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【dSPACE】走行環境やセンサーをモデル化

進化したモデルベース開発(MBD)は、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術の開発に使われる場面が増えそうだ。dSPACE Japanの都築勝也氏は、日経Automotive、日経テクノロジーオンライン主催セミナー「車載電子システムの進化を支える先進開発環境~効率的な開発/テストを可能にする最新技術とノウハウ」で「ADAS開発はMBDを使うとこう変わる!?」と題して講演した。

 モデルベース開発(MBD)においては、いわゆる「V字プロセス」に沿って、要求分析、システム仕様設計、コンポーネント機能設計、量産コード生成、コンポーネント検証、システム検証、適合・車両確認という順に開発が進んでいく。最大のメリットは、それぞれのプロセスごとに設計内容をロジカルに確認できるので、開発プロセスが最後まで進んでから不具合が発生するリスクを最小限に抑えられ、手戻り工数を削減できることである。

自動運転、無事故運転が開発案件に

 自動車業界は現在、「自動運転」の開発を進めている。アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、車線維持支援(LKS)など、クルマの1方向(前後または左右)の自動制御、あるいは2方向(前後と左右)の自動制御が既に実現しているが、人間は監視役として必要である。2020年ごろから特定の条件下で、人間が監視する中で自動運転が実現する見通しで、2030年ごろから人間を必要としない自動運転が実用化するだろう。

 一方、「無事故運転」も重要なテーマで、現在交通事故の原因の9割は人間のミスである。この部分をカバーするために、欧州委員会が緊急自動ブレーキ(AEB)や車線逸脱警報(LDW)などの機能を商用車で既に義務化している。また、欧州の新車アセスメント(ユーロNCAP)では、安全性評価の項目に、2014年からAEBやLDWを装備しているかどうかを加えたほか、2016年にはAEBが歩行者や交通弱者を検知する機能を備えているかを条件に加える予定で、当社でも注目している。

 ADASには他にも歩行者検知機能付きAEB、標識認識、死角検知、駐車支援、エネルギー管理機能を備えた先読みクルーズコントロール、緊急ステアリング操作支援などがあり、それぞれにテストが必要になる。

 現在のテストの課題としては(1)ハードウエアのアーキテクチャーが統一されていない、(2)システムが複雑で、つながるECU(電子制御ユニット)が非常に多い、(3)今までなかったような複雑で様々なセンサー(カメラ、レーダー)を使用する、(4)カメラやレーダーなど情報量が非常に多い──などが挙げられる。

 さらに自動運転になれば、テストに必要な走行距離が非常に長くなる。環境条件の変化(雨、雪、太陽の向き…)など、テストシナリオも非常に多岐にわたるため、従来型の路上テストでは、すべてのシナリオを網羅するのは不可能になる。従って、自動運転に向けた開発では、MBDによる開発が不可欠になってきており、MBDのプロセス自体も変化してきている(図1)。

図1 自動運転の開発では検証プロセスが変わる
ADASや自動運転の開発では、テストすべき環境が非常に多い。このため、テストコースでの検証以前のプロセスはすべて仮想環境で自動的に実施する必要がある。
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ADAS開発に必要なモデル作り

 ADASの開発に必要なモデルは、まず道路だ。複数車線、交差点、合流などの要素を備えた道路のモデルが必要になる。このほか、乗用車、トラック、2輪車、歩行者、建物などの要素を備えた路上オブジェクトのモデルや、レーダー、カメラ、超音波センサーなどのセンサーのモデルである。

 モデルの作成は大変な作業だ。道路のモデルに関しては、世界の交差点を見ると、とても複雑な構造をしている。当社では、こうした交差点を、非常にグラフィカルに設定することができる道路モデルを構築するツールとして「ModelDesk」を用意している。地図データを一から作るのではなく、「ADAS RP」や「OpenDRIVE standard」といった既にある地図データから道路のモデルを生成するための変換ツールも用意している。

 路上のオブジェクトは、標識やほかのクルマなども、ModelDeskで形状を入力して設定できる。センサーのモデルは現在、センシングの範囲を単純な三角形に置き換えて、そのときの角度や距離をデータとして設定してシミュレーションを行う。3Dセンサーのモデルや、「ADASIS V2」フォーマットの電子地図への対応も、現在進めているところだ。

 次に、ADASの開発に使うHILSについて紹介しよう。ADASでは、カメラやレーダーのモデルからの出力に基づいて、アクチュエーターをドライバーの動きに介入させることが必要になる。このためHILSの中にドライバーの制御ループと、ADASの制御ループの二重のループが存在する難しさがある。

 ドイツのトラックメーカーであるMAN社は、当社のシステムを使ってADASを開発しているが、ここで使っているテストシステムでは、パワートレーンや、ブレーキのECUのHILSといった従来からあるシステムに加えて、カメラやレーダー、ACCのECUをテストするHILSも並んでいるのが特徴である。カメラECUのHILSでは、カメラの実機にアニメーションの画像を見せて、前のクルマがいるような環境を作り出してECUを評価している。カメラのモジュールは焦点調節用の光学レンズを備えており、これによって距離感を合わせている。さらに、警告などの表示をするインストルメントパネルの画像もテスト用のカメラで撮影してHILSに入力する(図2)。

図2 緊急自動ブレーキ(AEB)のテスト装置の事例
独MAN Truck & Bus AG社の例。カメラの実機を使い、アニメーション画像を見せて走行環境を再現する。
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 今後のADASや自動運転の開発に向けた課題としては、V2X(Vehicle to X)、道路工事時のドライバー支援機能、夜間のAEB機能、ナイトビジョンシステム、サラウンドビューシステムなどに対応したテスト環境構築があり、現在開発に取り組んでいるところだ。

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