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アナログ・デバイセズ

アナログ半導体ベンダーであるアナログ・デバイセズは、IoTシステムの入り口となる「ラスト1インチ」のソリューションを強調する。センサーからの信号をデジタル化する最も品質に関わるところだ。「FACTORY 2015 FALL」において、「インダストリー4.0を支える、センシング技術と信号処理技術」と題して取り組みを紹介した。

秋山 淳氏
アナログ・デバイセズ
インダストリー&インスツルメンテーション
セグメントディレクター

 米国マサチューセッツ州に本社を置く米Analog Devices社は、アナログ半導体やミックスドシグナル半導体を手掛ける半導体ベンダー。2015年で設立50周年を迎える「老舗」である。同社の日本法人アナログ・デバイセズの秋山淳氏によると、同社のワールドワイドでの売上高は29億ドルに達し、製品カテゴリー別の売上高は、A/DおよびD/Aコンバータ類が46%、アンプおよび高周波製品が28%を占め、自然界のアナログ情報をデジタル情報に変換する製品を主力としている。

 現在の注力分野は、産業機器、通信インフラ、自動車、医療、ヘルスケアであり、「AHEAD OF WHAT'S POSSIBLE(想像を超える可能性を)」というスローガンを据えて、製品開発と製品提案を進めているという。

社会問題がスマート化を後押し

 秋山氏はドイツが国策として提唱した「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」に代表される「スマートファクトリー(進化した工場)」の意義について同社の考えを示した。

 まず、スマートファクトリーのような考え方が登場してきた背景として、労働人口の減少やエネルギー資源の枯渇といった社会的な課題に加え、大量生産型の消費モデルから少量多品種型の消費モデルへの転換などが挙げられると指摘。

 現在の社会問題を解決しながらカスタマイズ生産をしていくには、工場のオペレーションの最適化や自律化が不可欠であると述べた。例えば、プロセス制御の高度化、設備や機器の高機能化および省エネ化、解析技術の導入、堅牢性や安全性の向上など、様々な「スマート化」の手段があり、これらを推進していく必要がある。

 しかし、スマートファクトリーを実現するのは容易でない。設備や機器の状態を把握し、解析して、フィードバックを行う必要がある。その時に正確な情報を取り出す各種のセンサーがあり、収集した情報をフロントエンド回路がしっかりフィルタリングをして、さらにセンサーノードのデータを確実に上位に伝えるネットワーク回路が必要だ。そして、集められたデータをリアルタイムに解析するまでのインフラによって「センサーtoクラウド」システムは構成されている。

 これらエレクトロニクスとしての条件に加えて、同時にスマートファクトリーの体制としても、工程の変更に対応できるフレキシビリティや、大量の情報を扱えるだけの高速通信技術、堅牢性、安全性、低消費電力化、といった様々な条件が横串として必要になると秋山氏は述べる。

 アナログ・デバイセズはアナログ半導体の提供によってスマートファクトリーで必要となる「センサーtoクラウド」の要件に応えていく考えであり、具体的な取り組みを次に説明した。

アナログの入り口「ラスト1インチ」

 工場設備などの様々な状態を把握するにはセンシングが重要になるが、秋山氏は、「ノイズに埋もれた情報をいくらクラウドに集めても、価値を生み出すことはできない」と述べ、センシングやモニタリングで得るデータの品質によって、分析や解析などの後段の品質が決まり、サービスの品質を左右すると指摘。中でもIoTのエッジの部分にあたるセンサーノードの部分を「ラスト1インチ」と表現し、「ラスト1インチ」の性能がシステム性能を左右するとの考えから、振動や温度などをはじめとするアナログ情報を正確にデジタルデータに変換する技術の重要性を説いた(図1)。

図1●「ラスト1インチ」が「センサーtoクラウド」の性能を左右する
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 例えば、トランジスタで生じる1/fノイズを抑えたオートゼロ・アンプ、オフセットや温度ドリフトが小さいアンプあるいはリファレンス(基準電圧発生器)など正確なセンシングを実現する技術を通じて、「ラスト1インチ」の課題に取り組む考えである。

 さらに、こうした技術や製品はスマートファクトリーだけではなく、メディカル分野における生体情報のモニタリングや社会インフラなどにおける数々のモノのセンシングにも生かせると述べ、センシングが求められる様々な分野に注力していく考えを示した。

 なお、アイルランドにある同社の工場では、300以上の機器や設備にセンサーを配置し、稼働状況をモニタリングするという実証実験を行っており、データの収集・解析・モデリングといったノウハウから新しいソリューションの提供を準備しているという。

「センサーtoクラウド」に対応

 秋山氏は講演の後半で具体的な製品を紹介した。スマートファクトリーで様々な情報をセンシングするセンサーデバイスについては、同社はMEMSセンサーにおいて25年以上の実績を持っている。異方性磁気抵抗センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、光学センサーなどをラインアップして、回転、加速度、振動、方向などの幅広いセンシングを実現する。

 堅牢性や機能安全のニーズに対しては、自己診断機能を内蔵した高集積アナログフロントエンド「AD7124-8」を提供する。センサーのフロントエンド回路を構成する様々な機能をワンチップに集積し、さらに各内部回路の異常を自己診断する機能を備えている。「当社は機能安全のコンソーシアムでも活動しており、堅牢性や安全性を高めたいとするマーケットの要望を生かした製品のひとつ」(秋山氏)。

 同じく堅牢性および安全性を高める製品として、フォトカプラに代わるデジタルアイソレーター「iCoupler」を提供する。シリコン上に形成したポリイミドで絶縁を実現しており、10億チャネルを超える出荷実績があるという。

 センサーデータの信号処理や上位アプリケーションでの分析・解析にはプロセッサを提案する。ARMベースのローパワーのマイクロコントローラ、クラス最高の電力効率を実現した固定小数点DSP「Blackfin」ファミリー、ハイパフォーマンスの「SHARC」プロセッサファミリー、「SHARC」プロセッサコアとARMプロセッサコアを統合した次世代の「ADSP-SC」ファミリー(図2)など、ラインアップが充実している。

図2●センサーノードやモーター駆動などに適した次世代プロセッサ「ADSP-SC」ファミリーの特徴
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 秋山氏は講演の最後で、「センサーtoクラウド」を活用したスマートファクトリーにおいて価値を生み出すには、上流となるセンシング過程でのデータの品質が重要になると改めて強調した。自然界のアナログ情報をデジタルデータに正確に変換し伝える同社の技術および製品を通じて、これからもスマートファクトリーの実現に向けたニーズに応えていくと述べた。

お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社

    〒105-0022 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F

    TEL:03-5402-8200

    URL:http://www.analog.com/jp/