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電源ノイズでもう困らない!専用測定器が評価効率をアップ

設計した回路が不安定で、電源周りのノイズを疑ってみたものの、確証が掴めずに時間ばかりが過ぎていく・・そうした苦労を経験したエンジニアから多くの支持を受けているのが、電源系の観測に特化したキーサイト・テクノロジーの「電源ノイズアナライザ」である。ここでは電源ノイズアナライザの事例を紹介していき、電源ノイズの観測とデバッグテクニックを見ていく。

 安定した電源供給はシステムの要(かなめ)である。ただし実際には電源系を原因とするトラブルは多い。スイッチング動作に起因するノイズ、負荷変動に起因するノイズ、基板のパターンや層構成に起因するノイズ(揺れ)など、さまざまな電源ノイズが回路を不安定にしたりEMI(不要輻射)を増大させてしまう。

 多くのエンジニアが苦労する電源系の設計や対策において、切り札となるツールがキーサイト・テクノロジーの「電源ノイズアナライザ」である。電源系の観測を目的に開発されたパワーレールプローブ「N7020A」と広帯域・高分解能のデジタル・オシロスコープ「Infiniium Sシリーズ」とで構成される電源専用のアナライザだ(図1)。

図1.キーサイト・テクノロジーの「電源ノイズアナライザ」(パワーレールプローブ「N7020A」(中央)と広帯域・高分解能のデジタル・オシロスコープ「Infiniium Sシリーズ」(左))
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 同社の担当者によると、2014年10月の発売以来、デジタル全般のほか、RF(無線)、航空・防衛など、さまざまな分野から強い引き合いがあるという。

事例1:FPGAの1.2Vコア電源Vccintのノイズ解析

 これまで見えているようで実は見えていなかった「電源ノイズの真の波形」を明らかにしてくれる画期的なツールであるキーサイトの「電源ノイズアナライザ」を使って、FPGAのコア電圧Vccint(1.2V)のノイズを観測してみよう(図2(a))。

 まず、従来の10:1パッシブプローブでVccintを観測したところ、ピークツーピークで75mV程度の電源ノイズが浮かび上がってきた(図2(b))。FPGAのVccintの許容範囲は一般に±5%(ピークツーピークで120mV)だから、仕様には適合しているがマージンはあまりなさそうである。ノイズが帯状でしか観測できていないため、どんなノイズ成分が支配的かまでは把握できない。

 次にパワーレールプローブ「N7020A」で観測したところ、図2(c)の青線の波形が得られた。ノイズの大きさはパッシブプローブの1/2以下に相当するピークツーピークでおおむね30mVであり、十分なマージンがあることが判明した。

 実はパッシブプローブで得られた黄色のノイズ波形の大半は観測系(プローブ)が発するノイズであり、パワーレールプローブ「N7020A」で得られた青い波形が真に近い波形である。これが「電源ノイズの真の波形」を明らかにしてくれる電源ノイズアナライザの威力だ。

 さて、図2(c)の青線の波形をよくみると、全体的には三角波だが、立ち上がり部分に3段の変動があり、また全体にきわめて小刻みなノイズが乗っていることが観測できる。

 そこで、オシロスコープ「Infiniium Sシリーズ」の FFT機能を使ってノイズを周波数ドメインで観測してみると、図2(d)のような周波数特性が得られた。ノイズフロアが全体に下がったことで、ノイズに含まれる周波数成分が明確になり、図では見にくいが、200kHz、5MHz、および25Mzにピークが存在していることがわかったのである。

図2.事例1:FPGAの1.2Vコア電源Vccintのノイズ解析
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超低ノイズ化を実現した専用プローブを開発

 では、なぜ電源ノイズアナライザを使うと、これまで見えなかった真の波形が観測できるのだろうか。

 ポイントは徹底したローノイズ化にある。「N7020A」はアクティブプローブの一種だが、入力段に超ローノイズの最先端アンプ素子を採用するなどして、観測系のノイズを極限まで抑えることに成功した。「N7020A」が発するノイズの大きさは実質的にゼロに近く、オシロスコープの入力チャネルのノイズを10%ほど増加させるだけにとどまる。

 また、-3dB帯域が2GHzと広く、しかも1GHzまでは±2%の平坦性が保証されているため、広い周波数成分のノイズを正確に拾うことができるのも特徴だ。当然ながら、オシロスコープ本体のノイズも重要だ。「Infiniium Sシリーズ」は低ノイズ性能に優れたオシロスコープで、同クラスのオシロスコープと比較して1/5倍~1/2倍の低ノイズ性能を実現している。また広帯域ながらも10bit高分解能のADコンバーターにより小さいリップルも正確にモニタできる。

 このような特徴を持つ電源ノイズアナライザについて、後半では、

  • 事例2:DDRメモリの電源ノイズ対策の事例
  • 事例3:ノイズの原因箇所を探る「ノイズ・ハンティング」の事例

というふたつの事例を紹介しよう。