ルゾンカ私は「現場との対話」「戦略立案」「システム・人・データ環境の整備」の順に進めていきました。
まず、着任して間もないCDOにとって大切なのは現場を知ることです。マネージャーだけでなく、担当者一人ひとりに「システム構成図を見せてください」「データのフローは」「使っているツールは」などをヒアリングしていきました。その過程では、生々しい不満の声に接することもありますが、この対話プロセスを踏まなければ現場がどのような課題を抱えているのか分からず、施策が空回りしてしまうでしょう。DXでは、こうした泥臭い作業が重要だと私は考えています。
そこで得た情報や人脈を生かして、次にDXの全体戦略を立案します。一人で戦略を練るのが難しければ、コンサルタントなどの外部の力を借りてもよいと思いますが、その際も泥臭い課題を盛り込む視点は不可欠です。
なお、プロフェッショナルは「3日」「3週間」「3カ月」「3年」といった3の単位で達成したいことや成果を明確にするべきというのが私の持論です。DX推進では、最初の3カ月でこの戦略立案までこぎつけることが重要だと思います。
――その上で、システムや人、データなどの基盤を整備するわけですね。ここで気をつけるべき点は何ですか。
ルゾンカ戦略はトップダウンで進めるものですが、システム・人・データの各リソースを整備する取り組みはボトムアップの施策といえます。現場の皆さんが動くための基盤として、この3つをしっかり整備しなければDXは進展しません。今大きな注目を集めている生成AIも、成果がなかなか出ていない企業はこのどれかが欠けているのだと思います。適切なデータをシステムに蓄積し、そこから見えてくる課題に各現場の社員が向き合えば、組織のDXは自ずと進みだすはずです。
――着任当初の社内データの整備状況はどうでしたか。
ルゾンカ前社長が指摘した通り、データは豊富にあったものの整理されておらず、すぐに活用できる状態にはなっていませんでした。おそらく、多くの日本企業が同様の状態ではないかと思います。
その状態から高度なデータ活用を実現できる状態に持っていくためには、いくつかの方法があります。データのスペシャリストがリードする方法もありますが、9割の人が表計算ソフトを使っていた当社の場合、まずデータ基盤を用意して、社員が気軽にデータ活用を実践できるようにする方がスムーズにいくのではと考えました。
そこで導入したのが「Domo」です。既にBIツールは導入していましたが、操作がやや複雑で活用は定着していませんでした。その点、Domoはとにかく分かりやすく、表計算ソフトで行ってきたデータ活用のレベルを一段階引き上げるくらいの感覚で、誰でも簡単に使えます。これを全社標準のデータ活用基盤に位置付けることで、データ活用の敷居を大きく下げられると判断しました。
コスモのDX、成功の要因は
社員の「好奇心」
――データ活用を進める上では、人材育成も重要です。そのための取り組みはどのように進めたのでしょうか。
ルゾンカコスモエネルギーグループの全社員、約7000人のうち、900人を「データ活用コア人材」にする計画を立てました。
具体的には「データストラテジスト」「データサイエンティスト」「データエンジニア」の3タイプで、それぞれを「ジュニア」「シニア」に分けた計6つのカテゴリーを作成しています。このデータ活用コア人材が、社内におけるエバンジェリストの役割を果たし、周囲の人にDomoの活用やデータ活用を広めていきます。
ドーモの協力も得ながら育成を進めてきた結果、既に目標人数は達成し、現在は1000人以上が育っています。ジュニアからシニアへランクアップしたり、複数のカテゴリーの認定を受けたりする人も出始めています。2022年のDomo導入以後、データに基づいてビジネスを理解したり、意思決定したりする風土が、社内に確実に醸成されつつあることを感じています。
――データ活用を全社に普及させる、いわゆる「データの民主化」に苦労する企業がたくさんあります。そんな中、なぜコスモHDは円滑に取り組みを進められたのでしょうか。
ルゾンカ社員の好奇心(Curiosity)をうまく高められたからではないでしょうか。私は、人が本気になるのは「危機を脱するためにやらざるを得ないとき」か、「楽しいからやりたいとき」のどちらかだと考えています。それなら、後者のほうがいいに決まっていますよね。
Domoは高度なデータ分析を行えるツールでありながら、ビギナーが使っても楽しくて、手軽に分析して成功体験を得るのに格好のツールでもあります。そのため「次はこの角度で分析してみよう」「次はこんなグラフを作成してみたい」といった気持ちが、社員の皆さんの中に生まれているのだと感じます。データを変えるごとにものさしが変わり、新しい発見がある。そのことを肌で感じているのです。
Domoの活用事例を共有するワークショップも定期的に開催していますが、他部門が作成したカッコいいレポートを見て「あれはどうやってつくったの」といった会話がされている様子をよく見かけます。
限られたリソースでDXを進めるため、最近はリスキリングの重要性が叫ばれていますが、興味がなければ人の学びは深まりません。「好奇心を高める」ことは、企業・組織が人を育て、DXを推進していく上で、非常に重要な視点だと思います。
――Domoの活用事例についても教えてください。
ルゾンカ例えば営業部門では、それまで担当者が数人がかりで作っていた営業レポートを、自動的に作成・表示するダッシュボードを構築しました。従来は、複数の営業拠点の情報を担当者がそれぞれ電話やメールで集めて、まとめていたのですが、その作業がゼロになった形です。毎朝、Domoのダッシュボードを開くだけで、タイムリーな情報を誰でもすぐに確認できるようになりました。
また、千葉・堺・四日市の3製油所では、設備・機器の稼働データをリアルタイムに収集して可視化する仕組みにもDomoを活用しています。いわゆる「デジタルプラント」によって、操業の安全性向上や運用の効率化、エネルギー効率の改善などに役立てています。
広大な裾野を固めたので、
ここから楽しくなる
――現時点で、コスモのDXはどこまで進んだとお考えですか。
ルゾンカ富士山に例えると、ようやく五合目まで来た感覚です。「まだ五合目か」と思われるかもしれませんが、高さは半分でも、裾野が広いので体積は相当なものになります。これも、ものさしを変えると見えてくることですね。
土台ができたので、ここからは、さらにデータ活用を加速させていきたいと思います。Domoは「もっと上に登りたい」という思いにさせてくれるゲームチェンジャーのためのツールなので、コスモのデータ活用はこれからどんどんレベルアップしていくはずです。社員の皆さんには、「ここまでは大変なこともたくさんあったけど、ここから楽しくなるよ」と伝えたいですね。
――取り組みが評価され、「DX銘柄2025」にも認定されました。
ルゾンカありがとうございます。「これだけみんなが頑張ったのに認定されなかったどうしよう」と思っていたので、ほっとしました。一方で、経済産業省とIPAが示しているDX認定の申請要件は、間違いなく行うべきことばかりなので、「着実に取り組んでいれば評価されるだろう」という思いもありました。DXに取り組む企業は、DX認定の取得を目指すことで企業価値向上のための近道になると思います。
――今後、コスモのDXをどのように進化させていく予定ですか。
ルゾンカ現在は「コスモのDX2.0」のフェーズに入ったと位置付けています。これからは、デジタルの力をビジネス成果に明確に結びつけていくことが求められます。そのためには、データを部署横断型で活用できる環境を整えるとともに、より一層、本格的なAI/生成AI活用、Domoの利活用を進めていく予定です。
また、人材育成にも引き続き力を入れていきます。データ活用コア人材は目標人数を上回ったので、ここから先は質の向上に注力します。データサイエンス、データエンジニアリング、データストラテジーという複数のカテゴリーにまたがる認定者をさらに増やしたり、一人ひとりのスキルレベルを高めたりする施策を展開していく予定です。
――その中から、次の世代のCDOも育ってきそうですね。
ルゾンカそう思います。うれしいことに、“CDOの卵”が既にたくさん生まれています。
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ドーモ株式会社
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