日経 xTECH Special 日経 xTECH 日経 xTECH Special

アナログ半導体でクルマの進化に応える

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来2018 特別対談

電子化・電動化を加速するカーエレクトロニクスの未来
先進のアナログ半導体でクルマの進化に応える

クルマで起きているさまざまな変革の原動力となっているのがカーエレクトロニクスだ。車載半導体の進化により電子化および電動化が加速され、これまでの運転や移動の概念を覆すような未来が実現されようとしている。アナログ半導体を提供するアナログ・デバイセズでオートモーティブビジネスを担当する須藤徹氏に、日経BP社 技術メディア局長補佐である大久保聡がカーエレクトロニクスの現在と未来の一端を聞いた。

大久保:日経BPというメディア側の人間として、アナログ・デバイセズと旧リニアテクノロジーの両社には取材を通じてさまざまなお話を伺ってきた経緯もあって、今日も須藤さんのお話が聞けるのを楽しみにしてきました。さっそくですが、まずは半導体のサプライヤーとして2018年の自動車業界を振り返っていただけますか。

須藤 徹 氏
アナログ・デバイセズ株式会社
オートモーティブ セグメント

須藤:こちらこそありがとうございます。さて、2018年を振り返ると、当社のグローバルなビジネスとしてはオートモーティブの売上高は堅調な伸びではあったのですが、中身はだいぶ様変わりしてきたように感じています。十数年前から量産されているシステムの売上自体は堅調です。加えて急激な伸びを示したのが、安全に関わる製品や電動化に携わるシステムの売上です。その背景としては、高性能アナログの要求が増え、我々の売上構成にも変化が見られた年でした。

大久保:電動化に対する需要の伸びというと、エンジンからEV(電気自動車)へのシフトもそのひとつかと思いますが、クルマの電動化が進むと究極的にはモーターとバッテリさえあれば誰でも作れるといった見方もありました。

須藤:私もそのように考えたこともありますが、どうもそうではないなと。単純にアクセルペダルにモーターを直結したような制御をすると、加速が急すぎて乗っている人は酔ってしまうわけです。やはりエンジン車に似た特性の加速感を生み出す必要があることが分かり、そこは自動車を作ってきた日本メーカーやドイツメーカーは技術的にきちんとやってきているなという印象です。それと、クルマは基本的には人命を預かる存在なので、信頼性や安全性をないがしろにはできないわけですね。また、モーターは発電機にもなり、いわゆる回生によって減速時に電気エネルギーを得られるので、回収技術も重要になってきます。そう考えると、ハイブリッド車を長年にわたり開発してきている日本の自動車メーカーは、新しい変革の中でもいいポジションにいると感じます。

大久保:EVは単なるラジコンではなく、自動車として仕上げるにはいろいろな課題があることに多くの人が気づき始めてきたというわけですね。同じような観点で自動運転技術についてはいかがですか。センシングやAIがどんどん搭載されて、いまやクルマは電子部品の塊になりそうな勢いですが。

須藤:自動運転も、EVの加速と同じように、細かな振る舞いの差が問題になる可能性があると思っています。例えば他人が運転するクルマで、ブレーキのタイミングが自分の感覚と大きく違っているとなんとなく怖いと感じてしまう経験があると思いますが、では自動運転車のブレーキの感覚が大きく違っていたときに自分の身を委ねられるのかという問題になるわけですよね。あるいは、目の前の信号が黄色に変わったときに、そのまま進むのか、それとも止まるのか、といったAI側の判断を人間が許容できる範囲にどうチューニングしていくか、というのはひとつの課題としてあるかと思います。

デジタルを生かすアナログ技術

大久保 聡
日経BP社
技術メディア局長補佐

大久保:人間の感覚に近づけるところは制御アルゴリズムなどのチューニングでデジタル的に実現していくことになるのでしょうけど、一方でアナログ技術が果たす役割はどう変化していくと考えていますか? 今後クルマに搭載されるセンサーが増えてAIプロセッサも高性能化されていけば、ノイズや消費電力といった問題がより大きな影響を及ぼしそうにも思います。

須藤:おっしゃるとおりです。センシングのところで自然界のアナログ量をデジタルに変換しようというときに、仮にアナログの性能が悪ければ、何度もサンプリングして平均を取らなければいけなくなってしまうかもしれません。データを一時的に蓄えておくメモリが必要になりますし、ECUマイコンの仕事も増えてしまいます。一方で、アナログからデジタルへの変換が正確に一回でぴしっと収まるのなら、そういったオーバーヘッドが不要になって後段の処理はとても楽になります。

 また、AIプロセッサの電源電圧はプロセスノードの微細化に伴って1Vとか0.9Vといったレベルにまで下がってきています。そうすると、仮に電圧の許容誤差が±5%としても、絶対値でみるとわずかな電圧誤差しか許されないことになりますから、きわめて精度が高く、かつ、AIプロセッサの負荷変動に対応した応答性も求められます。発熱も問題で、バックミラーのところにカメラモジュールを組み込んだとして、直射日光が当たりますから回路自体の発熱はできるだけ抑えたいわけです。そうするとエネルギー変換効率が高く、損失による発熱の小さい優れた電源回路が必要になる。ですから自動運転の時代になるにつれて、デジタルの性能を発揮させるためにも、アナログの重要性はますます高まっていくと考えています。

顧客が抱える課題の解決に取り組む

大久保:そのあたり、自動車メーカーやサプライヤー(Tier1)はアナログ技術をどの程度重要と捉えているのでしょうか。

須藤:お客様によってさまざまですね。アナログの精度や性能はまだそこまでは要らない、というお客様もいらっしゃれば、部分的にそろそろ厳しくなってきた、というお客様もいらっしゃいます。アナログ・デバイセズの直接のお客様はTier1各社ですが、お客様のそのまたお客様である自動車メーカーの皆さんがどういったニーズや課題を持っているかを理解するために、直接お話を伺うような活動を10年以上にわたって続けています。

 例えば、MLCC(積層セラミックコンデンサ)の供給が追いつかずに市場でショートしている問題がメディアでも大きく取り上げられていますが、性能に優れた当社のDC/DCコンバータならスイッチング周波数を高く設定できるため出力コンデンサ容量を減らせ、しかも「Silent Switcher®」という独自のアーキテクチャによってEMIも抑えており、バイパスコンデンサの個数も減らせます(第4回参照)。

 また、オーディオ信号の配線を軽量化できるA2B®(Automotive AudioBus)(第2回参照)や、既存のハーネスのままでHD 映像を伝送できるC2B™(Car Camera Bus)(第5回参照)を使うと、オーディオや映像のさまざまな機能をより手軽に高性能化できますよ、といった提案もその一環です。

大久保:ハーネスの話題が出ましたけど、私が記者を務めていた頃にクルマのハーネスの複雑化や重量増が問題になったことがあって、将来は光ファイバーや無線に置き換わるのではないか、といった議論も出たように記憶しているんですが、今挙がったA2BやC2Bは技術としてすごくスマートですよね。

須藤:これらは自動車メーカーのニーズを元に開発したソリューションなんです。車内にスピーカーを20個ほど付けたいんだけども、オーディオケーブルを20本も這わせるとハーネスがすごく太く重くなってしまうので困っている、といった声を伺いまして、だったらアナログ・デバイセズの技術で解決しますよ、というところから始まったのがA2Bです。音声認識システムや、後部座席の同乗者との会話を助けるインカー・コミュニケーションシステムが提案されていますが、A2Bはマイクロフォンの接続に適しています。

 C2Bも同様のコンセプトで開発しました。リアビュー・モニターやバーズアイ・モニターで映像系のコストを抑えようとするとアナログカメラをNTSCで接続するしかないのですが、そうすると映像がSD画質になり、精細度が上がっているカーナビの画面に映したときにすごく粗く見えてしまうんです。カメラとの接続を光ファイバーにしてHD化する方法もありますが、今度はコストの問題が出てきてしまいます。そこで、C2Bを使えばNTSC用のハーネスのままでHD画質の信号を送れますよとご提案したら、各社からすごく関心をいただき、2019年から2020年にかけて搭載されることがすでに決まっています。高級車とは違ってコストを潤沢にかけられないミドルグレードやベーシックグレードも狙っていこうというのがA2BやC2Bのコンセプトです。

 これらは一例ですが、アナログ技術を活用してお客様や社会が抱える難題を解決するのが当社の基本的なアプローチで、お客様には、課題やニーズをとにかくぶつけてみてくださいといつ もお話ししています。

リニアとの統合でシナジーを発揮

大久保:話を変えて、アナログ・デバイセズは2017年3月にリニアテクノロジーと経営統合を果たしたわけですが、アナログ分野でそれぞれ強かった両社が一緒になってみていかがですか。

須藤:統合から2年近くがたちましたが、相乗効果はかなり出ていると思っています。アナログ・デバイセズは、MEMSセンサー、アナログ/デジタル・コンバータ、オペアンプなどの分野が強かった一方で、電源ソリューションはあまり持っていなかったんです。それに対して旧リニアテクノロジーは電源に強みを持っていました。統合したことで電源とシグナルチェーンの両方をシステムレベルで考えられるようになったのは大きいと思いますね。

 例えば、EVやハイブリッド車のメインバッテリが出力する数百Vの電圧を、三相インバータの制御回路が必要とする低電圧に変換する耐圧560Vの絶縁型DC/DCコンバータ(第1回参照)であったり、48Vマイルドハイブリッド車で12V系と48V系とをつなぐ双方向のDC/DCコンバータ(第3回参照)であったり、あるいは先ほども挙げたMLCCの個数を減らせる高性能かつ低ノイズの「Silent Switcher」製品などをソリューションとしてご提案できるわけです。今後は両方が持つテクノロジーをひとつに融合させた製品を作っていくことになると思います。

大久保:センサーやA/DコンバータからDC/DCコンバータまで製品ポートフォリオが広がると、顧客であるTier1のシステムのブロック図を描いたときにかなりの部分をアナログ・デバイセズが占めることになっているのではないかと思うのですが、これからさらに力を入れていきたい領域はありますか。

須藤:さまざまな取り組みを進めていますけども、ひとつ考えているのはADASや自動運転に必要となるレーダーですね。周波数が極めて高いこともあって、電源を含めたトータルソリューションとして構築しなければなりませんが、それほど遠くないうちに業界のゲームチェンジができるような優れたテクノロジーをお見せできると考えています。ぜひ期待していてください。

新しいクルマのトレンドを発信

大久保:それは楽しみですね。さて、将来の話が出た流れで2019年を展望していただきたいのですが、2020年の一年前ということで、各社の開発や実証実験などもさらに活発になると見込まれます。そのような中で車載半導体のサプライヤーとしてはどういったあたりに期待していますか。

須藤:2020年に自動運転が形になって、便利さだけではなく人為的なミスによる死傷事故を減らせるという理解が広がっていけば、一般のクルマにもそういった機能を載せて欲しいという声が社会から挙がってくるのは確実と思っています。2020年を元年としたとき、2024~2025年といった時期に自動運転および運転補助機能が搭載される車種が増加すると考えると、2019年は自動車メーカーやサプライヤーにとってはいわば仕込みの年になるわけで、われわれにとっても大事な一年になるのではないかと考えています。

 私自身、日本は特別な国と思っていて、とくに東京は道路が張り巡らされていて、路地もあれば高速道路もあり、渋滞も頻繁に発生し、歩行者も多く、一方で光ファイバーがほぼ全域に敷設されていますし、5Gを推進しているキャリアもいますから、いろいろな条件下で評価を行ったり、車々間通信や路々間通信などの実験もできるすばらしい環境にあるわけです。そのため世界中の自動車メーカーやサプライヤーからもすごく注目されています。

 アナログ・デバイセズは外資の会社ですけど、ひとりの日本人として、新しいクルマのトレンドやテクノロジーをそんな日本から発信するお手伝いができたら嬉しく思います。

大久保:そこはぜひやっていただきたいと思いますね。クルマや、クルマを取り巻く社会環境が大きく変わりつつある今、半導体の位置づけもますます重要になることは確実なので、統合のシナジーを生かしたアナログ・デバイセズの今後の取り組みに大いに期待しています。今日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

「アナログ技術を活用してお客様の難題やニーズを解決します」(須藤氏)。「統合のシナジーを生かした今後の取り組みに期待しています」(大久保)
お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    (本社)
    〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1
    ニューピア竹芝サウスタワー10F
    (大阪営業所)
    〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36
    新大阪トラストタワー10F
    (名古屋営業所)
    〒451-6038 愛知県名古屋市西区牛島町6-1
    名古屋ルーセントタワー38F

    URL:https://www.analog.com/jp/