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2020年の実用化に向けて5Gの開発がスタート 通信方式選定のカギとなる伝送テスト進む

2020年の実用化を目指して第5世代移動通信(5G)の開発が始まった。日経エレクトロニクスは、ローデ・シュワルツ・ジャパンの協力により、NE先端テクノロジーフォーラム「第5世代移動通信システム(5G)~IoT、自動運転車からロボットまですべてを飲み込む次世代技術を知る1日~」を2015年10月21日にステーションコンファレンス東京で開催した。5G標準化の動きをはじめ、IoT、車車間/路車間通信(V2X)など様々な展開が期待される5Gの技術課題について講演が行われた。

 現在のLTEに比べて大幅な通信速度向上を実現する第5世代移動通信(5G、図1)を早ければ2020年にも実用化しようと、規格開発および要素技術開発の動きが各国で始まっている。

図1■2020年の実用化を目標に動き出した「5G」の特徴
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 ドイツ・ミュンヘンに本社を置き高性能な計測機器をラインアップするRohde & Schwarz GmbH & Co. KGは、5Gの規格化に必要なサウンディング(無線伝搬特性の定量化)に対応した測定ソリューションを提供するなど、測定機器メーカの立場から5G開発の最前線に携わっており、最新の動向と技術的な課題について講演した。

 はじめにRohde & Schwarz GmbH & Co. KG Test and Measurement DivisionのThomas Moosburger氏が「LTE Advancedから5Gへの変遷‐測定機器メーカからの視点」と題して、LTEの現状と5Gの開発状況について説明した。

規格化は「フェーズ1、2」の2段構え

Thomas Moosburger 氏
Rohde & Schwarz GmbH & Co. KG Test and Measurement Division Senior Director of Engineering Protocol Conformance Test,Tools & Support

 LTEの利用者は2015年末には世界中で10億人に達する見込みで、人口の多い中国やインドをはじめとする新興国で堅調な伸びが今後も期待されている。「これほど短期間で成功した移動体通信規格はLTEが初めて」とMoosburger氏は語る。

 LTEは国際的な標準化プロジェクトである3GPP(Third Generation Partnership Project)がまとめたRelease8をベースにして2009年に商用サービスが始まったのち、Release10でキャリア・アグリゲーションやMIMO多重化などの大幅な機能拡張が行われ、最新の規格はRelease12となっている。なおRelease10以降を「LTE-Advanced」と呼ぶ。

 5Gの標準化活動はこの延長で進められることが3GPPで決まっている(図2)。 2018年第3四半期を目標とするRelease15を「フェーズ1」、2019年末を目標とするRelease16を「フェーズ2」として規格化が行われる予定だとMoosburger氏は説明する。標準化の進み具合にもよるが、「最初の5Gサービスは早ければ2020年には登場するのではないか」という。

図2■3GPPがLTE/LTE Advancedの延長として進める5Gの標準化スケジュール
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 5Gの技術課題として、ミリ波帯の利用、Massive MIMOの開発、エアインタフェースとプロトコルの開発、クラウドを使ったネットワーク・アーキテクチャの構築などを挙げた。

 すでに始まっている要素技術の開発や規格策定に向けて、同社では、チャネルサウンディング、Massive MIMOやビームフォーミング、ワイドバンドの信号テスト、素子の特性評価などに対応するテストソリューションを幅広く提案していく。

 5Gでは、MIMOの多重化などによるスペクトラムの効率向上(5倍)、センチ波やミリ波の採用による帯域拡大(20倍)、スモールセルなどによる高密度化(50倍)、Wi-Fiのオフロード化(2倍)などの工夫により、計算上は現状に比べて1万倍の性能向上を目指している。

サウンディングで伝搬特性を把握

Heinz Mellein 氏
Rohde & Schwarz GmbH & Co. KG Technology Management Systems and Projects

 最適な通信方式を選択するために、周波数、変調方式、ビームフォーミング、移動速度などの諸条件を変えて都市や郊外などさまざまな環境下で送受信のテストを行い、伝搬特性を明らかにしてモデル化する「サウンディング」作業が各国で行われている。

 そうしたサウンディングの概要について、「5Gチャネルサウンディングの原理と、測定器による評価手法について」と題してRohde & Schwarz GmbH & Co. KG Technology Management Systems and ProjectsのHeinz Mellein氏が講演した。

 Mellein氏は、はじめに「大気によるパス損失のチャネルモデルを作る必要がある」と指摘する。距離と電波強度の関係を表したフリス(Friis)の伝送公式で、指数項γは自由大気では2だが、屋内では1.7程度に下がる一方で、障害物の多い都市では3を超えることもあると述べ、現在は詳しい特性を調べている段階と説明した。

 なお、こうした減衰による影響を抑えるには、「Massive MIMOとビームフォーミングしか今のところ方法がない」と述べる。

Dr.Wilhelm Keusgen 氏
Heinrich-Hertz-Institute Department Wireless Communications and Networks Fraunhofer-Institute for communication engineering

 続いて、同社のベクトル信号発生器「R&S SMW200」で変調信号を生成し送出し、受信した波形シグナル・スペクトラム・アナライザ「R&S FSW85」を使って分析するセットアップを紹介した。両方の機器が離れている場合は、GNSS(GPS)などと併用し両者の時間関係を正確に同期させて解析する必要があるが、サードパーティ品で対応できるという。

 サウンディング概要のパート2に登壇した独Heinrich-Hertz-InstituteのWilhelm Keusgen氏は、「ミリ波通信におけるチャネル測定とモデリング」について講演した。

 「ミリ波は5Gにおいて大きな役割を果たす可能性がある」と述べ、6GHzから100GHzのミリ波帯を使った超広帯域通信の技術課題を検討する欧州の「mmMAGIC」の活動を簡単に紹介した。

Dr. Taro Eichler 氏
Rohde & Schwarz International Operation GmbH Technology Marketing Manager

 実際のサウンディングの例として、Rohde & Schwarz本社ビルのアトリウムで17GHz帯を用いて行った事例や、都市部で60GHz、28GHz、および10GHzと60GHzのデュアルなどで行った例について測定データを交えながら説明し、受信アンテナの前を歩行者やバスが通過するだけで20dBを超える電波強度の低下が見られたことを報告した。

 Rohde & Schwarz International Operation GmbH Technology Marketing ManagerのTaro Eichler氏は「5Gの最新エアインタフェースについて」と題して、エアインタフェースの候補に挙げられている各種の伝送方式の概要を説明した。

検討が進むエアインタフェース

 エアインタフェースは時間と周波数(チャネル)が完全に分かれた状態が理想だが、実際には帯域外スペクトルによる干渉や、プレフィクス送信に伴うオーバーヘッドが存在するため、5Gの利用シナリオを考慮してベストなエアインタフェースを選択する必要があると指摘する。

 たとえば、機器を遠隔操作したときのフィードバックを返すような「タクタイル(触覚)インターネット」を実現するには、移動中も含めてネットワークレイテンシを1ms程度に抑える必要があるほか、M2Mのような通信形態に対応するには省エネ性が求められる。

 Eichler氏は、LTEでも使われているOFDMはスペクトラムが広く、かつサイクリック・プレフィクスと呼ぶガード区間によるオーバーヘッドの問題があり、5Gには適さないとし、現在検討されているUFMC、FBMC、GFDM、F-OFDMの4種類を候補として挙げた。

 このうちFBMCとGFDMはサブキャリアごとにフィルタを必要とするなど、方式の選択は回路規模にも影響を与えることを示した。帯域外スペクトルはFBMCがもっとも小さいが、送受信波形の前後にフィルタ・テイルが付加されるため、シンボルが短い場合は伝送効率が低くなるという課題を挙げた。

 Eichler氏は結論として、いずれの方式にも長所と短所があり現時点では最適解が出ていないと述べ、伝搬特性の把握とモデル化を行うサウンディングと並んでエアインタフェースの選定が課題と指摘した。

 同社はこうしたエアインタフェースの開発および評価用のツールとして、サウンディングと同様に、シグナル・スペクトラム・アナライザ「R&S FSW85」やベクトル信号発生器「R&S SMW200」などのソリューションを提案していく考えだ(図3)。

図3■Rohde & Schwarz GmbH & Co. KGが提供する5Gのテストソリューション
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参加者の関心集める二つのデモ

 セミナー会場のロビーではRohde & Schwarz GmbH &Co. KGによる二つのデモが行われた。

 一つがサウンディングのデモで、ベクトル信号発生器「R&S SMW200」とI/Q変調信号発生器「R&S AFQ100B」で生成したRF信号をミキサーでアップコンバートして82.5GHzを発生させ、シグナル・スペクトラム・アナライザ「R&S FSW85」で受信し、伝搬遅延およびパワースペクトルをパソコンで表示するという構成例だ。デモは同軸接続により行われたため、終始安定した送受信が示されたが、電波暗室などを利用し、アンテナ間の受送信距離を延ばすことで、マルチパスや伝送損失の挙動も見ることができる。同様の構成について、すでに日本での納入実績があるという。

 もう一つは、無線機テスタ「R&S CMW500」を基地局シミュレータとして使用し、スマートフォンがどのようなパケットを送信しているかを調べるソリューション。

 OSやアプリケーションの挙動を把握できるため、OTT(サービス事業者)や端末メーカからの引き合いが強いという。

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