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軽量・低コストなケーブルでノード間を最長15m で接続オーディオ信号専用の低遅延バスA2B®

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来 第4回

軽量・低コストなケーブルでノード間を最長15mで接続
オーディオ信号専用の低遅延バスA2B®
フォード・モーターほか量産車への採用広がる

車室内の騒音を抑えるアクティブ・ノイズ・キャンセリングや座席間の会話をアシストするインカー・コミュニケーション・システムなど、音を制御する技術が登場するなか、アナログ・デバイセズはオーディオ信号専用の「Automotive Audio Bus(A2B)」を開発した。低コストなUTPケーブルでノード間を最長15mで接続でき、遅延も短いなど、さまざまな特徴がある。

小野 宏 氏
アナログ・デバイセズ 株式会社 オートモーティブ セグメント FAEマネージャー
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 クルマの快適性や利便性を「音」を使って高めようという取り組みが始まっている。従来からあるインフォテイメントにおけるサラウンド・システムはもとより、雑音のないハンズフリー通話システム、エンジン音や走行音を打ち消すアクティブ・ノイズ・キャンセラー(ANC)、音声認識機能を使ったボイス・コントロール、小型マイクと小型スピーカーを用いた前方座席と後方座席とのインカー・コミュニケーション・システムなど、さまざまな新しいテクノロジーが登場してきた。

 こうしたシステムを実現するにあたって課題のひとつに挙げられるのが、分散されたノードでキャプチャ/再生されるオーディオ信号(音声信号)や関連する制御信号のやりとりである。たとえばインカー・コミュニケーション・システムの場合、各座席の近くに組み込んだマイクの信号をECUに集める仕組みと、ECUが処理した音声信号を各座席の近くの小型スピーカーに送出する仕組みが必要になる。

 「マイク信号やスピーカー信号をアナログのまま伝送する旧来の方法では電磁ノイズ対策が必要になる一方で、Ethernet AVBやMOSTといったメディア用ネットワークをすべてのノードに使うのはコスト高になってしまいます」と、アナログ・デバイセズの小野宏氏は説明する。

I2S/I2C信号のエクステンダー

 こうした背景と課題を踏まえて、アナログ・デバイセズがオーディオ専用バスとして開発したのが「Automotive Audio Bus」である。略して「A2B」(エー・ツー・ビー)と称する。

 A2Bは、オーディオ信号をシリアルで伝送する業界標準の「I2S/TDM」(Inter-IC Sound/Time Domain Multiplexing)インタフェースと、制御コマンドなどをシリアルで伝送する業界標準の「I2C」(Inter-Integrated Circuit)インタフェースの、いわばエクステンダー的な働きをするシリアル・バスで、デジタル・アンプとスピーカーや、音声認識ECUとマイクロフォン・アレイなどの各ノード間を最長10m(第一世代品)または最長15m(第二世代品)で接続できるのが特徴だ。

 トポロジーはデイジーチェイン(一筆書き)で、バスあたりの最大スレーブ数は10ノード、オーディオの最大チャンネル数は32チャンネルである。

 ケーブルには安価で軽量な非シールド・ツイストペア・ケーブル(UTP)を使う。同社の試算によると、シールド付きの太いケーブルを必要とするアナログでの伝送に比べて、ハーネス・コスト、重量ともそれぞれ数10分の1に削減できるという。

 転送ビットレートは50Mbpsと高く、高音質なビット・ストリームをマルチ・チャネルで流すのにも十分な性能を持つ。

 電気的にはLVDS(小振幅差動信号)を採用。+5V/最大300mAのDC電源を重畳させて送ることもできるため、ローパワーのスレーブ・ノードの駆動には十分だろう。

 車載用途で懸念される電磁ノイズに関しては、「かなりの投資を行って技術開発を進めてきた」(小野氏)こともあって、同社内の試験によれば、CISPR25(2008)(ALSE法)など自動車に関連するさまざまなEMC規格を満たしているという。

50μSの確定レイテンシを保証

 A2Bがもたらすメリットはオーディオ・ハーネスの低コスト化や軽量化だけではない。汎用ネットワークではなくI2SやI2Cのエクステンダーとして作られているため、それぞれのノードにマイコンやプロトコル・スタックを必要としない。すなわち、システム全体の低コスト化や回路の小型化をもたらしてくれる。

 また、ソフトウェアが介在しないため、信号のレイテンシが短く、かつ、確定的(デターミニスティック)なのも特徴だ。具体的には50μsときわめて低遅延である。

 そのため、たとえばアクティブ・ノイズ・キャンセラーで環境音や振動をセンシングする場合に、マイクロフォンや加速度センサーを搭載したセンサー・ノードから、サンプリング・データをリアルタイムで送ることができる。

 こうした性質を利用して、オーディオ・バスとしてではなく、センサー・ネットワークとして応用することも可能だ。「車載用として開発したA2Bですが、たとえば音響機器の内部配線や産業機器でのセンシング・バスなどにも活用が可能ということで、実際にそうしたお問い合わせもいただいています」と小野氏は説明する。

フォードほかが量産車に採用

 A2Bのトランシーバはすでに量産出荷中だ。「AD2410」は第一世代のトランシーバで、マスターまたはスレーブの両方に対応する。サポートするスレーブ数は9で、I2S/TDMまたはPDM(パルス密度変調)のマイクロフォン入力も備える。「AD2401/2402」はマスター機能およびI2S/TDM機能を省いたスレーブ用の廉価版である。

 サポートするスレーブ数を11に増やした「AD2425」は第二世代のトランシーバだ。ノード間距離を第一世代の10mから15mへと長くした。スレーブ品に関しても第二世代の「AD2421/2422」が用意される。

 「こうした基本的なトランシーバ製品に加えて、将来的にはさまざまな機能をインテグレーションしたソリューションも展開していく計画です」(小野氏)。

 すでに米フォード・モーターが2016年発売の量産車のインフォテイメント・システムの接続にA2Bを採用済みのほか、日米欧の複数のメーカーで採用が決まっているという。「2017年から2020年にかけて、A2Bを搭載した市販車が各メーカーから続々と登場する見込みです」と小野氏は説明する。

エコシステムで開発をサポート

 A2Bの開発環境としては、評価ボードやソフトウェア開発キット(SDK)が提供されるほか、米メンター・グラフィックス、米Total Phase、米Audio Precision、独Muller BBMなどのエコシステム・パートナーから関連ソリューションが提供される。

 「オーディオ信号のやりとりはEthernetなどの汎用的なネットワークで構成することもできますが、レイテンシが発生するほか、各ノードにマイコンとプロトコル・スタックが必要になるなど、システムの観点では必ずしも最適とはなりません。オーディオ信号に特化したA2Bは、ネットワーク・スタックを必要としないきわめて軽量なバスで、しかも安価なUTPが使えるなど、さまざまなメリットをもたらします」と小野氏は特徴を訴求する。

 一般には自動運転の関連技術やEVなどの石油資源の代替技術に注目が集まるが、クルマの進化はさまざまな領域で進んでいる。アナログ・デバイセズは、高性能なアナログ半導体ソリューションで、市場の変化や顧客のニーズに幅広く応えていく。

図. オーディオハーネスの軽量化などさまざまなメリットをもたらす、オーディオ信号専用バス「Automotive Audio Bus」
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