社員を定型業務から解放し、
創造性を引き出す

人の価値を高める
中部電力のAIトランスフォーメーション

中部5県(静岡県は一部)に電力を供給する中部電力は、グループ会社を含めた従業員が利用する約2万台以上のパソコンやスマートフォンを支給・管理し、年間約1万2000件以上もの問い合わせに対応している。同社がAI導入で目指したのは単なる工数削減ではない。グループ内の人材を定型業務から解放し、高付加価値な活動へシフトさせることにある。人とAIが強みを生かし合い組織価値を高める、中部電力の変革の舞台裏とそのAI活用の核心に迫る。

社会インフラとしての役割を果たすため
4つの柱でDXを推進

「名古屋に本社を置く中部電力は、愛知県、岐阜県、長野県、三重県、静岡県(富士川以西)の中部5県を事業エリアとする電力会社です。自動車製造をはじめとする日本の主要な産業が集積し、人口規模も大きな中部地方の産業と暮らしを、エネルギー供給で支えるという重要な役割を担っています」。そう語るのは中部電力 デジタル変革推進本部 IT・セキュリティ統括部 ITアーキテクトグループ グループ長の杉浦仁之氏である。

杉浦氏
中部電力株式会社
デジタル変革推進本部
IT・セキュリティ統括部
ITアーキテクトグループ
グループ長
杉浦 仁之
中部電力のネットワーク基盤の構築・運営に携わった後、グループ会社向けネットワークおよびクラウド共通基盤整備、セキュリティ分野を担当。現在は中部電力および中部電力グループのIT共通インフラ全般の企画・運営を統括している。

重要な社会インフラとしての役割を果たすため、中部電力は「サステナブル」「生活インフラ」「地方創生」「電気のさらなる安定供給」の4つを柱とするDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、社会課題の解決と新たな価値創出に取り組んでいる。

テクノロジーを駆使した価値創出の一例が、水力発電用ダムへの流入量予測や発電計画の最適化だ。従来は、熟練者の経験やノウハウに依存していた発電計画をAIが支援することで、技術継承や業務効率化を実現するとともに、発電量の最大化にも取り組んでいる。

デジタル変革推進本部 IT・セキュリティ統括部は、そうした中部電力のDX、およびAX(AIトランスフォーメーション)を支えるデジタル基盤を整備し、活用を推進する役割を担っており、中でも杉浦氏がグループ長を務めるITアーキテクトグループは、パブリッククラウドの活用・推進や、データ利活用の環境整備のほか、社内におけるITの保守・運用などを担当している。

「社内システムやITインフラに何らかの障害が発生すると、業務が停滞し、電力の安定供給という我々の使命が全うできなくなる恐れがあります。そうしたことがないように、障害発生時の対応や、調査・分析の場面でAIを活用するなど、業務の高度化、効率化、属人化の排除を目的としたIT保守・運用のDXを推進しています」(杉浦氏)

そうした取り組みの一つが、従業員に支給したパソコン、スマートフォンに関する問い合わせにAIが対応するヘルプデスクの自動化だ。

中部電力はなぜそれに取り組み、どのような成果を上げたのだろうか?