日経 xTECH Special 日経 xTECH 日経 xTECH Special

24GHzレーダーの応用を加速する

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来2019 第5回

除雪グレーダの後方安全確認に導入が進む
24GHzレーダーの応用を加速する
プラットフォームを協業で開発

アナログ・デバイセズのアソシエイトパートナーであるサクラテックは、アナログ・デバイセズの24GHzレーダー・チップセットを採用したレーダー・プラットフォーム「miRadar™ 8」を開発した。送信2チャネル+受信4チャネルのMIMO(multiple-input and multiple-output)構成で、複数の対象物を精度高く検知できるのが特長である。車両の周囲監視やバイタルセンサーなどへの応用を見込む。

(写真左から)サクラテック株式会社 代表取締役 博士(工学) 酒井 文則 氏/アナログ・デバイセズ株式会社 オートモーティブ セグメント ソリューション グループ フィールド アプリケーション エンジニア 日野原 成輝 氏
(写真左から)サクラテック株式会社 代表取締役 博士(工学) 酒井 文則 氏/アナログ・デバイセズ株式会社 オートモーティブ セグメント ソリューション グループ フィールド アプリケーション エンジニア 日野原 成輝 氏

 真冬の北国で活躍する除雪グレーダ。車体下のブレードで雪を道路脇に押しのける特殊車両で、現在主流となっている1人乗りの除雪グレーダの場合、運転手は前方や後方の安全を確認しながら、ブレードの操作を行わなければならない。

 そうした負担を少しでも軽減しようと、後方の安全確認を補完する目的で搭載が進んでいるのが、横浜市に本社を置くサクラテックがアナログ・デバイセズとの協業で開発した24GHzのレーダー・モジュール「miRadar™ 8」である(図x)。

図x. サクラテックがアナログ・デバイセズと共同で開発した24GHzレーダー・モジュール「miRadar™ 8」(左)と、アナログ・デバイセズのチップセットの構成(右)
図x. サクラテックがアナログ・デバイセズと共同で開発した24GHzレーダー・モジュール「miRadar™ 8」(左)と、アナログ・デバイセズのチップセットの構成(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 送信2チャネル+受信4チャネルのMIMO(multiple-inputand multiple-output)構成となっていること、および、24GHzレーダーは耐環境性に優れているため、降雪時でも複数の接近車両や追い越し車両を精度高く検知できるのが特長だ。

国内向け24GHzプラットフォームを協業開発

 ADASの登場を契機に、上述のレーダーをはじめとするセンシングテクノロジーが急速な進化を遂げつつある。レーダー、LiDAR、ToFセンサー、超音波センサー、赤外線センサー、ステレオカメラなどが代表的な方式といえるだろう。

 こうしたテクノロジーのうち、主にレーダーを手掛けるのが、miRadar™ 8を開発したサクラテックである。「マイクロ波やミリ波を活用した電波イメージングに可能性を感じ、2008年に創業しました」と、同社 代表取締役の酒井文則氏は説明する。

 miRadar™ 8の開発がスタートしたのは2015年。MIMO対応の24GHzレーダー・チップセットを提供していたアナログ・デバイセズに、酒井氏が協業を提案したのがきっかけだった。

 「当社でも24GHzレーダーICの評価ボードは揃えていましたが、技適を取得していないという制約がありました。日本国内で24GHzレーダー・ソリューションを速やかに展開していきたいと考えていましたので、プラットフォームの開発をサクラテックと共同で進めていくことになったのです」と、アナログ・デバイセズの日野原成輝氏は経緯を説明する。

アナログ・デバイセズの高性能チップセットを採用

 miRadar™ 8は、送信2チャネル+受信4チャネルのMIMOアンテナ込みで、モジュールサイズは104mm(W)×76mm(H)×6mm(D)だ。もちろん技適(ARIB-STD-T73)を取得済みである。±45°の範囲を検知可能で、仕様としては60m以上の距離に対応する。

 レーダーの制御にはアナログ・デバイセズのチップセットを採用した。「開発を始めた2015年当時、MIMOレーダーを実現できるチップセットはアナログ・デバイセズぐらいしかありませんでした。もちろん、レーダーとしての性能にも優れていたため、採用を決めました」と酒井氏は説明する。

 出力性能に優れる2チャネル・トランスミッタ「ADF5901」、NF特性に優れる4チャネル・レシーバ「ADF5904」、タイミング精度の高いA/Dコンバータ「ADAR7251」、および、位相ノイズ性能とジッター性能に優れる周波数シンセサイザ「ADF4159」の4チップで構成されている(図x)。

 レーダーの性能を左右するMIMOアンテナとファームウエアはサクラテックが開発した。「すべて自社で開発していますので、お客様のニーズや問い合わせにも速やかに対応できますし、さまざまなアプリケーションへの展開も可能です」と酒井氏は強みを訴求する。

バイタルセンサーや見守りサービスへの応用にも期待

 miRadar™ 8はファームウエア次第でさまざまな使い方が可能だ。そのひとつがバイタルセンサーである。体表のわずかな振動(0.1~0.5mm)をレーダーで検知し、ソフトウエアによるフィルタリング処理を行って脈拍や呼吸数を求める仕組みだ。

 複数の対象物を補足できるMIMOならではの性質を使い、最大4人の同時センシングを実現。また、対象の人物が移動しても自動的に追従する。

 車室内に適用した場合(図y)、運転手と同乗者のヘルスチェックが同時に行える。しかも24GHzのマイクロ波(準ミリ波)は衣服を通過するため、毛布などに隠れた乳児やペットの検知も可能だ。米国および欧州で義務化が審議されている後部座席の置き去り警告システムにも適用できるだろう。

図y. バイタルセンサーとしてのmiRadar™ 8を自動車に搭載し、運転手と同乗者の延べ3人の心拍数(H)と呼吸数(R)を非接触で計測した例
図y. バイタルセンサーとしてのmiRadar™ 8を自動車に搭載し、運転手と同乗者の延べ3人の心拍数(H)と呼吸数(R)を非接触で計測した例
[画像のクリックで拡大表示]

 また、介護施設などにおける見守りや、防犯(生体検知)にも提案していきたい考えだ。

 雨や霧にも強いmiRadar™ 8は、屋外構造物や傾斜面の遠隔監視にも使える。劣化の傾向や斜面崩落の予兆を把握できる可能性がある。

 さまざまな応用に展開してもらえるように、サクラテックでは、カメラ映像とレーダー画像の同時記録やレーダーのRAWデータの再生機能などを備えた、高機能な評価ソフトウエアを提供している。

高性能なレーダー・チップセットを拡充

 レーダーの応用拡大を受けて、アナログ・デバイセズではICソリューションの強化を進めていく計画だ。その一環として、前述の周波数シンセサイザ「ADF4159」と2チャネル・トランスミッタ「ADF5901」をワンチップに統合した「ADF5902」を2019年1月にリリース済みである。「レーダー・チップセットについては、これからも拡充を続けていきます」と日野原氏は説明する。

 合わせて、サクラテックのmiRadar™ 8を活用しながら、システム性能をアピールしていきたい考えだ。「サクラテックがmiRadar™ 8を開発してくれたおかげで、チップセットだけではなく、プラットフォームとしてご紹介できるようになりました。24GHzの特長を生かしたアプリケーションをサクラテッ クとともにご提案していきます」(日野原氏)。

 高性能なレーダー・チップセットから新しい応用が生まれることが期待される。

お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    (本社)
    〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1
    ニューピア竹芝サウスタワー10F
    (大阪営業所)
    〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36
    新大阪トラストタワー10F
    (名古屋営業所)
    〒451-6038 愛知県名古屋市西区牛島町6-1
    名古屋ルーセントタワー38F

    URL:https://www.analog.com/jp/