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【インフィニオン テクノロジーズ ジャパン】ドイツ発の研究開発エコシステムで培った強みを日本企業のイノベーション創出に注ぐ

自動車の電動化・自動化等により、技術革新だけでなく、自動車のあり方そのものも変わろうとしている。こうした中、次世代自動車の開発を、電子システムと半導体デバイスを活用して、いかに的確に、タイムリーに実現するかが、ビジネスの成否を決める要因になってきている。ドイツを始めとする世界中の自動車産業で、OEMやティア1の技術革新を半導体デバイスの供給の側から支え、数々の成果を挙げているのがインフィニオン テクノロジーズである。自動車のイノベーションを生み出すためには、どのような研究開発エコシステム・開発体制が必要になるのか、そこで同社がどのような役割を演じるのか。インフィニオン テクノロジーズ ジャパン オートモーティブ事業本部 本部長の徳渕夏樹氏に聞いた。

——自動車業界の中でのインフィニオンの強みの源泉は、どこにあるのでしょうか。

徳渕:おかげさまで、インフィニオンは世界各地で、車載用半導体デバイスのサプライヤーとして広く認知頂けるようになってきました。その強みの源泉となっているのが、ドイツ特有の厚みのある研究開発エコシステムを活用したオープンイノベーション手法です。以下、あくまで一つの参考例として説明させて頂きます。

 ドイツでは、自動車メーカー、システムメーカー、標準化活動等を行う各種業界団体、連邦や州の政府、大学、ベンチャーキャピタル、ベンチャー企業群が有機的につながっています。互いが棲み分けと協業のバランスを取りながら、シーズ技術から量産技術に至る各開発ステージで、イノベーションを事業に取り込む工夫をしています。分野は違いますが、今話題の「Industrie 4.0」も広義ではこの様なエコシステムが背景になっていると言えるかもしれません。

 まず特筆すべきは、産官学の連携が密である点です。基礎科学研究分野でのMax-Planck研究所、応用技術開発分野でのFraunhofer研究機構のような公的な研究機関が、連邦政府や州政府の潤沢な資金を背景にして、技術開発を進めています。こうした研究機関が産業界と学術界の橋渡をするだけでなく、各種助成金を使ったベンチャー育成のプログラムも手伝い、シーズ技術からイノベーションが生まれる過程が後押しされています。

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 さらに、各種業界団体が効果的に機能している点もポイントです。会社・業界をまたがった複数ステークホルダーの足並みを揃え、ビジョンを共有するのは容易ではありません。業界をあげてのイノベーションが焦点の場合はなおさらです。ドイツの有名な業界団体の例としては、ドイツ自動車工業会(VDA)、車載ソフトウェアの標準化を進めるAUTOSARなどの恒常的に活動をする組織もあれば、目的達成後に解散したRoCCやFlexRayなどのようなコンソーシアムもあります。それぞれが、企業や大学をうまく巻き込みながら、オープンイノベーションを生み出す環境を作っています。

オープンイノベーションの効果を活用

——どのようなベンチャー企業の育成に取り組んでいるのでしょうか。

徳渕:ソフトウェアやIT分野だけではなく、自動車や産業系機器に代表されるような、エンドユーザや取引企業群との擦り合わせが肝となる、ものづくり系のベンチャー企業創出にも力を入れている点がドイツでの一つの特徴かと思います。大企業は、こうしたベンチャー企業の成果を活かして、自社だけではカバーしきれない新技術を外部から導入し、自社技術の継続的な底上げを図っています。

 また、ドイツを代表するような大手企業は、コーポレート・ベンチャーキャピタルを設立し、昔からベンチャー企業の新技術を取り込む活動をしています。インフィニオンも「SIP(ストラテジック・インベストメント・プログラム)」と呼ぶ、同種の取り組みを始めています。2014年にはミュンヘンで「ベンチャーフォーラム」と呼ぶベンチャー企業を対象にした技術コンペと、ネットワーク創出の場を持ちました。2015年秋には、日本を含むアジア地区のベンチャー企業を対象に、シンガポールでも同様の場を設ける予定です。

 この様に、ドイツの研究開発エコシステムは、産官学の内外での連携の仕組み、ベンチャー企業育成の仕組み等に特徴を持っています。自前技術だけでは対応しにくいニーズに対し、オープンイノベーションを使って、的確かつタイムリーに応える、一つのやり方かと思います。インフィニオンはそのエコシステムの一部として、半導体の開発・生産・供給の観点からお手伝いしてきた会社です。