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Siデバイス:実装技術の革新によって、大容量IGBTの信頼性を向上

二本木 直稔氏
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン インダストリアル パワーコントロール事業本部 主幹技師

電力インフラや大型の設備、業務用車両、鉄道では、電圧範囲が1.2kV~6.5kV、電流範囲が数百A~3600Aの高圧・大容量SiベースIGBTモジュールが利用されている。これらの応用では、電流密度や効率の向上に加えて、何より高い信頼性を確保することが欠かせない。インフィニオン テクノロジーズ ジャパン インダストリアル パワーコントロール事業本部 主幹技師の二本木直稔氏が次世代IGBTの最新技術動向を、実装技術を中心に解説した。

 Siベースの大容量IGBTは、風力や太陽光の発電所、送配電、工場の加工・製造装置、建機や商用車、鉄道など、故障して止まることが許されない公共性の高い応用で使われることが多い。二本木氏は、大容量IGBTの潜在能力を底上げする、3つの最新技術を紹介した。

接合部の材料を徹底的に見直し

 まず最初に紹介したのは、信頼性を劇的に高める新しいアセンブリ技術「.XT」である。これまで150℃が上限だった動作保証温度を、175℃まで引き上げる。

 IGBTモジュールの寿命は、ワイヤーボンド、チップと基板の接合、基板とベースプレートの接合、それぞれの信頼性によって決まる。IGBTモジュールは、動作時に高温になり、モジュール全体が膨張。この時、熱膨張率が違う材料が接する部分でストレスがかかり、不良を起こす。

 .XTでの改善点は、大きく3つ。まず、ワイヤーの材料をAlからCuに変更。熱膨張率が35%小さくなり、Siとの差が縮まった。さらに、電気抵抗率が40%低減、熱伝導率が80%向上する性能改善につながる利点も得た。次に、チップと基板を接続するハンダを、低温でのAg焼結に変更し、信頼性を大幅に向上させた。最後に、基板とベースプレートの間の接続を、高信頼性ハンダプロセスに変更した。

 インフィニオンは、.XTを投入したパッケージとして、1200A対応の「PrimePACK2」と1800A対応の「PrimePACK3+」の2種類を用意。それぞれに、1200V対応もしくは1700V対応の第5世代IGBTを搭載すれば、前世代製品に比べて、電流密度を25%向上、または寿命を10倍に延長できるようになった。

高性能化できるスケーラブルな実装

 次に紹介したのが、新しいパッケージコンセプト「XHP(FleXible High-Power Platform)」(図3)。電源回路の動作を安定させ、大容量での高効率化や、厳しい利用条件下での信頼性や寿命の向上を狙った技術である。同時に、システム構成の単純化も実現している。

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図3 インフィニオンの新しいパッケージコンセプト「XHP」

 ある条件下ではストレインインダクタンスおよびスイッチングスピードのミスマッチから電圧/電流波形が振動して思い通りの性能や信頼性は得られない。XHPでは、波形を安定させるため、「ストリップラインコンセプト」と呼ぶ内部構造の工夫で、サイズを大きくすることなくストレインインダクタンスを低減。パッケージをXHP対応に換えるだけで電流密度を17%向上できる。対応パッケージは、最初3.3kV/450Aのものを投入し、その後4.5kV/400A、6.5kV/275Aのものを順次投入していく。

 XHPの特徴は、その形状にもある。これまでは、モジュールの容量に応じて、さまざまなサイズのパッケージを用意していた。XHPでは、基本形状のパッケージを容量に応じて並列接続し、さまざまな容量に対応していく。既存の冷却システムをそのまま使え、上面に駆動回路を搭載した基板を配置できる工夫もしている。

RCDCで6.5kV品を大容量化

 最後に、IGBTとダイオードの機能を1チップに集積した「RCDC(Reverse Conducting IGBT with Diode Control)」を利用した大容量IGBTモジュールを紹介した。RCDCは、1200Vといった低圧領域に向けたチップでは既に存在していた。今回紹介したのは6.5kV対応のチップを使ったモジュール。これまで6.5kV対応のIGBTモジュールでは、4個のIGBTと2個のダイオードを組み合わせて、750Aの回路ならばどうにかパッケージに入れられる状態だった。これをRCDC6個の構成にすることで、1000Aまで大容量化した。

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