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PLMの価値は拡張性にあり

カイザースラウテルン工科大学

Aras Innovatorを使ったMBSEの利点
PLMの価値は拡張性にあり

PLM/PDM研究の第一人者、ドイツのカイザースラウテルン工科大学のマーチン・アイグナー教授が登壇。複雑化する製品とサービスのライフサイクルにおけるモデルベース・システムエンジニアリング(MBSE:Model Base System Engineering)の重要性について講演した。その中で、同氏はMBSEの導入において「Aras Innovator」がもたらすメリットについて語った。

独カイザースラウテルン工科大学
マーチン・アイグナー 教授

 現在、カイザースラウテルン工科大学バーチャルプロダクトエンジニアリング研究所(VPE)の所長を務めるアイグナー教授は、PLMおよびモデルベース・システムエンジニアリング(MBSE)研究の第一人者で、PLM/PDM黎明期のリーダー的企業であったEIGNER + PARTNERを1985年に設立した経歴を持つ。現在、Arasには、EIGNER + PARTNER時代の同僚が複数所属し、PLM製品の開発に携わっている。

インダストリアル・インターネットの時代へ

 講演の冒頭で、アイグナー教授は「私は今回、Aras CorporationのCEOのピーター・シュローラ氏が述べられた『PLMを再考する』というだけでなく、エンジニアリングプロセスを完全に考え直すべきだということをお伝えしたい」と語り、まず、「インダストリアル・インターネット」について言及した。これは、製造分野においては「インダストリー4.0」と呼ばれるもので、インターネットの新たな使い方を示している。

 同氏は、「インダストリアル・インターネットとは、端的に言えば、バーチャルとリアルをつなげることだ。この登場により、サービス志向のビジネスモデルを定義することが可能となった」と述べた。そして、「その方向性は2つある」とし、まず、製造現場における生産性の向上、次に、自動車同士や家電同士が通信することで新たなサービスが提供されるなど、消費材におけるIoT(Internet of Things)を挙げた。

 また、今では多くのメカトロニクス同士がインターネットを介してつながっているため、メカトロニクス(機械工学)はもはや「サイバートロニックシステム(仮想工学システム)」であり、そのため、エンジニアリングはPLMを考え直す時期に直面していると訴えた。

 そして、インダストリアル・インターネットの具体例として、センサーを使って機械のコンディションを常にモニタリングし、故障時期を予測するベアリングシステムや、米グーグルが2014年に発表した、マイクロチップや通信機能を搭載し、涙から血糖値を測定してそのデータを送信できるコンタクトレンズ、クラウド経由で、使用状況に関するデータが送信される冷蔵庫などを紹介した。

 その上で、アイグナー教授は「モニタリングされ、蓄積されたデータは選択され、可視化され、レポート化される。また、コネクションは1対1の関係ではなく、複数の製品同士が互いにコミュニケーションし合うことで、サービスの向上が図られていく。製品、そして、サービスに関するあらゆる情報は、PLMのシステムの中に格納され、管理される。これが、インダストリアル・インターネットの世界だ。ゆえにPLMの果たす役割はますます重要になっていく」と語った。

「Aras Innovator」でMBSEを統合管理

 次に、アイグナー教授は、システムエンジニアリングにおけるMBSEについて言及し、研究事例を紹介した。

 「まず、PLMとMBSEを密接に連携させることにした。そして、PLMとエンジニアリングプロセスを合体した。その結果、メカトロニクス、エレクトロニクス、ソフトウエア、サービスといった『領域』『プロダクトライフサイクル』『サプライチェーン』という3つの軸ができた(図)。これらは今まで結びついていなかったが、今後の課題はこれらをすべて統合していくことだ」と語った。

●インダストリアル・インターネットは、『領域』『プロダクトライフサイクル』『サプライチェーン』という3つの軸で統合される
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 例えば、複数の部門やシステムをまたがる場合、サプライチェーンにおいては、異なる要素が存在する。そのため、インダストリアル・インターネットを実現する上では、PLMの活用と適切な管理が鍵となる。とはいえ、企業において、複数部門やシステムをまたがるエンジニアリングの変更管理はほとんど実現していない。今後は、設計の早い段階からオーサリングシステムを導入し、PLMを使って管理していくことが重要であるとアイグナー教授は主張する。

 さらに、統合の仕方やカスタマイズの方法についても、具体例を挙げて紹介した。同氏が所属しているカイザースラウテルン工科大学では現在、Aras Innovator 上でMBSE設計をサポートするシステムを構築し利用している。さらに同氏は「多くの企業がマイクロソフトが提供するSharePointを使っているが、我々は『Aras Innovator』とSharePointを統合させた」と説明。そして、「Aras Innovator」の利点として、カスタマイズが容易で拡張性が高く、使いやすいことを挙げた。

 最後に、「PLMの将来的な価値は拡張性にある。私の最終目標は、PLMをベースにMBSEをすべて統合管理することだ。MBSEは非常に複雑なシステムではあるが、皆さんには、拡張性が高く、開発が容易な『Aras Innovator』を使って、是非実現させてほしい」と語り、講演を終えた。