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SiCデバイス:SiCデバイスで独走するインフィニオン、MOS FET製品の開発も進行

Peter Friedrichs氏
Infineon Technologies AG Senior Director

SiCパワーデバイスの分野では、技術開発の先進性、生産量、製品の品ぞろえ、市場投入の早さ、応用開拓の多様性のいずれの点においても、インフィニオン テクノロジーズが圧倒的にリードしている。ダイオードでは、既に第5世代品を市場投入。そして現時点では研究開発段階だが、第2世代トランジスタとして、MOS FETの開発も着々と進んでいる。同社の最新技術動向を、Infineon Technologies AG Senior Director Peter Friedrichs氏が解説した。

 インフィニオンには、15年間にわたる製造実績と市場での利用実績がある。現在市場投入している製品は、600Vから1.7kVまでのショットキーダイオード、1kVから1.2kVまでのジャンクションFET(JFET)。これらの領域のSiデバイスを置き換えることができる、充実した製品ポートフォリオを誇っている。

安定性と性能が向上したG5

 ダイオードでは、既に650Vと1200V対応の第5世代(G5)品を市場投入している(図1)。Friedrichs氏はG5での技術の改善点とその効果を解説した。

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図1 第5世代SiCショットキーダイオードの構造

 素子構造の面では、局所的にPN構造を設けてサージ時の抵抗を低減するMPS(Merged PN Schottky)構造を採用。公称電流とサージ電流の比を14倍と、第2世代品の5倍から大幅に向上させた。また、順方向電圧(Vf)を1.4~1.5Vに低減。ジャンクション温度が室温(25℃)から動作温度(150℃)に上がった時の順方向電圧の変動を21%と、第2世代品の60%よりも大幅に抑えた。さらに、ウエハーの厚さを薄くして、抵抗も低減した。

 G5は、適切なSiベースのIGBTと組み合わせハーフブリッジ回路を構成し、これらをハイブリッド・モジュールに集積して使うことを想定している。1200Vのパワーモジュールでは、高速動作を狙った「HighSpeed3 IGBT」もしくは低損失を狙った「IGBT4」のいずれかを組み合わせる。この構成で、ターンオン時、ターンオフ時、リカバリ時の損失の合計を、Siベースのダイオード比で50%前後削減できる。

 Friedrichs氏によると、「1700V対応のG5製品も用意しており、1200V品と同様のメリットを実現できる」という。

MOS製品の開発も継続

 次に、トランジスタの最新の技術開発動向を解説した。SiベースのIGBTをユニポーラのSiCデバイスに置き換えれば、ターンオフ損失と導通損失を低減できる。インフィニオンは、SiCベースのトランジスタ製品として、現在JFETにフォーカスしている。現状のSiCベースのMOS FETでは、総抵抗の60%を占めるチャネル部分の酸化膜界面の信頼性が、厳しい品質管理基準に達しないと判断したからだ。

 ただし、Friedrichs氏によると「第2世代のSiCトランジスタとして、MOS FETの開発も継続。2016年以降に、市場投入の見通しを発表できる」とした。市場投入までには、チャネル抵抗をさらに抑え、相互コンダクタンスを高め、安全なしきい値電圧に設定し、短絡耐性を高める必要があるという。インフィニオンは、DMOSとは別の構造の採用を検討し、課題をクリアする予定だ。さらに、IGBTと同等の信頼性を確保するため、酸化膜の欠陥をなくし、同時にしきい値の安定性も向上。Siデバイスの生産で培ったスクリーニング技術も活用して、厳格な品質管理を行うという。

 フルSiCのインバータの実現は、損失の劇的な削減や小型化につながる。1200V-100Aモジュールをモーター駆動に応用した場合、総損失をSiベース比で60%以上低減する。小型化に関しては、パッケージサイズを80%縮小できる。ただし、単位面積当たりの発熱量は増えるため、パッケージの工夫とともに、より効果的な冷却手法が求められるとした。

SiC化はコスト削減にもつながる

 最後にFriedrichs氏は、SiCデバイスの採用によって、周辺部品の小型化と損失削減によるパッケージの小型化など、多面的なメリットが得られることを強調。こうした利点を活かせば、コスト削減も実現できることを、事例を挙げて示した。

 まず、太陽光発電システムのインバータでは、回路構成をSiベースの3段からSiCベースの2段に単純化し、かつ回路を高速化することで、システムコストを20%以上削減できる。無停電電源装置(UPS)では、電力損失の低減によって、SiCデバイスの採用による投資の増加分を1年間で回収可能。その後の運用コストは5年間で1万ユーロ以上削減する。また、モーター駆動システムでは、SiCの採用による損失低減効果がケーブルやモーターまでおよび、初期投資と運用コストも削減できる。

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