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PHEVやEVのインバータを小型化する絶縁型電源IC

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来2018 Vol.1

入力560Vの絶縁型DC/DCコンバータを開発
PHEVやEVのインバータを
小型化する絶縁型電源IC

車載用電源ICなどを得意とするアナログ・デバイセズは、プラグインハイブリッド車や電気自動車のインバータ制御回路への電源供給に最適な、入力560Vの絶縁型DC/DCコンバータを開発した。バッテリが出力する数百Vの高電圧を12Vなどの低電圧へ直接変換できるほか、フォトカプラが不要など、小型化や高信頼性化が図れるのが特長だ。

クルマの電動化が進んでいます。

石井 純氏
アナログ・デバイセズ株式会社
パワーシステムズ
ジャパン マーケット マネージャー

石井:地球温暖化ガスの一種であるCO2の排出削減や、PM2.5を含む大気汚染の抑制などを目的に、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV/PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などの、いわゆる環境対応車あるいは次世代自動車の普及が世界各国で進んでいます。

 日本においては、2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」の中で、新車販売に占める次世代自動車の割合を2030年までに5割から7割に高めていくとの政府方針が発表されていますし、欧州や中国では電気自動車へのシフトが政策として推進されています。


そうした次世代自動車にはどのような課題がありますか。

石井:バッテリのエネルギー密度の向上や駆動モーターの高出力化などさまざまな技術課題がありますが、回路として見たときに挙げられるのが高電圧系の扱いです。

 例えば、あるプラグインハイブリッド車のメインバッテリはセル電圧3.7Vのリチウムイオン・セルを95個直列に接続して構成されており、総電圧はおよそ350V(直流)に達します。また、高出力なモーターを駆動する電圧はバッテリの出力電圧をインバータ回路を用いて昇圧して作りますが、車種によって異なるものの、おおむね500Vから650V(交流)の範囲です。

 乗員の安全を確保するとともに、低圧系の回路を保護するには、高圧側と低圧側とを適切に絶縁(アイソレーション)する必要があります。ただ絶縁にはトランスやフォトカプラなどの部品が一般的に必要で、回路構成も複雑になるため、コンパクトかつ効率的に構成できる方法が求められていました。

入力560Vの絶縁型コンバータ

アナログ・デバイセズのソリューションを紹介してください。

石井:アナログ半導体を手掛ける当社は、長年にわたって、ECUの電源に最適な電源ICを中心とする車載半導体を自動車メーカーやサプライヤーの皆様に供給してきた実績を誇ります。

 今回、当社が着目したのが、インバータの制御回路に低電圧を供給するための絶縁型DC/DC コンバータです。

 三相のインバータ電圧の制御には一般にマイコンやDSP(デジタルシグナルプロセッサ)などのデジタル回路が必要で、これらの回路を駆動する低電圧はインバータの一次側であるバッテリの出力電圧から生成してやらなければなりません。しかし前述のように、バッテリの総電圧は300V 前後と高く、従来は単体部品などを組み合わせて絶縁型DC/DCコンバータを構成するしかありませんでした。

 新たに開発した「LT8315」(図1参照)は、最高560Vの入力電圧に対応した絶縁型DC/DCコンバータで、12Vなどの低電圧を直接生成できるのが特長です。これまで100Vクラスの絶縁型電源ICは当社でもラインアップしていましたが、新たな高耐圧プロセスの開発によって、次世代自動車にも対応できる560Vもの耐圧を実現しました。

 単体部品で構成する従来の方法に比べて、部品点数や回路面積の削減が図れます。

技術的な特長を挙げてください。

石井:「LT8315」は入力電圧範囲が18Vから560Vと広く、メインバッテリが出力する高電圧を12Vなどの低電圧に直接変換できるのが特長のひとつです。また、耐圧630V、出力300mAのMOSFETスイッチを内蔵していますので、絶縁トランスのほかいくつかの受動部品を外付けするだけで回路を構成することができます。さらに、入出力の電圧差が大きい場合は一般的に変換効率は低下しますが、「LT8315」では高い効率を維持しています。

1000Vクラスの製品も開発中

今後の展開を教えてください。

石井:次世代自動車のインバータ向けにご紹介していくほか、通信機器、産業機器、医療機器など、絶縁電源を必要とするさまざまなアプリケーションに展開していきたいと考えています。また今回は入力電圧として最高560Vを実現しましたが、動作マージンの確保を含めたさらなる高耐圧化のニーズに応えるために、1000Vクラスの絶縁型DC/DCコンバータの開発も進めています。

 アナログ・デバイセズは、お客様のニーズや課題に応えるソリューションの開発と提供にこれからも努めながら、次世代自動車を中心とした新たな潮流に取り組んでいきます。

バッテリ出力をモーター駆動電圧に変換するインバータ制御部に最適

 「LT8315」は、耐圧630V、出力300mAのMOSFETスイッチを内蔵した、高耐圧のフライバック・コンバータだ。入力電圧範囲は18Vから最高560Vと広く、出力電圧が300V前後のメインバッテリを十分なマージンを伴って直接接続することができる。一般的な絶縁型コンバータで必要になるフォトカプラや三次巻線トランスが不要なほか、トランスの二次側に流れる電流がゼロになるタイミングを検出して次のスイッチング・サイクルを開始するアナログ・デバイセズ独自の「バウンダリー・モード」を搭載。ダイオードに逆電流がほとんど流れないため、ノイズおよび損失の発生が少なく、トランスも小型化できる。

 アプリケーションとしては主にインバータを想定する(図1参照)。一次系において絶縁を維持しながら制御回路に必要な低電圧を直接生成できるのが特長だ。なおアナログ・デバイセズでは、電流センシングなどに必要な絶縁アンプのほか、IGBTなどのパワーデバイスを駆動する絶縁ゲートドライバも取り揃えている。

「LT8315」
図1.次世代自動車のインバータ回路の小型化を実現する「LT8315」
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