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日立システムズパワーサービス

電力市場の全面自由化に向け、日立システムズパワーサービスでは、エネルギー業界の企業を対象に、2015年4月から、電力に関する情報システムをクラウドで提供するサービス「ePower Cloud」の販売を開始している。講演では、常務執行役員の田子友延氏と、執行役員で経営戦略本部長の長浜太氏が登壇。エネルギー業界の動向と同社の戦略について語った。

田子 友延 氏
日立システムズパワーサービス
常務執行役員

 日立システムズパワーサービスは、エネルギー業界向けに電力に関する情報システムサービスを提供するシステム会社で、2014年3月3日に東京電力、日立製作所、日立システムズの3社が出資し設立された。

 最初に、常務執行役員の田子氏が登壇し、「豊富な経験を有する人材と独自サービスを融合し、エネルギー業界のシステム構築・監視・運用をはじめとしたICTサービスでリーディングカンパニーになる」と同社の経営ビジョンを述べた。特に、環境規制の厳しい石炭火力発電に対し、燃料を効率的に使う独自ソリューションを中核に、海外へも広く展開していくという。

ジャパンブランドを構築し
世界に打って出る

長浜 太 氏
日立システムズパワーサービス
執行役員 経営戦略本部長

 次いで、執行役員で経営戦略本部長の長浜氏が登壇した。長浜氏は、国内の電力市場動向について、「新電力事業者のシェアは2013年度に約4%だったが、近い将来、新規参入企業の急増により、約10%になると予想される」と述べた。一方で、既存の電力会社を中心に、地域や業種を超えた事業者連携の動きが、活発化していることを紹介した。

 長浜氏は、世界における電力需要予測についても触れた。現在の予測によれば2035年には、発電設備容量は70%増加し、約1万GW(ギガワット)に達する見通しだ。中でも、火力発電が大きな伸びを示すと予想されている。地域別ではアジアの伸びが突出しており、156%増の約4700GWになるという。それに対し、長浜氏は「つまり20年後の世界全体の発電設備容量は、種類別では火力発電が、地域別ではアジアがいずれも約50%を占めることになる」と説明。それに伴い、年間約240兆円、累積約4800兆円の投資が必要になる。また、そのうちのIT投資額は、年間約9600億円の見込みとのことだ。

 この予測に対し、同社の方針として、「まずは国内における電力とガスのシステム改革を推進していく。その中で、品質向上を図り、ジャパンブランドを構築する。それを基に、エネルギー業界の皆様と一丸となって、海外市場に打って出ていく計画だ」と述べた。

エネルギー業界向けに
クラウドサービスを提供

 同社が取り組む電力システムは、広範囲にわたる。まず、上流から下流にかけて「発電・供給」「送配電・需給制御」「売電・消費」という3つの領域に分けられる。各領域では、それぞれ固有のシステムが稼働しており、ITネットワークを通してデータ連携が行われている(図1)。

図1 電力システムを支えている情報ネットワーク
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 そこへ今後、小売りの全面自由化が開始されれば、大量かつ多種多様なデータが発生する。データの流れも双方向になる。従って、今後、電力システムを支えるITネットワーク基盤は、堅ろうかつビッグデータを高速に処理できる性能が強く求められる。「当社では、このITネットワーク基盤において、質の高い運用を実現していきたい」(長浜氏)。

 そこで、同社が2015年4月から、エネルギー業界の企業向けに、クラウドサービス事業として立ち上げたのが、「ePower Cloud」である。

 「ePower Cloud」の機能は、「発電・供給」「送配電・需給制御」「売電・消費」のそれぞれの領域でソリューションが用意されている。また、これら3つに共通して、セキュリティ管理を含む「ICTマネジメント」、経理などを担う「一般管理」、コンタクトセンターサービスを支援する「電力関連業務アウトソーシング」なども、順次提供していく予定だ。

 例えば、「発電・供給」の領域には「火力業務クラウド」というサービスがある(図2)。

図2 火力業務クラウド(ePower Cloud)の概要
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 火力発電業務のシステム化を通して培ってきたノウハウを活用したソリューションだ。中核となる必須機能は「発電管理」と「燃料管理」。発電管理の主な機能は、火力発電所から送られてくる発電実績や消費燃料データを受け取り、それを基に、燃料消費率などを計算して、帳票として出力すること。オプション機能として、電力の販売先に請求データを出す「料金調定」、自治体にばい煙排出管理に伴う汚染賦課金情報を提供する「環境管理」、火力発電所から排出される石炭灰や石膏の排出量を管理する「石炭灰収支管理」なども用意されている。他にも「資材契約管理「」補修工事管理」などがあり、火力発電所に特化した豊富な機能が用意されている。

 「売電・消費」の領域では「電力小売クラウド」がある。電力小売企業の顧客情報管理を支援するソリューションだ。

 電力小売業界で世界3位の利用実績を持つ欧州企業のソフトウエアを、日立システムズパワーサービスが日本向けにアレンジしたものだ。契約管理や請求管理、料金メニュー管理など豊富な機能を備え、事業規模の拡大に合わせた拡張性と柔軟性があるのが特長だ。「新たに電力小売事業を始める企業にとって、必要な機能はすべて装備している」(長浜氏)。

 今後、特に重要性が高まっていくのが、セキュリティ管理だ。「ICTマネジメント」では、サイバー攻撃や情報漏洩などのITセキュリティに加え、作業安全管理や建屋・整備情報管理など、あらゆるロケーションにおける総合セキュリティサービスを提供していく。

 長浜氏は最後に「ePower Cloudは、業界動向に合わせ、まだまだサービスを拡大していく計画がある。エネルギー業界の皆様が事業に専念できるよう、ICTサービスを通して支援していく。グローバル展開も含め、企業の皆様とともに成長していきたい」と述べた。

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