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モンタビスタのLinuxが支える5G時代のシステムの信頼性と安全性

2020年の商用化を目指す第5世代移動通信「5G」では、現行のLTE(Long Term Evolution)に加え機器間通信の利用例が格段に増えると言われている。通信事業者の機器向けに高信頼性のLinux商用ディストリビューション「MontaVista Linux」を提供しているモンタビスタ ソフトウエア ジャパンは、今後の5G時代のシステムを同社のLinuxが支えていくと言う。同社 代表取締役の染谷 裕氏と営業技術部部長の吉本泰弘氏に、MontaVista Linuxが今後の5G時代のシステムに提供していく価値について尋ねた。

 第5世代移動通信「5G」の技術開発が、2020年の商用化を目指して活発になっている。5Gの対象は従来のモバイル通信機器だけでなく、IoT(Internet of Things)機器から自動車の自動運転まで利用例が多岐に広がると考えられる。様々な機器が5Gの通信機能を獲得すると、それを稼働させているプラットフォームの信頼性やセキュリティの高さも同時に求められる。5Gの広がりは単なる通信インフラへの影響だけでなく、身の回りの多くの機器に対しても堅牢で安定性があり、セキュリティ対策が必要になるといった要件を突き付け始めた。

キャリア向けに信頼性、安全性の実績
「CGE7」は5Gに向けたプラットフォームへ

 モンタビスタ ソフトウエア ジャパンは、Linuxの商用ディストリビュータとして「MontaVista Linux」を提供している。その中でも、通信事業者(キャリア)向けのバージョンである「キャリアグレードエディション」(CGE)は国内外の通信機器ベンダーが採用し、キャリアのネットワークを支えてきた。モンタビスタ ソフトウエア ジャパン代表取締役の染谷 裕氏は「CGEは、キャリアに納める通信機器向けのLinuxとして10年以上の実績があります。キャリアのコアネットワークを構成するEPC(Evolved Packet Core)から各種のスイッチ・ルーター、無線基地局まで多くの機器に採用され、キャリアの求める高い信頼性に合致したLinuxとして高い評価を得ています」と語る。

 CGEの特徴は、シングルソース(コードを管理しているリポジトリが単一である)にもかかわらず、ARMv7/v8、x86、MIPS 64、PowerPCなど異なるプロセッサーに対応していること。交換機や大型スイッチ装置のような大規模な機器から、ハブ/ルーターなどの小型機器まで、搭載するアーキテクチャーが異なっていても、1つのソースコードで対応できることなど、その柔軟性が評価されている。さらに、「キャリアのバックボーンネットワークでは、長期間の安定したサポートが求められます。単一のソフトウェア製品で10年を越す長期サポートの実績があることも、お客様に採用をいただいている理由の一つです」と、同社 営業技術部部長の吉本泰弘氏は語る。

 CGEの最新バージョンは2014年に提供が始まった「CGE7」。CGE7では、Linuxカーネルを3.10へと、従来製品「CGE6」までの2.6.32からアップし、仮想化や最新セキュリティ技術への対応を一層進めた(図1)。「キャリアのネットワークでは、仮想化への対応が急速に求められるようになっています。5Gなどの新技術への対応に加えて、既存の通信事業者向けの専用機器のハードウエア更新が難しくなってきたことも一因です。既存の専用機のOSをそのまま新しいハードウエアで動かす仕組みとして、仮想化が注目されています。仮想化対応を進めたCGE7により、今後の5Gだけでなく、既存の3Gにも対応可能です」(吉本氏)。

図 1 信頼性と安全性を備えたMontaVista Linux
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 5Gでは、10Gビット/秒といった超高速のピークデータレートや、スタジアムなど人口密集地域での高密度な通信、多量のIoTデバイスの収容など、これまでの通信機器に求められる負荷を超える性能が要求される。キャリアグレードのLinuxを提供し続けてきた信頼性を持つCGE7ならば、大きな負荷が予測される5G向けの通信機器を安定して稼働させるプラットフォームとしての期待に応えられるというのだ。

信頼性、安全性はIoT機器にも
Linuxの適用範囲が5Gで拡大

 キャリア向けのLinuxディストリビューションの「CGE」と並んで、モンタビスタ ソフトウエア ジャパンが力を入れているのが、小規模の組み込み機器向けである「キャリアグレードエクスプレス(CGX)」だ。キャリア向けの通信機器を想定したCGEでは多方面の機能がパッケージに含まれているが、より小規模の機器をターゲットにしたCGXではSoCや個別のマーケットに向けて機能を特化した複数のパッケージを用意する。CGEの信頼性、安全性は確保しながら、小規模の機器に必要な機能を提供できる構成である。

 染谷氏はCGEとCGXの違いについて「CGEはキャリア向けであり、豊富な機能と高い信頼性を長期間にわたって提供し続けるため、安定した技術を使うことになります。一方、IoTを含めた様々なデバイスをターゲットにしたCGXでは、最新の技術に追従して新しい機器や新しい用途への対応を進めます」と説明する。モバイルネットワークは5Gへ向かうと同時に、モバイルネットワークのスモールセル化による基地局の増加や、IoTデバイスの普及などにより裾野が広がる。キャリア向けの大規模な通信機器だけでなく、ネットワークの様々なノードやデバイスで、CGXの用途があるとの考えだ。

 一方で、これまで高機能なOSを必要としなかったデバイスにも、CGXの用途はあると見込む。吉本氏は、「ピークデータレートが高くなる5Gでは、データの転送量が多くなることが予想されます。センサーノードや監視カメラなどの小さなデバイスでも、高性能のCPUを載せることが多くなるでしょう。これまでOSなしやリアルタイムOSで動いていた機器も、Linuxなどの潤沢なOSでプラットフォームを作る動きが加速すると考えています」と説明する。

 機能、性能はもちろん、5Gによってネットワーク化される多くのデバイスにとって、信頼性や安全性、サポートのしやすさも新しく直面する課題になる。染谷氏は例を挙げながらこう語る。「自動販売機のCPUを考えてみましょう。今後は通信が必須になりますが、出荷後に設置されるまで現地でどの通信手段が最適かわからないわけです。電話回線からWi-Fi、3G/4G、そして5Gといった通信手段に柔軟に対応できる機器を作るには、Linuxのような潤沢なリソースがあるOSが必要になります。さらに課金できる機器ではセキュリティの担保が必須条件になります。フリーのLinuxでは、セットメーカーが長期にわたってセキュリティ要件を担保していくのは難しいでしょう。セキュリティやサポートといった側面からも、5G時代には商用ディストリビュータのLinuxの必要性が高まると考えています」。

 一方で、5G時代が到来して、数多のIoT機器が使われるようになったとしても、そのすべてにMontaVista Linuxが求められるとは限らない。染谷氏も「センサーなどのIoTデバイスならば、Linuxを動かす必要は限定的です」と語る。しかし染谷氏は同時に、5G時代に多くのデバイスが利用されるようになり、それぞれのセキュリティや信頼性を担保する必要が高まると、これまでとは異なるデバイスが求められてLinuxの適用範囲が広がる可能性があると指摘する。

 キャリアのモバイルネットワークを考えると、5G時代には現在のLTEとは比較にならないほどたくさんの小さな基地局(スモールセル)が使われる。しかし、電柱単位といった膨大な数が必要な小さな基地局に対して、すべて高性能なCPUと潤沢なOSを搭載するのはコスト的に負担になる。そこで、染谷氏は次のようなソリューションを語る。「スモールセルにはアンテナと電源とネットワーク機能だけを持たせ、CPUやOSはネットワーク側のノードにあるサーバーに集約するC-RAN(Cloud Radio Access Network)といった手法が用いられると考えています。ノードでは仮想化OSによってスモールセルごとのVM(仮想マシン)を走らせる形態が考えられます。仮想化するとOSには信頼性のあるLinuxが必須になります」(図2)。

図 2 C-RAN(Cloud Radio Access Network)
小型基地局(スモールセル)にプラットフォームが不要になり、仮想化されて集約できる。左がC-RANがない場合、右がC-RANの場合
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 スモールセルに限らず、数多くのIoT機器をセキュアに低コストでネットワークに接続するユースケースが増える5G時代には、C-RANに代表されるようなデバイス間の機能の仮想化と集中が一層進むことが考えられる。ネットワーク末端のデバイスを集約するノードとなるサーバー機器には、性能だけでなくセキュリティ機能や信頼性も高い次元で要求され、商用のLinuxディストリビューションの適用範囲が広がるという見立てである。

 CGXは、2016年3月末までに最新のCGX2.0が提供される予定。仮想化機能やセキュリティ機能を高めたキャリア向けのCGEが5Gネットワークの頂点から高機能端末までをカバーする一方で、より裾野に近い数多くのデバイスについては最新のCGXが柔軟に必要な機能を提供していく。モンタビスタ ソフトウエア ジャパンは、これら2つの商用Linuxディストリビューションが備える高い信頼性とセキュリティ性能に加えて、盤石のサポート体制によって、これから訪れる5Gのビッグウェーブの頂点に立つ意気込みだ。

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