エナジーハーベスティング(環境発電)用の電源ICで業界をリードする米Cypress Semiconductor社は2016年6月、直径25mmの小型センサービーコンデザイン用のキットを発表した。15mm角の小型ソーラーパネルで得た電力で、Bluetooth Low Energy(BLE)のモジュールや温湿度センサーなどを駆動する。電池レスのセンサーネットワークやIoTアプリケーションの開発・評価を促進する。
IoT(Internet of Things)に代表されるセンサーネットワークの課題のひとつとして指摘されるのが、センサーノードへの電源供給方法である。
商用電源(AC100V)を供給する方法が最も単純だが、センサーノードを設置する自由度に欠ける。一方、ボタン型電池などで駆動する方法もあるが、数カ月から数年周期で電池の交換が必要になる。
そうした課題を解決する手段として注目されている技術が「エナジーハーベスティング」だ。
「日本語で『環境発電』という言葉が当てられているとおり、光、風、温度、振動など、自然界の環境に存在するエネルギーを電気エネルギーとして取り出して利用しようというアイデアです。一般には、扱いやすさから光を利用する場合がほとんどです」と、米Cypress Semiconductorの日本法人の関根景太 氏は説明する。
サイプレスは、エナジーハーベスティングを利用して環境光のみで動作する「CYALKIT-E02 Solar-Powered BLE Sensor Beacon Reference Design Kit」を2016年6月21日に発表した。IoTアプリケーションの開発や評価を促すのが狙いだ。
キットには、センサーノードに相当する「Solar BLE Sensor」と開発およびデバッグ用の「BLE-USB Bridge and Debug Board」をセットにした「CYALKIT-E02」(49ドル)と、Solar BLE Sensor×5個をパッケージした「CYALKIT-03」(99ドル)の2種類があり、サイプレス ストア(http://japan.cypress.com/CYALKIT-E02、http://japan.cypress.com/CYALKIT-E03)などで販売される(図1)。
キットの中心的存在である「Solar BLE Sensor」は、直径25mm×高さ5.5mmのプラスチックケースの中に基板を収めたセンサーノードである(図2)。基板には、サイプレスのエナジーハーベスティング用電源IC「S6AE103A」および Bluetooth Low Energy(BLE)モジュール「EZ-BLE PRoC モジュール(CYBLE-022001-00)」に加え、15mm角のソーラーセル、温湿度センサー、スーパーキャパシタ、セラミックコンデンサなどを搭載している(図2)。
「100ルクスの明るささえあれば屋内光でも、温湿度情報をBLEパケットに乗せて送信することが可能です。マスターとなるスマートフォンやパソコンとの間でペアリングを行うことなく、すぐに無線センサーシステムを構築することができます」と同社の府川栄治氏は手軽さを強調する。
BLE-USB Bridge and Debug Board(図3)はWindowsパソコン用のBLE受信機として機能するほか、小型コネクタを介して、BLEモジュール内のPRoC BLEマイコン(ARM Cortex-M0プロセッサベース)のプログラミングなどが可能だ。
「ARMプロセッサに対応した開発環境はARMエコシステムとして広く流通していますし、Cypressマイコンの開発ツールである『PSoC Creator』は当社から無償で提供しています。例えば、BLEの送信間隔やIDなどの簡単な変更を含めて、お客様のニーズに即した開発やデバッグが可能です」(府川氏)。
また、iOS、Android、およびMicrosoft Windowsを対象に、専用アプリケーション「Cypress BLE-Beacon」が提供される(図4、図5)。以上のほか、ユーザーが商用IoTシステムの開発を効率的に進められるように、サイプレスではSolar BLE Sensorのリファレンス回路図や、基板設計データ、サンプルファームウェア、搭載部品リストなども提供している。
今回紹介したSolar BLE Sensorに搭載されている「S6AE103A」は同社の第二世代ともいえるソリューションだ。産業用途にも応える高機能版のS6AE103Aのほかに、ファミリとして、ビルや商業施設などのセンサーノードに適した「S6AE102A」と、住宅のセンサーノードやウェアラブルデバイスに適した「S6AE101A」がラインアップされる(図6)。
S6AE10xAシリーズの電源回路は複数の内蔵スイッチを用いたリニア方式で、動作時の消費電流は280nA(S6AE101Aは250nA)、起動電力は1.2μWと、業界トップクラスを誇る。スーパーキャパシタなどへの蓄電制御回路のほか、外部回路への電力供給を完全に遮断してリーク電流を削減するパワーゲーティングスイッチを2系統(S6AE101Aは1系統)内蔵するなど、最小限の外付け部品で構成できるように工夫されている。
なお、S6AE10xAシリーズの詳細については、「サイプレスのエナジーハーベスティング技術、1cm角のソーラーセルで無線センサー端末を駆動」で紹介されている。
ちなみに同社は2016年4月に米Broadcom社のワイヤレスIoT部門の買収を発表し、既存のエナジーハーベスティング用電源ICやローパワーのPRoC BLEマイコンに加え、Broadcomが持つ様々なコネクティビティIPを活用しながら、ワイヤレスでのIoT事業を強化していく計画を明らかにしている。
「IoTのセンサーノードの課題のひとつである電源供給に関して、電池レスを実現し、なおかつワイヤレスコネクティビティに優れているのは業界でもサイプレスだけと考えています」と関根氏は同社の強みを訴求する。
IoTやセンサーネットワークをベースにした様々なアイデアやビジネスモデルを具現化するにあたって、サイプレスのデザインキットの取り組みが力強い存在になりそうだ。
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