくとも“入口”を理解しているかどうか、自ら主体的にかかわっているかどうかは、その部全体のAI活用を大きく左右します。トップが変わることが非常に大事なんだと、今回の研修を通じて私も実感しました。

AIネイティブを増やすための
チャレンジを続ける

――これからはどのような方向性で取り組みを進めていきますか。

瀧本
 三菱UFJフィナンシャルグループでは「AIネイティブ」という言葉を使って、AIは当たり前のもの、全行員が使うべきものと位置付けています。今回の研修運営で培った知見を基に、全行員がAIネイティブになるための支援をこれからも継続的に行っていきたいと思います。

文珠四郎
 デジタルのリテラシーやスキルは、人事考課の評価ポイントの1つにもなっています。人事部でも、今回の研修で付いた火種がより大きな炎になるような取り組みを引き続き行っていくつもりです。

岩泉
 私も、デジタルや生成AIが特別なものではなく、日々の業務になじみ、当行にとって当たり前の存在になるよう尽力していきたいと思います。

――そこでブレインパッドに期待することがあれば教えてください。

文珠四郎
 AIネイティブを増やすには、今回の研修の「次の一手」が重要だと思います。引き続きブレインパッドと共に考えていきたいですね。銀行を含め、金融業はガラパゴス化しやすい領域なので、他業界の事例や最新のテクノロジーなど、学べるものはどんどん吸収していきたいと思っています。積極的な提案をお待ちしています。

瀧本
 私も同感です。外部の方の視点から、いろいろなインプットや指摘、意見をいただきたいと思います。マネジメント層はもちろんのこと、引き続き、広く全行のデジタルリテラシーの底上げに向けても、いろいろ教えていただきたいと思います。

奥園
 ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。
お問い合わせ
株式会社ブレインパッド URL:https://www.brainpad.co.jp/