被害額の試算は41億円 信州大学医学部附属病院が語る「医療の最後の砦」を守る戦略
近年、医療機関を狙ったサイバー攻撃が増加の一途をたどっている。ランサムウェア等の攻撃によって病院や医院の機能が停止することは、「人命に関わる」という極めて深刻な問題に直結する。そうした中、長野県民約200万人の「医療の最後の砦」である信州大学医学部附属病院は、万が一のサイバー攻撃に対して、迅速かつ確実にデータ復旧ができる仕組みを導入した。
県内唯一の特定機能病院として
長野県民の命を守る
信州大学医学部附属病院(以下、信大病院)は、1945年に開院し、80年の歴史を持つ大学病院だ。717床の病床に、34の診療科、31のセンター/部門を擁する県内最大規模の総合病院でもある(2025年4月時点)。
信州大学医学部附属病院
医療情報部
部長
北口 良晃 氏
医療情報部
部長
北口 良晃 氏
1999年信州大学医学部を卒業後、放射線科医・呼吸器内科医として長野県内の複数の病院に勤務し、米国留学を経て2010年に医学博士の学位を取得。23年、医療情報部に赴任し、医療情報部部長・准教授(呼吸器内科兼任)として医療情報業務・診療・研究・教育に従事している。
「県内唯一の大学病院として、高度な医療技術の開発、導入、評価を行っています。次世代を担う医学生の教育や、県内の研修医を育成する中心的な拠点として機能しています」と説明するのは、信大病院 医療情報部 部長の北口良晃氏である。
一方で、県内唯一の「特定機能病院」でもある信大病院は、長野県の医療体制において、極めて重要な役割を担っている。特定機能病院とは、他の病院または診療所から紹介された患者に対し、医療を提供することが承認要件の一つとなっている。
「他の病院や診療所では対応が困難な患者さんが来院されるケースも多く、当院は長野県の『医療の最後の砦』としての役割も果たしています」と北口氏は語る。
そうした重責を担う信大病院にとって、患者の電子カルテなどをサイバー攻撃から守り、医療サービスを止めない取り組みは極めて重要だ。
「医療サービスが提供できなくなれば、大切な県民の命を守れなくなってしまいます。さらに言えば、機能停止によって莫大な被害が生じ、病院そのものの運営が維持できなくなる恐れもあります。そうした最悪の事態を避けるため、当院は早い時期から徹底したサイバーセキュリティ対策に取り組んできました」と北口氏。
中でも注力している対策の一つが、サイバー攻撃で喪失したり、アクセス権限を奪われたりしたデータの迅速な復旧だという。具体的にどんな取り組みを行っているのか?