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CASE時代の課題に取り組むADIの回路保護

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来2019 第2回

車載システムの盲点を理想的に革新
CASE時代の課題に取り組む
アナログ・デバイセズの回路保護

「CASE(Connected、Autonomous、Shared/Services、Electric)」の時代を迎えて、アナログ・デバイセズは、ECUに接続されたさまざまな電源(オルタネータ、12V鉛電池、48V Li-Ionバッテリ等)からの保護を理想的に実現するソリューションを提案する。逆接保護、過電流保護、および過渡電圧保護が対象だ。保護回路の損失を抑えるとともに小型化を推進し、ECU台数の増加に伴う発熱の増大などの問題を解決する。

亀元 政秀 氏
亀元 政秀 氏
アナログ・デバイセズ株式会社
オートモーティブセールス
中部・西日本地区ディレクター

 いわゆる「CASE(Connected、Autonomous、Shared/Services、Electric)」の時代を迎えて、高度化と複雑化が著しいのが、クルマのさまざまな機能を制御するECUだ。

 「ECUの電源入力にはダイオードなどのディスクリート部品で構成された保護回路が搭載されていますが、ECUの処理能力が増大する現在、保護回路のサイズや発熱が新たな課題として顕在化しています」と、アナログ・デバイセズの亀元政秀氏は説明する。「とくに発熱は、ECUの成立性そのものを脅かしています」。

 そこで、保護機能の代表ともいえる逆接(逆接続)保護、過電流保護、過渡電圧保護の3点について、具体的なソリューションとともに取り上げてみよう。

損失はダイオード保護の1/20

①逆接保護

 整備の際にバッテリの正極と負極を逆に接続してしまった場合、あるいはハーネスを逆極性で加工製作してしまった場合、すべてのECUに大きな負電圧が印加され、内部回路は大きなダメージを受ける。このためECUの一次側には逆接保護の仕組みが必須となっている。

 保護素子として一般的に用いられているのがショットキー・バリア・ダイオードだ。ターンオフが高速で、逆接保護に適した素子だが、順方向電圧降下が0.4V程度ある(図x)。

図x. 高速な遮断を実現し、逆接保護の各種試験規格にも適合する、アクティブ整流器コントローラLT8672
図x. 高速な遮断を実現し、逆接保護の各種試験規格にも適合する、アクティブ整流器コントローラLT8672
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 そのため、通常使用時に電圧降下が発生することで、ECUの入力電圧は低くなり、コールドクランク時の電圧余裕の低下や、オーディオアンプECUにおいてはシステムリセットを招いてしまう。また、ECUの消費電流を5Aと仮定すると、ショットキー・ダイオードでは0.4V×5A=2Wもの損失が発生し、大掛かりな放熱対策が必要になる。

 逆接保護のこうした課題に対してアナログ・デバイセズが提案するソリューションが、アクティブ整流器コントローラ「LT8672」(図x)と理想ダイオード「LTC4376」である。

 LT8672はN-ch MOSFETを理想ダイオードとして制御する逆接保護コントローラだ。電圧降下は、外付けMOSFETにもよるが0.02V(20mV)程度と小さく、ECUには+12V電圧がほぼそのまま供給される。損失は5Aが流れる場合で0.02V×5A=0.1Wと非常に小さく、放熱設計で苦労することはない。

 N-ch MOSFETのターンオフを高速化するために、外付けインダクタを使って昇圧回路を構成し、ゲートの駆動電圧を高めているのも特長だ。「欧州の自動車メーカーが適用しているLV124:E-06のような厳格な試験要件にも対応できる高速応答性がLT8672の特長といえます」(亀元氏)。

 もうひとつのソリューションであるLTC4376は、最大7AのN-ch MOSFETと、ゲート駆動用のチャージポンプ回路を内蔵したモノリシック理想ダイオードだ。5A出力時での損失は0.35W程度と小さく、LT8672と同様に特別な放熱対策は必要としない。ECUの小型化が図れるのがメリットである。

入力コンデンサの冗長化が不要に

②過電流保護

 ECU回路の電源系統で短絡故障が起きた場合に備えて、その入力には適切な保護手段が必要である。

 短絡の要因のひとつが入力コンデンサに使われるMLCC(積層セラミック・コンデンサ)だ。MLCCは応力に弱く、基板の反りなどで内部にクラックが発生し、ときには短絡故障もしくは開放故障に至ることが知られている。

 対策として、2個のMLCCを直列に接続し、かつ、当初の容量を維持するためにそれらをさらに2並列で配置しなければならないが、供給不足が続いているMLCCを4個も使用しなければならず、サイズ、コストの面で不利になる。

 一方、過電流保護ソリューションを入力側に配置しておけば、MLCCに短絡が発生しても電流を速やかに遮断できる。その一例がアナログ・デバイセズの「LT4363」(図y)や「LTC4364」だ。いずれも電流センス抵抗の両端電圧が規定値を超えたときに、MOSFETをターンオフして過電流を防ぐ。MLCCの数を1/4に減らし、専有面積とコストの削減も図れる。

図y. ECUの保護に最適なアナログ・デバイセズの主なソリューション
図y. ECUの保護に最適なアナログ・デバイセズの主なソリューション
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③過渡電圧保護(サージ・ストッパー)

 ロードダンプのように瞬間的な電圧上昇に対しては、サージ・ストッパー、あるいはTVS(Transient Voltage Suppressor)と呼ばれる保護機能が必要だ。

 ツェナー・ダイオードやアバランシェ・ダイオードを用いた既存の電圧クランプ回路では損失が大きいため、放熱が課題になる。

 アナログ・デバイセズが提供するのが、前述のLT4363LTC4364のほか、100Vにも対応し、暗電流が80uAと低く、サーキットブレーカ機能も構成可能な「LTC4368」などのソリューションである。いずれも定常動作時の損失が少なく、特別な放熱対策はほぼ不要だ。

高精度なシミュレーションも可能

 ECU回路の電源側の保護は方式的には確立されてきたものの、冒頭で述べたように、CASE時代に入りECUの処理能力が増大するのを背景に、保護回路の発熱やサイズが新たな課題と して浮上している。

 そうした課題に対応するのがアナログ・デバイセズのソリューションだ。「旧リニアテクノロジー時代から引き継がれる電源回路に関する知見と実績、および充実したデザインサポートが、アナログ・デバイセズの価値の源泉です」と亀元氏は説明する。

 また、今回紹介した各ソリューションは、いずれもLTspice®上でシミュレーションが可能である。LTspiceはアナログ・デバイセズが無償で提供するアナログ回路シミュレータで、設計業務に導入している企業も多い。

 「最新の保護デバイスそのもののSpiceモデルに加え、正確な突入波形シミュレーション・モデルが提供されるのは高性能アナログ半導体メーカーの中でも限られます。基板や回路にダメージを与えることなく、逆接続、過電流や過電圧などのあらゆる条件を想定して網羅的な検証が行えるのも、当社ならではの強みです」と亀元氏は説明する。

 先進的なサプライヤやOEMは、ダイオードを中心とした従来の保護方式から、こうしたソリューション・ベースへの転換を進めているという。CASE時代に向けて、ECUの電源入力段保護についても見直すタイミングに来ているといえるだろう。

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