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Part 2 マイクロプロセッサ「MIPS」

イマジネーションテクノロジーズのマイクロプロセッサ・コアIP「MIPS」は、IoTの時代をにらみながら着々と進化している。2013年後半に「Warriorシリーズ」をリリースしたのを契機に、新体制の下で開発した「新生MIPSコア」の展開を本格化。ハイエンド向けから組み込み向けまで幅広いラインアップを揃えた。すべてのコアに共通してハードウエア仮想化技術を実装しているのが特徴だ。

 イマジネーションテクノロジーズが、米MIPS Technologies 社の買収を発表したのは2012年11月のこと。それから3 年を経て旧MIPS Technologies 社の資産はイマジネーションテクノロジーズ社の技術と一体化された。開発体制の強化も図っており、MIPSコアの開発にかかわる技術者の数は、買収前に比べて2倍以上に増やしている。

図2●MIPSコアのロードマップ
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図3●Microchip Technology社が提供している開 発キット
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 こうした同社の取り組みを象徴するのが、イマジネーションテクノロジーズとして新たに開発した新アーキテクチャ「MIPS32 Release 5」に準拠したコアの相次ぐ出荷だ。これ以後のアーキテクチャ準拠のコアは「Warriorシリーズ」と名付けられ、第1 弾として2013年10 月に「MIPS P5600」を発表。それに続き2014年2月には「MIPS M5100/M5150」、2014年9月にはさらに新しいアーキテクチャ「MIPS64 Release 6」に対応した「P6600/I6400」が追加された(図2)。ユーザーが広がるとともに、開発キットを提供するサードパーティも着実に増えている(図3)。

 すでにMIPSコアを新規に採用した事例は、2014年秋から2015年秋までの1年間に世界全体で50件を超える。年間に8億台のMIPSコア搭載システムが市場に出荷されており、累積で50億台以上のシステムが市場で稼働している。

アプリケーションごとに最適な対策

 MIPSコアには、それぞれ「M」「I」「P」と名付けられた三つのシリーズがある。P5600など「P」を冠するコアはパフォーマンス重視のハイエンド向け。M5100など「M」を冠するコアは組み込み用途を想定したシリーズ。I6400など「I」を冠するコアは性能と効率の両立が求められるミッドレンジ向けに提供する。命令セットはすべてのシリーズで共通である。

 3つのシリーズのコアには、いずれも独自のハードウエア仮想化技術「OmniShield」を実装している(図4)。ハードウエア仮想化は、一つのプロセッサの上で複数のゲストOSを稼働させることができるようにする技術。ユーザーの目からはOSごとに複数のプロセッサが動作しているように見えるが、中で動いているプロセッサは一つ。複数のOSがハードウエアのリソースを共有することで、ハードを有効活用しながらOSごとに処理を切り分けることができる。この機能を利用することで、一つのSoC 上で複数のアプリケーションを稼働させることができるうえに、個々のアプリケーションに応じた最適なセキュリティ対策を施せる。

図4●「OmniShield」の構造
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マイコン向けコアの仮想化で先行

 組み込みシステム向けと位置付けられたMクラスは、マイコン向けのマイクロプロセッサ・コアである。ネットワーク機器や家電のほか、IoT(Internet ofThings)プラットフォームを構成するセンサハブや自動車のADAS(先進運転支援システム)、ウエアラブル・デバイスなどに向いている。

 現在、提供されているM5100 とM5150は、いずれもAptivファミリの組み込み向けコアmicroAptivの流れをくんでいる。microAptivをベースにMIPS32 Release 5アーキテクチャを実装して、OmniShieldを搭載した。マイコン向けでOmniShieldのようなハードウエア仮想化技術が組み込まれているマイクロプロセッサ・コアは、市場で見当たらないのが現状だ。

 プロセッサに対する不正なアクセスを防止するために、ユーザーのソフトウエアとコアのロジックで使用できる疑似乱数発生器を2個搭載するほか、ランダムなパイプラインストールのインジェクションなどの機能を持ちタンパ性を向上させた。M5100はSRAMコントローラとリアルタイム実行ユニットを搭載し、低コスト・低消費電力が求められるマイコン向けに提供する。M5150はL1キャッシュコントローラと仮想メモリ管理を統合することで、高いパフォーマンスを必要とする組み込みプロセッサのニーズに対応する。

 性能と効率の両立したミッドレンジ向けに位置付けられたIクラスの第1弾であるI6400は、Warriorシリーズの最新コアに当たる。最新アーキテクチャのMIPS64/32 Release 6に準拠するコアである。組み込みシステムのほか、デジタル家電や車載機器、タブレット端末などのモバイル機器。さらにネットワーク機器やストレージなど幅広いアプリケーションに展開できる。

 I6400の大きな特徴の一つが、ハードウエアマルチスレッド処理の技術だ。1コア当たり最大4 本のハードウエアマルチスレッドをサポートする。高い処理性能と低消費電力の両立というニーズに応えるための機能で、4本のスレッドのうち最大2 本を同時実行することができる。マルチスレッド処理の機能を搭載したことで、クラスタのエリアサイズが10%ほど増えたものの、トータルでの性能は40%~50%向上した。IシリーズもOmniShieldを搭載しており、最大31のゲスト稼働が可能だ。

「P」や「M」もRelease 6へ

 Warriorシリーズで最上位に位置付けられるPクラス。その第1弾でWarri orシリーズ最初のコアがP5600である。高い性能を要求されるアプリケーション向けのコアだ。タブレット端末やスマートフォンなどのモバイル機器、デジタルテレビやセットトップボックスなどのホームエンターテインメント機器、住宅用ゲートウエイや各種ネットワークアプライアンスなどのネットワーク機器などに向けたSoCがターゲットである。

 P5600は、旧MIPS Technologies時代に開発されたハイエンド向けコアproAptivシリーズの後継に相当する。proAptiv 同様のパイプライン構成を採用。16ステージのSuperScalar/Out-of-Order構成で4 命令の同時実行が可能な点などは共通だが、さらに高いパフォーマンスを実現するために、MIPS32 Release 5で追加された128ビットSIMD命令のサポートなどP5600には様々な新しい技術が詰め込まれている。

 イマジネーションテクノロジーズは、Warriorシリーズの今後の展望も明らかにしている。まずPについては、2015年10月にP6600「Knight」をリリースする。I6400同様にMIPS64 Release 6のアーキテクチャを採用し、64ビット化されるのが大きな特徴だ。その後、2016年にはマルチクラスタ対応のコードネーム「King」のリリースも控えている。MIPSコアは6つのCPUと2つのI/Oで一つのクラスタを構成しているが、Kingではそのクラスタ同士やGPUのクラスタなどがつながるシステムに発展する。

 MもP同様に、MIPS32 Release 6準拠のコードネーム「Viking」が登場する。2016 年にはマルチスレッド対応の「Gunnar」などを計画中だ。Iは2016年にマルチクラスタ対応の「Daimyo」のリリースを予定している。

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