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先進のアナログ半導体で未来のニーズに即応

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来2019 特別対談

自動車産業の低成長時代に勝機を探る
先進のアナログ半導体で
未来の多様なニーズに即応

自動車産業がいわゆる「CASE(Connected、Autonomous、Shared/Services、Electric)」を原動力に大きく変貌を遂げようとしている今、車載半導体を手掛けるアナログ・デバイセズの畠山竜声氏に、自動車関連コンテンツの制作を専門とするオートインサイトで代表を務める鶴原吉郎氏を交えて、自動車産業の状況、技術課題、そして2020年以降の期待について話を聞いた。
(聞き手:日経BP 技術メディア局長補佐 大久保聡)

まず、自動車産業について伺います。2017年までは比較的好調でしたが、成長を牽引してきた中国に少し陰りが出てきたこともあって、これまで右肩上がりだったのが少しずつ変調を来してきたように感じます。

鶴原:世界の新車販売台数は、2018年が少しマイナスになったのですが、2019年は落ち込み幅がさらに大きくなり、9100万台ぐらいまで落ちそうだという予測が有力になっています。つい数年前までは2025年から2030年頃までに1億3000万台とか1億4000万台に達するという予測もありましたが、最近では、市場が再び成長軌道を回復しても、1億1000万台に届かないあたりで止まるのではないか、という見方が広まってきています。

 中国の成長力が鈍っている一方で、アメリカも今後は横ばいで推移すると考えられ、アジアや南米や中東欧といった成長市場も、世界の販売台数に占める比率が大きくないため、全体としては極めて緩やかな成長になりそうです。

畠山 竜声氏
アナログ・デバイセズ株式会社
オートモーティブ シニアディレクター

畠山:鶴原さんが言われたように、2019年に入って、自動車業界のいろいろなお客様から、出荷台数はもう増えないのではないだろうか、といった声が聞かれるようになってきました。新車販売台数が増えていくにつれて業績も上がっていくはずだったのが、別の価値を提案していかないと商機につながっていかないという感じです。

 もうひとつは、少し前まではEVや自動運転といった大きなキーワードに取り組んでおけば全体の台数減に対応できるという自動車業界全体の期待から、これまで描かれてきた究極のEVや自動運転の実現の前に、いくつかのステップを刻む流れと用途の多様化が明確になってきたのかなと。

 例えば「第46回東京モーターショー2019」で、本田技研工業が小容量バッテリを搭載した「ホンダe」を出したり、トヨタ自動車が2人乗りの「超小型EV」を出してきたのは、一挙に大容量バッテリを積んでガソリン車の大半の代替を狙うという従来の考え方ではなくて、まずは実用的なところから攻めていこうという判断があったのではないかと思います。

自動車の将来像が少し変容してきたと。

鶴原:変容というより、地に足が着いた開発にシフトしてきた感じだと思います。自動運転にしても、一般道すべてを対象にするのではなく、高速道路限定、あるいは地域限定で走らせるというように、きちんと現実を見ながら進めていこうという姿勢になってきたということですね。

そういった変化が部品メーカーやサプライヤーに影響を及ぼしているところはありますか。

畠山:今までだと、この新しい機能を実現するにはこの技術も必要、あの技術も必要、という感じで、新技術を徹底的に盛り込み、成立させようという機運があったかと思いますが、機能の成立性の裏には必ずコストの制約がありますから、技術が少しずつ絞られてきたという印象はありますね。例えば、自動運転やADASで、LiDARとミリ波レーダーとカメラのすべてを実装する必要があると言われていたのが、一部の組み合わせで実現できそうだという流れになってきたというのが一例かと思います。

プラットフォーム化が提唱されるEV

新車台数が頭打ちになってきた、EVや自動運転がより現実的なところに落とし込まれるようになってきた、というお話があった一方で、サービスという観点で見ると、所有から利用へのシフトも進んでいます。

鶴原 吉郎氏
オートインサイト株式会社 代表
日経BP総研未来ラボ 客員研究員

鶴原:中国ではライドシェア・サービスの「DiDi(滴滴出行)」の人気が高く、多くの人が自分では運転せずにDiDiのサービスを利用しています。若い消費者を中心に、クルマを所有することに対するこだわりが薄れてきていると感じます。中国に限らずアジア圏全体で、所有から利用に価値観が急速に変化してきているのです。

 しかもDiDiは、自動車メーカーにDiDi仕様のクルマを製造することを委託しようとしています。その生産台数は向こう10年で約1000万台という膨大なものです。今までは自動車メーカーがユーザーのペルソナを設定してクルマの仕様を決めていたのが、今後はライドシェア企業がクルマの仕様を決める時代になっていくのかもしれません。もし1000万台ものライドシェア企業仕様のクルマが市場に投入されれば、メーカーにもサプライヤーにも新たなビジネスチャンスが生まれることになります。

となると、これまではさまざまな種類のクルマが開発されてきたわけですが、将来はいくつかのプラットフォームに集約されていくのでしょうか。

鶴原:移動に対するニーズは、例えば都市圏と山村とでは違いますから、完全に集約されることはないでしょう。やはりローカライズは重要で、そこにビジネスチャンスがあると思っています。例えば、トヨタ自動車が第46回東京モーターショー2019に出展した「e-Palette」のような箱型のプラットフォームや、日野自動車が出展した“スケートボード”的なプラットフォームの上に、多様なアッパーボディを架装するような新しいビジネスが生まれる可能性があります。バッテリとモーターを積んだフレームに、架装会社が宅配便専用荷台とかレントゲン車を作り込むことによって、多様なクルマが製造されるようになるでしょう。

畠山:今まではメーカーが、使われるシーンを想定して製造したクルマを販売するという世界だったのが、使われるシーンからの仕様の要求ありきで、クルマの仕様がもっともっと多様化されていくんじゃないかと個人的には思い始めていて、鶴原さんが言われたようなプラットフォーム化が進むと、そういう展開もやりやすくなっていくんだろうと思います。

新たなプレーヤーの参入の余地も出てきますから、ビジネスとしても面白そうですね。そのアナロジーで、電子部品にもプラットフォーム的な発想はあるのでしょうか。

畠山:いわゆるリファレンス・デザインなんかはそうですね。さらに進んで、PoC(概念実証)の雛形を提供して、これをこのまま使えば機能が実現できますよ、といった取り組みは当社でも注力しています。新興国のメーカーに持っていくと、評価用のものを実車にそのまま搭載しようとしてしまって、逆に微調整をお願いすることもあるぐらいです。

鶴原:部品という観点で見ると、例えばバッテリとか、自動運転ソフトウエアとか、エアコン制御ソフトウエアとか、いろいろなレイヤーのプラットフォームがあるわけです。ECUにしても、今まではひとつの機能にひとつのECUを設けていたのが少数のドメイン・コントローラに集約されて、スマホのアプリみたいに機能をソフトウエアで乗せていく形に変化していく見通しです。その意味でも、プラットフォーム化や標準化はこれから進んでいくと思っています。

畠山:アナログ・デバイセズでは、プラットフォーム的な標準ソリューションの提供はもちろん、自動車メーカーやサプライヤーのニーズに応じた開発も進めていきます。標準化と多様化の両方に対応していこうという取り組みです。

電源効率の向上がEVの鍵のひとつに

技術的なところも伺います。これまでクルマの電装系は+12Vで設計されてきましたが、マイルド・ハイブリッドの登場を契機に+48Vを採用するクルマが増えてきました。どういった課題があると捉えていますか。

畠山:EVが全面的に普及すると2基の発電所に相当する電力が不足するとも言われていて、いかにバッテリの性能を引き出すか、またバッテリの電力を消費するクルマ全体の電源効率を高めるかがとても重要です。まずは、バッテリの性能を引き出す上で最重要と言えるBMSIC、これに加えてバッテリ・スタック全体の監視をいかに精度よく簡単に行えるか。一方、従来の+12V系、大型の補機を駆動するために一部の車種で追加された+48V系、バッテリ・スタックが出力する数百VものDC電圧、さらにモーター駆動に必要な数百Vもの三相交流電圧を効率良くマネージしていくかが、電源系の設計課題のひとつになっていくでしょう。

 また、複数の電圧系統をコンバータやインバータを介して接続した場合に、効率が高くないとやり取りだけでエネルギーが無駄になってしまいますので、より損失の少ない電源回路が求められてくることは確実です。バッテリの充放電も同様で、効率が良く、かつ精度の高い制御が求められています。

 そういった課題に対して、エネルギー効率の高いパワーマネージメント・ソリューションを長年にわたって提供してきた当社の取り組みは、自動車メーカーやサプライヤーのお客様から高くご評価いただいていると考えています。

鶴原:電源の話でいうと、EVのもうひとつの技術課題は発熱だと思います。モーター駆動に必要な高電圧を生成するIGBT素子を、現在は水冷している場合が多いのですが、パワー素子が低損失のSiC(炭化ケイ素)になり、さらにGaN(窒化ガリウム)になれば、発熱が減って空冷にできるかもしれない。そうなればシステムの小型・軽量化につながるので期待しています。

畠山:アナログ・デバイセズは多様なソリューションに最適な製品を開発しており、IGBTはもちろんSiC、GaNにおいてもそれぞれの特長を活かしたソリューション提案を行っています。鶴原さんが言われたシステムの小型・軽量化に貢献できると確信しています。

2020年の加速に期待

さて、来年2020年の期待をお聞かせください。

鶴原:2020年は、お台場や晴海などでもいろいろな実証実験が予定されています。自動運転EVの運行や、信号システムとの連動など、技術のショーケースが見られるわけで、非常に注目しています。もうひとつはEVの価格ですね。2025年ぐらいまでにバッテリのコストはかなり下がるだろうと言われていますので、そうなれば一気に普及するかもしれません。

 ともあれ、日本の自動車メーカーやサプライヤーにはこの時代の変化をぜひチャンスに変えてもらいたいと思っています。

畠山:私が注目しているのは、例えば、コンセプトカーが実際に走行しているのを見た人々が、メーカーが考えている使い方を超えて新たなビジネスモデルやサービスを思いつくかもしれない。そこは大きなポイントになると思っていますね。

 我々がアナログ半導体を開発するときは、ある標準的な使い方を想定するわけですけど、まったく想像すらしていなかった使い方をするお客様もいらっしゃって、じゃあ後継品はそちらの方向で進化させていこう、となることがあるんですね。ですから、これからアイデアがどんどん出てきて欲しいと願っていますし、そうした方々とお話ししながら当社製品を進化させていければICメーカー冥利に尽きると思います。

 それと、冒頭で新車販売台数の成長が鈍化しているという問題が指摘されましたが、電動化と電子化を両輪にクルマが進化していくことに変わりはないと思っています。車載ICのサプライヤーとして、お客様のニーズの多様化と変化に先んじて対応できるように、そしてお客様の勝機をバックアップできるように、これからも取り組んでいきます。

今日は、市場の状況から始まって、プラットフォーム化や電源系の話を伺い、最後には将来の期待についてお話しいただきました。これからのクルマの形、あるいはサービスの形は、自動車産業の未来を占う上でもとても重要かと思います。本日はありがとうございました。

「ニーズの多様化と変化に即応していきます」(畠山氏)
「2020年の実証実験にも注目しています」(鶴原氏)

※本稿は、特定の企業、車種、サービスなどに対して、アナログ・デバイセズの見解を示したものではありません。

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