カメラ・アプリケーションの普及と拡大を見据え、アナログ・デバイセズは、バックカメラなどの映像をフルHD画質で伝送できるC2B™(Car Camera Bus)インターフェースを開発した。従来のアナログ・コンポジット信号と同等の安価な非シールド・ツイストペア線を使いながら、フルHD映像を30mまで信頼性高く伝送できるのが特長だ。

クルマの電子化とインテリジェント化が進む中、文字通りの“眼”として、多くのカメラがクルマに搭載されるようになっている。後方の安全を確認するバックカメラに加え、フロントカメラやサイドカメラを装備するクルマも増えてきた。電子ミラーが解禁になったこともあり、カメラ台数はさらに増える見通しだ。
そうしたトレンドを背景に浮上してきたのが、カメラ・アプケーションの画質問題である。
「デジタルテレビやスマートフォンだけでなくカーナビにおいても高精細化および高画質化が進んでいる今、画面表示をバックカメラなどに切り替えたときに画質の粗さが目に付くようになってきました。時にはカメラやカーナビが不良品なのではないか、といった声がユーザーから挙がることもあるそうです」と、アナログ・デバイセズの須藤徹氏は課題を説明する。
画質が粗く見えるのはカメラ・モジュールとカメラECUとを一般的なアナログ・コンポジット信号(NTSC)で接続しているためだ。コストの安い非シールド・ケーブルが使えるものの、帯域としてはいわゆるSD画質(640×480)が上限になってしまう。
720p(HD)や1080p(フルHD)といった高画質映像を低コストで伝送したいという自動車メーカーやサプライヤーのニーズに応えて、アナログ・デバイセズが開発したのが「C2B™」(Car Camera Bus)である(図x)。
「C2Bはカメラ・モジュールとカメラECUとを接続するインターフェースで、一般的な非シールド・ツイストペア線(UTP)を使ってHDまたはフルHDの高画質映像をアナログのまま伝送できるのが特長です。最大伝送距離は30mと長く、全長の長いピックアップ・トラックやバスなどにも応用が可能です」と、アナログ・デバイセズの小野宏氏は説明する。
構成はシンプルで、カメラ・モジュール側にC2Bトランスミッタ・デバイスを、カメラECU側にC2Bレシーバ・デバイスをそれぞれ搭載し、非シールド・ツイストペア線で結ぶだけで良い。
C2Bの大きなメリットのひとつがコストだ。従来、HDあるいはフルHD映像を伝送するにはLVDS(小振幅差動信号方式)のような信号方式を採用する必要があり、SerDesなどのインターフェース・デバイスのコストに加えて、シールド付きケーブルとコネクタのコストがそれぞれかさんでいた。
同社の試算によれば、カメラ・モジュールとカメラECUとを8mのケーブルで接続する場合、LVDSの場合は約8ドルのコストが掛かるが、C2BはSD画質での接続とほぼ同じ約3ドルで収まるという(図y)。この試算値は1台のカメラの場合だが、カメラ台数が増えるほどC2Bのコストメリットが活きてくるといえるだろう。
C2BはいわばフルHD信号に対応したアナログ信号のエクステンダーである。Ethernet AVBのような映像をパケット化して伝送する方式と異なるため、映像にレイテンシや圧縮ノイズが発生せず、カメラ・アプリケーションで表示させたときにも違和感がない。
ピクセルレートは75MHzで、130万画素のHD映像を毎秒60フレーム、または200万画素のフルHD映像を毎秒30フレーム送ることができる。映像信号伝送と同時に、GPIOやI2C通信をサイドバンドのコントロール・チャネルを通じて、カメラECUからカメラ・モジュールにコマンドを送出したり、カメラ・モジュールからカメラECUにステータスを送出することも可能だ。
ケーブルには非シールド・ツイストペア線が使える。コストが安く、かつ、重量が軽いだけでなく、コンポジット信号用に開発されたハーネスを流用できるというメリットもある。また、非シールド・ツイストペア線は細くてしなやかなため、トランクやドアのヒンジ部分を渡した場合でも繰り返しの曲げに強い。最大伝送距離は前述の通り30mである。
リンク喪失などに起因する固着フレーム検知、断線検知を含む各種診断機能、ケーブル・インピーダンス劣化補償機能などを搭載し、接続と伝送の堅牢性を高めている。
EMCに関しても極めて堅牢に設計されており、EMC対策用の様々な回路IPを備えることで、外部からの干渉、および自らの放射において、CISPR 25 Class 5やISO 111452-2など自動車のさまざまな試験規格をクリアしている。
画質に関しては、C2Bでの伝送で劣化が生じないことを、第三者機関(米Image Quality Labs)の官能評価で確認済みである。
C2Bはすでに複数の自動車メーカーで採用が決まっているそうで、2019年末までに第一号となる新車が発売される見通しだ。2020年にはさらに多くの新車が登場するだろう。HD化によってユーザー・エクスペリエンスが向上すればクルマの価値も上がる。
「多くのお客様にC2Bをご紹介していますが、従来のコンポジットとほぼ同じコストでHD映像が伝送できることにまず驚かれます。コストは新車への採用の決め手のひとつにもなっていて、そうしたメリットを含めて、カメラECUやカメラ・モジュールを開発するサプライヤーのお客様にC2Bを提案していきたいと考えています」と須藤氏は述べる。
また、小野氏は次のように展望する。「アナログ・デバイセズは、長年コンスーマ市場向けに高性能ビデオ製品を供給しており、これらの技術を車載向けにも製品展開しております。C2Bも機能だけを見るととてもシンプルですが、VHSの時代からアナログ・デバイスが培ってきたビデオ伝送のさまざまな技術ノウハウが詰まっています。カメラ・アプリケーションの拡大という新たなトレンドに対し、コストと性能に優れたC2Bソリューションの提供を通じて、お客様のニーズに応えていきます」。
コスト要件が特に厳しいベーシック・グレードやミドル・グレードのクルマを対象にした第一世代となるC2Bトランスミッタ「ADV7990」「ADV7991」とC2Bレシーバ「ADV7380」「ADV7381」はすでに量産を開始しており、評価システムも用意されている。C2Bを内蔵したサードパーティ製のHDカメラ・モジュールも登場する見込みだ。C2Bによってカメラ・アプリケーションの新たな時代がスタートする。
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