日経テクノロジーonline SPECIAL

【日本イーエスアイ株式会社】ADASを仮想環境でテストする

日本イーエスアイの後藤智氏は、日経Automotive、日経テクノロジーオンライン主催セミナー「車載電子システムの進化を支える先進開発環境~効率的な開発/テストを可能にする最新技術とノウハウ」において、「先進運転支援システム(ADAS)仮想テスト環境」と題して講演し、仮想のセンサーモデルを使ってECUをテストすることで、ADAS開発の効率化を図る同社のソリューションを紹介した。

 当社・日本イーエスアイは、世界各国中に拠点を持つCAEソフトウエアベンダーESI Group(本社: フランス)の日本法人である。今回紹介するADASの仮想テスト環境「Pro-SiVIC」は、各種ADASセンサー、車両、走行環境をWindows PC上でシミュレーションすることが可能だ。

 ADASに関連する最近の動向を見ると、欧州では新車アセスメント(ユーロNCAP)の評価は緊急自動ブレーキ(AEB)、車線逸脱警報(LDW)が2014年以降に加点対象になり、これらの機能がないと、事実上最高評価を得られなくなっている。また米国ではKT法(Kids & Transportation Safety Act)により、2013年に車両重量4.5t以下の車両にはリアビューカメラ/モニターの搭載が義務化された。このように、ADASの搭載の義務化・標準化が進み、その機能がますます複雑化する中で、テストコースでの実機を用いた検証では追いつかなくなっている。

 Pro-SiVICは、標識、建物、樹木などの静的な物体、歩行者など道路上を平行移動する物体、そして上下に動く車両のようにダイナミックに運動する物体をモデル化した走行環境をPC上で再現する。そうした走行環境上の仮想車両の車載センサーモデルからのデータをECUに出力する機能を備えている。仮想センサーモデルには、カメラ(魚眼カメラを含む)、ミリ波レーダー、LIDAR、超音波センサーなどがある。

 ADASシミュレーションを使う利点としてまず挙げられるのは、様々な走行シーンを再現でき、物体やセンサーの配置を瞬時に変更できる柔軟性にある。実際の走行ではテストドライバーを危険にさらすような走行条件も容易に再現できることだ。雨、夕暮れ、夜間などの走行条件も自由に選べる。これにより試作機の製作や、検証にかかるコスト、試験車両や実験機材を海外などに送る物流コストや時間を大幅に節約可能だ。

水たまりへの映り込み、フロントガラスの雨滴まで再現

 現在、ADAS用カメラECUの検証には、アニメーション画像などをスクリーンに投影し、それを実際にカメラの実機で撮影して画像をECUに出力する手法が広く使われている。Pro-SiVICを使ったADASシミュレーションはこれに比べると、テストの自動化や条件の変更が容易なほか、よりリアルな条件でカメラECUを評価できる(図1)。

図1 運転席からの視野をシミュレーションした画面
Pro-SiVICは様々な走行条件や気象条件をリアルに再現できる。ここでは水たまりへの映り込みや、フロントガラスについた雨滴も再現している。
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば、夕暮れ時に、夕日に向かって走行や、トンネル内の照明で照らされた路面、夜間走行時のライトに照らされた道路なども再現でき、トンネル内の照明の数を変更することも容易だ。雨天時の走行環境では、遠方が霧のようになって見通しが悪くなっている様子や、路面に車両が映り込んでいるところ、フロントガラスに雨滴が付いて、速度が上がってくると周囲に拡散していく様子までリアルに再現している。

強力なイメージセンサーモデルを備える

 またPro-SiVICの特徴として、特にイメージセンサーモデルが強力である点が挙げられる。霧、雨、被写体深度、ひずみ、周辺減光、にじみ、ぶれ、ぼやけ、感度、ノイズ、露出など多くのフィルター機能を備えているのがその特長の一つだ。例えば、被写体深度フィルターを適用して被写体深度を浅く設定すると、遠くの景色がぼやけるといった効果を再現可能で、ひずみフィルターでは、中央が膨らんだ樽型のひずみ、あるいは中央が凹んだひずみなどを表現し、また、カメラの画像では画像の周辺がどうしても暗くなるが、この現象も周辺減光フィルターで再現できる。

 一方、車両モデルでは、ウインカー、ライトなどのすべての動作を再現する。車体の色も瞬時に変えられる。またボディに映り込んだ周囲の環境もリアルになっている。あと、陰影を付けるとリアリティは向上するが、詳細にするほどリアルタイム性能が落ちてくるので、モデルの規模やPCの性能との兼ね合いで、陰影考慮なし、建物からの影を考慮、すべての影を考慮、車両自身の影を考慮の4段階がある。

 最後に、サードパーティのコントローラーモデルとの連携について説明しよう。Pro-SiVICでは、センサーからの出力データおよび車両モデルからの出力データを「MATLAB/Simulink」(以下、MATLAB)や「RTMaps」といったコントローラーモデルへ、あるいは実ECU、C++アプリケーションに出力するためのインターフェースを用意している(図2)。

図2 シミュレーションに必要なデータの流れ
Pro-SiVICではサードパーティのコントローラーにセンサーデータを出力することが可能である。
[画像のクリックで拡大表示]

 RTMapsは仏Intempora社が開発したPro-SiVICとのco-simulation実施が可能なツールで、ADASの設計プロセスにおける様々なセンサーとその設定/データフローを効果的にテストすることを可能にするものだ。シミュレーションの自動実行や、設計パラメータのバッチ管理が可能だ。

 一方、MATLABとの連携ではPro-SiVICの各センサーモデルからのraw dataを受け取るためのMATLAB Workspace Variableと、MATLABから仮想車両モデルへの制御信号を送信するため車両の各オブジェクトに対応する「MATLAB Workspace Variable」が自動生成される。

 Pro-SiVICは最大60日間無償で試用することが可能だ(有償トレーニング要受講)。イメージセンサーを校正、センサー特性をPro-SiVICモデルに反映するための業務委託サービス、走行環境モデルのデータ作成業務も委託サービスとして受託している。

お問い合わせ
  • 日本イーエスアイ株式会社
    日本イーエスアイ株式会社

    〒160-0023
    東京都新宿区西新宿6-14-1
    新宿グリーンタワービル16F

    TEL:03-6381-8490

    FAX:03-6381-8488

    URL:http://www.esi.co.jp/