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【日本シノプシス合同会社】プロトタイピングによる先進開発

日本シノプシスの中野淳二氏は日経Automotive、日経テクノロジーオンライン主催セミナー「車載電子システムの進化を支える先進開発環境」で登壇し、「自動車向けプロトタイピング導入と展開~時代の波に乗り遅れない設計改革」と題して講演した。仮想SoCを使うことで開発の早期からハード/ソフトの統合テストを可能にし、開発の短期化や品質向上を図るプロトタイピングを紹介した。

 これまでのSoC(システム・オン・チップ)の開発プロセスは、まずアーキテクチャーを設計し、仕様を確定してからハードウエア開発が始まり、ハードウエアの開発がある程度進んだ段階でソフトウエア開発を始め、ソフトウエアとハードウエアが出来上がったところでハード/ソフトの統合テストをするというものだった。これでは開発に時間がかかるうえ、統合テストの段階で不具合が見つかることも多く、大変な手間だった。

 この講演では、最近注目を集めている「プロトタイピング」について紹介しよう。プロトタイピングの手法とは、ハードウエアの開発とソフトウエアの開発を並行して進め、ハードウエアが完成しない段階で、SoCのプロトタイプを使ってハード/ソフト統合テストを実施し、この結果をハードウエア設計やソフトウエア設計にフィードバックするものだ。

プロトタイピングに3つの手法

 プロトタイピングの手法には大きく分けて(1)バーチャル・プロトタイピング、(2)フィジカル・プロトタイピング、(3)ハイブリッド・プロトタイピング──の3つがある。

 バーチャル・プロトタイピングは、PC上で動作する仮想のSoCやマイコン(MCU)のモデル(シミュレーションモデル)を、アーキテクチャー設計や、ソフトウエア開発に活用するもの。シミュレーションモデルには、市販IPの標準的なモデルであるSystemCモデルを利用する。

 これに対して、フィジカル・プロトタイピングは、高速のFPGA(Field Programmable Gate Array)システム上に、SoCやマイコンの回路設計データを実装して実行させるもので、USBやCAN、Ethernetなど、実際のネットワーク環境につないで検証したり、ハード/ソフト統合テストに使われる。

 ハイブリッド・プロトタイピングは、バーチャル・プロトタイピングとフィジカル・プロトタイピングを組み合わせたもので、主な目的はシステムテスト、ハード/ソフト統合テスト、ソフト開発と、フィジカル・プロトタイピングとほぼ同じだが、PC上でシミュレーションモデルを実行するので、FPGAはインターフェース部分を実装するだけで、実際のネットワークやUSBなどを接続して検証できるという利点がある。

 当社では、システム・レベルの検証・最適化ツールである「Platform Architect MCO」や、仮想SoCの実行環境である「Virtualizer」、FPGAベースのプロトタイピングシステム「HAPS」などのソリューションを提供している。

プロトタイピングが必要な理由

 自動車分野でプロトタイピングが広く使われ始めた理由として、車載システムのアーキテクチャーがますます複雑化していることが挙げられる。環境対策、安全性の向上、接続性の拡大などニーズには事欠かない。従来の車載ECUでは、エンジン、ブレーキなどのECUが単独で動作していたが、先進運転支援システム(ADAS)では、多くのECUやアクチュエーターが連携して動作する必要があり、システムとして設計しなければならない。

 また、ADASのような高度なタスクを実行するために、今後はマルチコアMCUが増加し、マルチコアMCU間の通信量の増大を見越して、タスクをどう分散処理するかも課題になってきた。

 ソフトウエアの規模も急速に増大しており、現在のクルマは1台当たり1億行のソフトを搭載しているといわれる。これが、自動運転車では3億行に増える。加えて、ISO26262に代表されるように、安全性を担保する仕組みが要求される。いかに設計を効率化するかが重要であることが分かるだろう。

 このように、車載システムの複雑化、ネットワーク化が進展していることから、車載システムの検証では、これまでのMCU単独の検証から、車両全体を仮想化し、早期にハード/ソフト統合検証を実施できるようなテスト環境の構築が不可欠になっている。

 自動車分野でのプロトタイピングには、2種類ある。一つはSoCのアーキテクチャーを検証・最適化するための「アーキテクチャーのバーチャル・プロトタイピング(アーキVP)」であり、もう一つがソフトウエアの開発と検証に用いる「VDK(Virtualizer Development Kits)」である。

 アーキVPは従来、半導体メーカーがアーキテクチャー設計に用いるツールだったが、最近では完成車メーカー(OEM)や一次部品メーカー(Tier1)が、アーキテクチャーのパフォーマンスを検証するために使う例が増えてきている(図1)。

図1 アーキテクチャーのバーチャル・プロトタイプ(アーキVP)
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 一方のVDKは、PC上でMCUをシミュレーションすることで、ハードウエアがない段階からソフトウエアのデバッグや解析を可能にする環境であり、可視性や制御性が高いことから迅速なデバッグが可能で、再現性も高い(図2)。

図2 仮想ECU環境
目的とするユースケースに基づいて順次展開する。ソフトウエア開発を早期に開始できる。
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 VDKのユースケースとしては、バーチャルHILS(Hardware-in-the-Loop Simulation)によるシステム統合テストや、ISO26262サポートのための故障注入テスト、カバレッジテスト、リグレッション(回帰)テストの自動化などが挙げられる。こうしたOEM、Tier1の実運用例をまとめた電子書籍を無償で提供しているので、ぜひ参考にしていただきたい。

 最後にFPGAベース・プロトタイピングについて触れたい。FPGAベース・プロトタイピングについては、立ち上げに数カ月かかる、デバッグが困難、100万ASICゲート以上は設計容量に限界がある、などと指摘されている。

 これに対して、当社で提供しているFPGAベース・プロトタイピングのプラットフォーム「HAPS」では、プロトタイピングの立ち上げ期間が1~3週間と短いほか、高速のデバッグ機能を備えており、また16億ASICゲートのSoCの設計もカバーできるのが特長だ。現在はまだ自動車分野での適用例は少ないが、車載電子システムの複雑化が進展するのに伴って、必要とされるだろう。

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