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総論:もはや次世代デバイスではない、SiC、GaNの効果的な活用法を探れ

SiCやGaNデバイスを応用した機器やインフラを、一般家庭や街の中で普通に見かけるようになった。化合物半導体の優れた物性を生かして、劇的な電力損失の削減と、目を見張る小型・軽量化を実現している。SiC、GaNデバイスは、もはや“次世代デバイス”ではなくなったのだ。このように時代の変化を肌で感じられるようになった中、NE先端テクノロジーフォーラム「次世代パワー半導体のインパクト~SiCとGaN、Siをいかに使い分けるか~」が、会場を埋め尽くす聴講者を集めて開催された。底知れぬ潜在能力を秘めたパワーデバイスの効果的な応用先と利用法を、最新の技術開発動向を交えて議論した。

 発電から送配電網を経由して消費するまでの電力の流れの中で、莫大な電力が電圧や周波数の変換で失われている。これを劇的に削減するための切り札が、SiCやGaNをベースにしたパワーデバイスである。産業界の新デバイスへの期待は、ますます高まっている。さらに、電気・電子機器中で大きな部分を占める電源回路を小型化する方向での期待も大きい。

視点は、利用技術開発へ

 京都大学 名誉教授 松波弘之氏は、SiCパワーデバイスの今後の開発と利用法の方向性を、国内で進められている研究開発プロジェクトでの取り組みに沿って展望した。

 「日本国内でのパワー関連技術の開発とその応用開拓は、国家プロジェクトをけん引役として進められてきた」と松波氏はいう。超高耐圧SiCデバイスの実現を目指した「最先端研究開発 FIRSTプロジェクト」では、13.7kV/40Aで動作するPiNダイオード、16kV/30Aで動作するIGBTなどを実現する成果を挙げ、SiCデバイスの可能性を一層拡大した。

 こうした成果を踏まえ、現在、優れたデバイスの社会実装を目指した「次世代パワーエレクトロニクス」SIPプログラムが進められている。開発した技術の出口を定め、上流から下流までにわたる技術基盤を整備していこうとするものだ。松波氏によると、既に、マイクロスマートグリッドでの電力損失を42%削減した例、SiCでなければ実現できない高電圧パルス発生器を実現した例、SiC搭載機電一体SRモーターシステムを実現した例といった成果が出ているという。

 松波氏は、「どんな優れたデバイスでも、既存デバイスと入れ替えてすぐに効果が得られるわけではない。潜在能力を引き出す利用技術を開発できる人材の育成が求められている」とした。

本格化するクルマへの応用

 島根大学 総合理工学部 准教授の山本真義氏は、「大きな市場があること、最終システムでの利点があること」の2点に着目して、SiCやGaNデバイスの普及をけん引する市場を選定。そこでの技術開発の論点を解説した。

 同氏は、電気自動車やハイブリッド車にSiCやGaNデバイスを応用する動きが、2020年にピークを迎えるという。バッテリの電圧である202Vを650Vに変換するメインドライブのモーター制御用インバータではSiCデバイスが、アクセサリー用の電源に変換する絶縁DC-DCコンバータではGaNデバイスが導入される可能性があると見る。ただし、欧州系企業は、バッテリの48V化を進めて、別の電動化の道筋を探っている。こうした動きに沿って、48Vから12Vへの変換に向けたDC-DCコンバータが求められるようになる。ここでは、「SiCとGaNデバイスを組み合わせて、3kW級で変換効率95%の実現を競うことになる」(山本氏)とした。

 一方、インフラ・プラント系は、日本では現在が設備の入れ替え時期であり、20年.30年後の次世代が、SiCやGaNデバイス導入のピークになるとした。近々に期待できる市場として、太陽光発電システムのパワーコンコンディショナ、電動化が進む船舶の駆動システムでSiCやGaNデバイスの導入が活発化する可能性を指摘した。

 その他、通信・サーバー系の電源、非接触給電の分野も期待できるようだ。ここではGaNデバイスの利用が想定され、「電源回路の高周波化による小型化が勝負の鍵を握る」(山本氏)。高周波化できれば、キャパシタやコイルなど受動部品の小型化も進み、システムの大きさが一気に小さくなるからだ。