日経テクノロジーonline SPECIAL

【アナログ・デバイセズ】センシング技術と信号処理技術でアナログとデジタルの懸け橋に

アナログ半導体ベンダーの「老舗」であるアナログ・デバイセズ。センサーからのアナログ信号をデジタル信号に変換・処理して、インターネットの世界に送り出すまでを担う。同社はそれを「ラスト1インチ」と呼びソリューションの拡充を進めている。「FACTORY 2015 Summer」の講演ではインダストリー4.0を支える技術の可能性を紹介した。

馬渡 修氏
アナログ・デバイセズ
代表取締役社長

 いまセンシング市場のトレンドは、IoT(Internet of Things)やインダストリー4.0の影響で活況を呈しており、センシング関連の半導体の市場規模は5000億円に達するといわれる。インダストリー4.0では、製造工程のあらゆるところにセンサーを設け、センシングデータをネットワークで吸い上げ、データを共有・分析し、次の生産計画に機動的に反映していくという大きな枠組みがある。その中でセンシング技術が全てのベースになっているのが分かるだろう。

 アナログとデジタルの懸け橋となる――アナログ・デバイセズの代表取締役社長である馬渡修氏は、今年(2015年)創業設立50周年を迎える同社の方針を、このように簡潔に示した。その先に「想像を超える可能性が提供できる」とみる。

アナログの入り口「ラスト1インチ」

 リアル世界のアナログ情報をクラウド世界のデジタル情報として取り扱うには、センシングに加えて、A/D変換や信号増幅などのプロセッシング(シグナル・コンディショニング)機能、およびコミュニケーション(コネクティビティ)機能が必要となる。その先にクラウドがありビッグデータなどを解析するアナリティックがある。これが「センサー TO クラウド」のパイプラインだ。

 特に、クラウドに入る前の各段階で電子部品が重要な役割を担っており、センサーが出力するアナログ情報をデジタル情報に変換するセンシングとプロセッシング、そしてコミュニケーションは、電子回路が担い半導体の性能が左右する領域で、同社ではIoTにおける「ラスト1インチ」と位置付ける(図1)。

図1 センシングシステムの性能を左右する「ラスト1インチ」
[画像のクリックで拡大表示]

 いったんクラウドに取り込まれたセンサー情報は、そこにノイズが含まれているかどうかもはや分からない。ノイズが多いクラウドデータはどんな高度な解析をしても新たな価値は生まない。センサーデータの品質が高ければ高いほどクラウド上での分析や解析の処理負担が軽くなり、精度の高い結果が得られる。

 「センサーデータの品質が高ければ、お客様のシステムのスループットも上がり、バリューの高いシステム開発が可能になる」(馬渡氏)。センサーから良好な品質のデータを取り出すのは、アナログ分野における古典的な課題だが、同社は50年の歴史の中でノイズ、オフセット、ドリフトなどの低減に努めてきた実績がある。

 同社の売り上げは、A/DコンバーターおよびD/Aコンバーター類が46%、アンプ高周波製品が28%、MEMSセンサー絶縁デバイスが12%と、センシング技術を中心としたソリューションやサービスからなる。利用分野も広く、セーフティ、生体モニタリング、スマートグリッド、スマートビル、自動運転、都市インフラ、スマートファクトリー、農業などあらゆる産業に広がっている。なお同社では、「モノの計測」という意味で、IoTに「Instrumentation of Things」という言葉をあてがっている。

モニタリングのノウハウを生かす事例

 馬渡氏は続いていくつかのソリューションを紹介した。

 最初は、工場内のモーターの振動や稼働状況をモニタリングして、生産設備の高信頼化に取り組んだ事例である。従来のモーター制御だけでなく、センサー技術による機械振動の異常検知、温度センサーや衝撃センサー、データロギングの分析を通して、工場におけるモーターの稼働をモニタリングした。さらにネットワークを敷設することなく、センサーノードを簡単に設置できるように特定小電力通信(Wi-SUN)を採用した。本システムは実際に同社のウェハー工場に導入されていて、300台以上の設備からデータを収集・分析しているという。

 「ADSP-SC584/ADSP-SC587」は多軸サーボコントロールにも適したSoC 製品。独自のDSPアーキテクチャ(SHARC)によりサーボ制御を高速、かつリアルタイムに行い、またEthernetなどI/Oを制御するARMプロセッサコアなどをワンチップ化した。A/Dコンバーターも8チャネル内蔵しており、設備やモーターの状況をモニタリングできるほか、ファクトリーオートメーションで必須となる安全機能やセキュリティ機能を備える。デバイスは低消費電力で駆動する40nmプロセスで製造され、Ethernet部分を含めて2W以下で動作するという。

 「iSensor ADIS16480」は、10軸センサー(3軸加速度、3軸ジャイロ、3軸磁気、気圧)やDSPなどを47mm×44mm×14mmのサイズに統合したセンサーモジュールである(図2)。姿勢制御を必要とする多関節ロボットや高性能ドローンに最適だという。

図2 システム集積化技術を基に開発されたセンシングモジュール「iSensor」シリーズ。「iSensor ADIS16480」「iSensor ADIS16228」
[画像のクリックで拡大表示]

 同じくモジュール型の「iSensor ADIS16228」は3軸加速度センサーとDSPを内蔵しており、FFTエンジンを使って振動解析などを処理できる。機械の稼働状況モニタリングなどに提案したい考えだ。

優れたソリューションで設計を支援

 IoTアプリケーションの設計を支援するための「IoTプラットフォーム」は、加速度センサー、温度センサー、ローパワーマイコン、特定小電力トランシーバー(Wi-SUN)、エナジーハーベスト(環境発電)電源などを組み合わせたシステムで、設備やインフラのモニタリング・アプリケーションを短期間で開発するのを支援する。

 また、リファレンス・デザインも同社では充実させている。センシング回路、シグナルコンディショニング回路、コネクティビティ回路などのリファレンス・デザインの拡充を進めており、講演時点で230以上のデザインを公開しているという。

 馬渡氏は以上をまとめて「われわれが産業機器分野で蓄積してきた基盤技術は、信号処理も含めたセンサー技術、通信技術、低消費電力技術、およびシステム集積化技術の4つです。これらを組み合わせてインダストリー4.0に向けた優れたソリューションを提供できます」との考えを改めて示した。

お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社

    〒105-0022 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル10F

    TEL:03-5402-8200

    URL:http://www.analog.com/jp/