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業種を超えた共感を大切にした開発で、ムラタは新しい体験をユーザーに提供する企業へ

Cool Design Smart Glassのヒューマンマシンインターフェース(HMI)である超小型マイクロポジションセンサ(回転センサ)を開発した村田製作所(以下、ムラタ)。「生活に溶け込むスマートグラス」というCool Design Smart Glassのコンセプトを生み出し、鯖江市とのコラボレーションで試作機を作り上げていく過程では、さまざまな出会いとチャレンジがあったという。今回のプロジェクトを経て、ムラタは、次のビジネスにつながる多くの気付きを得たようだ。使いやすいHMIを生み出す電子部品を提供するメーカーから、ユーザーに新しい操作体験を提案できるメーカーへ。ムラタは着実に進化しつつある。ここでは、超小型回転センサの開発と、鯖江市とのコラボレーションを通じて、どのような気付きを得ていっただろうか。

株式会社 村田製作所 センサ事業部 企画・販推部 企画2課 マネージャー 長谷川直毅氏

 ムラタと言えば、高品質な電子部品を小型化することでは、右に出る企業はないと思われる企業である。しかし、意外なことに回転センサについては「小型化のアイディアはありましたが、ニーズはないと考え、数年前まで技術開発されていませんでした」(村田製作所 センサ事業部 企画・販推部 企画2課 マネージャーの長谷川直毅氏)という。HMI用回転センサの用途が、自動車のエアコンのスイッチなど、携帯性ではなく操作性を優先する機器が中心だったからだ。このため技術開発の視点は、長寿命化、高精度化、低コスト化を目指すものだった。

 ターゲットとなる市場を変えず、これまで通りの視点で技術開発を続けていくと、製品の成熟に伴って市場が飽和してしまうのは必然。ムラタもその点は重々承知していた。そこで、新市場に向けた、新機軸の商品開発を模索するため、未着手だった回転センサの小型化が可能なのか、そもそもニーズがあるのか検討することにした。折しも、米国を中心にスマートウォッチやスマートグラスといったウエアラブル機器の開発・商品化が話題になり、操作性に優れる小型のHMIが求められる予感を感じ始めた時期だった。

 これまで試してこなかった回転センサの小型化。だが、さすがに小型化技術に秀でたムラタである。最初の試作品は、単純に回転を検知するだけの単機能ではあったが、3mm角と圧倒的な小型化を実現できた。時計の竜頭としても利用できる大きさである。小型化できることは分かったものの、直ちに商品化することはできない。HMIに用いるセンサは、組み込む機器のコンセプトや、利用するユーザーの使用感に合わせた製品開発が極めて重要だからだ。その最たる例が、人が常に身に着けることを前提にしたウエアラブル機器に使用するHMI用センサである。まず、作り上げた超小型回転センサのニーズを検証する必要があった。