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ロボット産業は創成期から成長期へ、技術の進歩と事業の拡大をFPGAが支える

ロボットの本格的な活用が、さまざまな分野で広がっている。商品としてのロボットをいかに開発・製造していくべきか、その手法を真剣に考えるべき時期がやってきた。工業製品としてのロボットの特徴への対応、組み込む機能の実装手段としての適性。最も柔軟性の高いプログラマブルデバイスであるFPGAは、その両面からロボット産業での技術の進歩と事業の拡大を支えていく。

 生産、建設、警備、家電、医療、介護、そして話し相手…。さまざまな分野でロボットをビジネスにする動きが活発化してきた。技術面でも、複雑で繊細な動きを可能にするメカトロニクス技術や、ディープラーニングを応用してより的確な状況認識・判断ができる人工知能技術などの開発が進んでいる。

 多様なニーズに応えるロボットを、最先端の技術を効果的に実装し、いかなる方法で製品に仕上げたらよいのか。ロボットを収益を上げるビジネスという側面から捉え直して、開発手法を具体的に考えるべき時期に差し掛かっている。

 ロボットを工業製品として捉えたとき、その実現手法を選定する上で、3つの特徴に注目する必要がありそうだ。

 まず、ロボットは多品種少量生産品である。スマートフォンのように1機種を何千万台単位で作る製品ではない。使う目的・環境・ユーザーに応じて仕様を最適化し、盛り込む機能を作り分ける。

 次に、ロボットは最先端の異分野技術の集合体である。電子技術や通信技術、機械技術といったロボットを構成する基盤技術自体が多様である。分野を超えた知識を集め、融合させる仕組みが必要だ。加えて、医療、建設、教育、マーケティングといった、利用シーンに応じた知見を集めて作る必要もある。

 最後に、人々の生活や社会活動の中で人と直接触れ合うロボットには、十分な安全性や信頼性が求められる。出荷時に高品質であるだけではなく、出荷後のメンテナンスや不具合に対する備えも重要になる。

FPGAはロボット作りに最適

 多種多様なロボットを効率よく開発するには、自動車の開発・生産に採用されているような、システムのプラットフォーム化が必要だ。その電子システム部には、組み込む機能を柔軟に選択・変更できるプログラマブルデバイスを中核に置くことになる。中でもFPGAは、工業製品としてのロボットに見られる3つの特徴のすべてに合致することから、ロボットの開発と生産に欠かせないデバイスになりそうだ(写真)。

写真:アルテラのFPGAを使って開発したスパイダー・ロボット
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 FPGAの最大の特長は、プログラムによって、ソフト機能だけではなく、ハード機能も自在に書き込める極めて高い柔軟性である。ロボットに組み込む機能の処理内容に応じて、ソフトとハードから最適な実装方法を選択できるため、ソフト機能しか書き込めない他のプログラマブルデバイスよりも、性能、消費電力、サイズ、コストといった多くの面で勝る。よって、多品種少量生産を効率よく進めるための中核デバイスとして最適といえる。

 加えてFPGAは、プログラムの開発ツールがオープン化されており、さまざまな分野のシステム開発に広く活用されている。このため、各種情報処理用の演算アルゴリズム、画像処理、通信プロトコル処理、自動車の車載システム向け回路、産業機器で用いるモーター制御など、各分野の知恵の結晶であるIP(回路の設計データ)がFPGA上に実装できるかたちで数多く用意されている。これらを集積することで、異分野技術の集合体であるロボットを効率よく開発できる。

 また近年、品質基準が極めて厳しい車載機器での利用が進んでおり、その安全性や信頼性は折り紙付き。特にアルテラの製品は、機能安全の確保に向けた「機能安全データ・パッケージ」を2010年から提供中。第三者認証機関であるTÜV Rheinlandと協力し、FPGA、IP、デザインフロー、開発ツールの認証をあらかじめ済ませており、システム開発に要する期間を大幅に短縮できる。発表されたばかりの第4世代では、対象デバイスが拡大した。

必要な機能を効果的に実装

 ロボットの電子システム部に組み込む基本的な機能として、「状況認識、判断機能」「アクチュエーターの制御機能」「ネットワーク処理機能」が挙げられる。これらの機能を実装するデバイスとしての適性も、FPGAの魅力だ。

 まず、状況認識、判断機能。FPGAには、ロボットと技術的な類似性が多い自動運転車の先駆け、先進運転支援システム(ADAS)で、確かな利用実績を持っている。既に、クルマの周辺の他車や障害物、車線などの位置や動きを把握できるシステムがアルテラのFPGAをベースにして開発され、実用化している。ステレオカメラから1280×720画素、毎秒30フレームで取り込んだ画像を、リアルタイムで処理する性能を備えている。

 さらに画像認識などをより的確かつ高速に行う畳み込みニューラル・ネットワーク(CNN)によるディープラーニングを、FPGAベースで開発する環境も用意している。プロセッサーコア、演算回路、メモリーを1個のデバイスに集積できるFPGAはCNNの実装に有利である。アルテラの「SDK for OpenCLTM」を使えば、複雑なアルゴリズムも簡単にFPGAに実装できる。

 次に、アクチュエーターの制御機能。FPGAは、複雑で正確な動作が求められる多軸加工機のAC誘導モーター制御などで利用されている。指定された加工パラメーターや動作シーケンス、リアルタイムで検知したワークの状態やモーターの負荷状況など、工作機のモーターの駆動条件を決める要素はとても多い。これらの条件や状況を5μ秒以下という短い時間で同時に見比べながら、的確な駆動条件を導き出さなければならない。こうした処理をFPGA上に実装したハードで並列処理させることで、演算処理を高速化できる(図)。アルテラのFPGAには、数値演算を強化する可変精度で浮動小数点演算も実行できるDSPブロックが搭載され、こうした演算処理の実装効果を高めている。

図:FPGAをベースに構成したACモーター制御サブシステムの構成例
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 最後にネットワーク処理機能。ロボットの各部分の協調動作やクラウドにつないでの高度な機能の実現には、高度なネットワークの活用が必須になる。工場の生産ラインの中で、多くの装置や製造装置を精密に協調動作させる部分でも、FPGAの活用が進んでいる。例えば三菱電機は、ARMコアを搭載したアルテラの「Cyclone® V SoC」を搭載した小型・高性能のファクトリーオートメーション(FA)コントローラーを発売している。

 FPGAは、ロボット中の電子システムの開発プラットフォームとして、他のデバイスでは実現できない多くの長所を持っている。FPGAの潜在能力をいかに引き出すかが、ロボットを効果的に商品化する上での鍵になる。

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