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電子部品メーカーとメガネの“聖地”、異色のコラボで理想のスマートグラスを開発

村田製作所は、“メガネの聖地”と呼ばれる福井県鯖江市と共同で、新しいコンセプトのスマートグラス「Cool Design Smart Glass」を試作。幕張メッセで開催された「CEATEC Japan 2015」で披露した。このとき同展示会の関連イベントとして、開発に関わったキーマンが集い、「異業種連携で新たなビジネスを創出へ メガネの聖地“鯖江市”で生み出された新たなウエアラブル」と題したパネルディスカッションが開かれた。パネラーとして登壇したのは、福井県鯖江市 市長の牧野百男氏、SAPジャパン インダストリークラウド事業統括本部ネクストイノベーションデベロップメント シニアマネージャーの吉越輝信氏、村田製作所 通信・センサ事業本部 センサ事業部 事業部長の児堂義一氏。議論の中で語られた気付きと示唆の中に、これからのICTシステム開発のあるべき姿を垣間見ることができた。

――Cool Design Smart Glassの開発ではデザインにこだわったと聞いています。

吉越 新しい機能を持った機械は多少使い難くても当然、と考えるのは古い世代の発想です。ICT機器を製品として開発する場合、デジタル機器が身の回りに当たり前のようにある環境で育ったデジタルネイティブ世代が使うことを意識して開発する必要があります。彼らは、「iPhone」のような使い勝手の良い高度なユーザー体験を提供してくれる機器であることが当然で、デザインがよくないと、いくら高機能、高性能でも使わない傾向があります(図1)。

図1 村田製作所と鯖江市のコラボで生まれた新しいコンセプトのスマートグラス「Cool Design Smart Glass」

児堂 デジタル機器には、機能的であること以上に、楽しいこと、手元に置いてうれしいことが重要になっています。こうした観点から、デザインにこだわらなければなりません。ユーザーに求められるデザインは、機器のコンセプト作りのレベルから作り込んでいく必要があります。機能先にありきで、機能を詰め込むだけ詰め込んでしまうと、電子システム部が肥大化し、魅力的で自然に利用できるデザインに収められなくなります。もちろん、部品の小型化を通じてデザイン性の向上を支援するのが村田製作所の役割なのですが、バッテリーのように小型化が困難な部分があるのです。

牧野 鯖江市はメガネの生産で長い歴史と豊富な実績を持っているのですが、近年、生産だけではなく魅力的なデザインを提案できる力がついてきました。今回の共同プロジェクトでは、2次元的な図面だけではなく3次元CADを駆使して、立体的な表現を上手く使ったデザインができる企業が地元で育っていることを再認識しました。メガネメーカーに求められる機能は、生産中心のOEMから開発から受託するODMへと移行しつつありますが、鯖江市の企業は多様なデザインの要求に的確に応えることができます。これは、スマートグラスの開発でも大きな力になることでしょう。