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CR-8000がLTspiceと連携

LTspiceユーザーの集い2018 特別インタビュー

図研の設計ツール
CR-8000がLTspiceと連携
回路設計とシミュレーションを一元化

エレクトロニクス分野などを対象にさまざまな設計ツールを提供している図研は、マルチボード設計環境「CR-8000」において、2016年からLTspiceとの連携をサポートしています。
回路設計および基板設計の効率化に加え、回路情報の一元化が図れるなどのメリットがあり、CR-8000を導入されるお客様も増えています。今回、LTspice Users Clubでは、同社の常務取締役である仮屋和浩氏に、CR-8000の特徴や連携の仕組みなどを伺いました。

複数の基板を対象にした設計環境「CR-8000」
海外メーカーを端緒に国内メーカーでも採用が進む

戸上 晃史郎
アナログ・デバイセズ株式会社
リージョナルマーケティング
マーケティングマネージャー
兼 LTspice Users Club事務局

戸上:アナログ・デバイセズが提供している回路シミュレータ「LTspice」は、無償ということもあって、試作段階だけではなく製品段階の回路検証に活用されるケ一スも増えてきました。一方で、設計プロセスの中にどう組み込んでいくかが課題として挙げられることも多く、たとえば回路図CADとLTspiceとで回路情報を二重に管理しなければならない、といった指摘をユーザーから頂戴することもあります。そうした中で、図研のシステムレベル設計環境「CR-8000」では、2016年3月のバージョンからLTspiceとの連携機能がサポートされ(※1)、設計情報の一元化が実現されています。連携の詳細はのちほど伺うとして、まず「CR-8000」とはどういったツールなのか教えてください。

(※1)オプションのCR-8000 Design Gateway 2016 DG LTspice I/Fが必要です。

仮屋 和浩氏
株式会社 図研
常務取締役
EDA事業部長
兼 チーフ・テクノロジー・オフィサー

仮屋:最近の製品やモジュール部品は中身がますます複雑になっていて、従来のように回路と基板を個別に設計していたのではモノが作れない時代に入っています。ところが世の中の設計ツールは、当社が1994年から提供している回路・基板統合設計環境「CR-5000」シリーズを含めて、基本的に一枚の基板とその回路図を対象にしているため、複数の基板で構成されるシステム全体を表現することができません。そこで開発したのがマルチボード設計環境「CR-8000」です(図1)。CR-8000は、システムレベルでの構想設計ツール「System Planner」、システムレベルでの回路設計ツール「Design Gateway」、複数ボードを対象にした実装設計ツール「Design Force」、製造設計ツール「DFM Center」という四つのツールから構成されています。

戸上:CR-8000のユーザーはどういった層なのですか?

仮屋:2012年にリリースしたとき、積極的にご採用いただいたのは海外のメーカーでした。システムが複雑になって、基板も複数に分かれ、回路設計と基板設計を同時に進めなければならなくなっていた当時、これこそ欲しかった設計環境だ、社内の設計プロセスを変えてでも導入したい、と評価していただきました。国内メーカーは回路設計や基板設計などの分業を前提としたCR-5000運用が定着していて設計プロセスの変更に消極的でしたが、それでも最近は回路設計者が基板設計を含めてシステム全体を検討しながら解析や検証を進めたいということで、CR-8000の採用が増えつつあります。日本が競争力のある製品を設計するためにも、積極的に活用していただきたいと願っています。

戸上:LTspiceの活用を促進するLTspice Users Clubは、アナログ回路の設計力を高めて日本産業の活性化に少しでも役立ちたいとの想いで設立した経緯がありますので、まさにそこは合致しますね。

図1. Design Force、System Planner、Design Gateway、DFM Centerという四つのツールで構成されるCR-8000。従来のCR-5000との連携も可能
図1. Design Force、System Planner、Design Gateway、DFM Centerという四つのツールで構成されるCR-8000。従来のCR-5000との連携も可能
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ユーザーの要望に応えてLTspiceの連携をサポート
回路図を切り出して回路シミュレーションが可能

戸上:続いて、CR-8000と外部CAEツールとの連携機能についてお聞かせいただけますでしょうか?

仮屋:CR-8000は、Design Forceを介して、ANSYS、キーサイト・テクノロジー、National Instruments、ムラタソフトウェア、ダッソー・システムズ、Siemens PLM Softwareなど、各社のCAEツールやメカCADとの連携が可能です。従来、たとえばシステムレベルの解析をするには、回路情報、部品配置情報、各部品のパッケージ情報などを準備し、筐体や機構の設計者に渡して3次元に変換してから解析の専門家に準備をしてもらう必要があり、準備だけで数日を要していました。対してCR-8000では、データの一元化ができますのですぐに着手でき、1日で4回から5回の解析検証を実現しているお客様もいらっしゃいます。

戸上:LTspiceとの連携機能をサポ一トしたのにはどういった背景があったのでしょうか?

仮屋:CR-8000は商用SPICEとの連携ももちろん可能なのですが、自動車業界や電源業界ではLTspiceの活用が広がっていて、いろいろなお客様からサポートして欲しいというニーズが上がったのが直接のきっかけです。LTspiceのGUIは多少独特なところがありますが、それでもテキストベ一スの操作が必要な商用SPICEに比べれば断然使いやすく、スイッチング動作の収束も速く、なによりも無償ということもあって、分野によってはデファクト・スタンダード(事実上の標準)なツールのひとつになっていると感じます。

戸上:CR-8000で設計した回路の動作をLTspiceでシミュレーションするには、具体的にはどのような操作を行えばいいのでしょうか?ネットリストをいったん吐き出してLTspiceに渡すようなステップが必要ですか?

仮屋:CR-8000とLTspiceはユーザーインタフェースを含めてさまざまな違いがありますから完全にシームレスとはいきませんが、極力少ない手間でシミュレーションができるように工夫しています。具体的には、回路設計ツールのDesign Gateway上でシミュレーションしたい範囲をフレームとして切り取って、CAEツールを起動するフロントエンド(アナログシミュレーションコントロールユニット)からシミュレーション条件やフレームの入出力信号を定義したのち、LTspiceを起動するのがおおまかな手順です(図2)。

戸上:LTspiceは基本的に集中定数を対象にした回路シミュレータです。分布定数で記述しなければならない高周波回路の解析や、複数基板をまたがる伝送線路解析には、正直不向きなところがあります。

仮屋:その点は私どもも承知しています。どちらかというと、ユニバーサル基板に試作回路を組んで、回路が固まる前に動作を確認しながら、設計の妥当性を確認していくような作業を気軽に行えることを目指した連携と考えていただければと思います。やろうと思えば、実装設計ツールDesign Forceで抽出した寄生成分を等価的なLC素子に置き換えてLTspiceを走らせるような方法もできなくはないのかもしれませんが、ではその寄生成分をどう付加するか、という問題は簡単ではありませんし、デバイスモデル内部の電源系やGND系の回路が分からないと不可能な場合もあります。そのため、製品レベルでのノイズ検証には別途シグナルインテグリティ解析などを推奨しています。

図2. Design Gatewayで設計した回路をLTspiceでシミュレーションするおおまかな流れ
図2. Design Gatewayで設計した回路をLTspiceでシミュレーションするおおまかな流れ
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CR-8000上でのLTspiceの活用方法など技術情報を発信
これからのさらなる進化にも期待

戸上:CR-8000でのLTspiceの連携に関しては、どのような技術サポートが用意されているのでしょうか。

仮屋:一般向けには「Club-Z」 というウェブサイトで情報を発信しています。ちなみにClub-Zで説明役を担っている「桃子」というキャラクターは、関西支社にいる実在の女性社員です(笑)。CR-8000を導入されているお客様向けには、オンラインドキュメントやトレーニングを提供しているほか、問い合わせ窓口である図研レスポンス センターにLTspiceが分かる人間を配置して、問題の切り分けを含めて問い合わせに対応しています。

戸上:LTspiceには今後どういった機能を望まれていますか?

仮屋:CR-8000からLTspiceをこう使いたい、ああ使いたい、というご要望はお客様からも多くいただきますし、個人的には、たとえばDesign Gateway上で回路を変更すると、バックグラウンドでSPICEが動いて特性変化がリアルタイムに見えるようなダイナミックな機能を実現できたら面白いなとか、いくつかのアイディアやリクエストは持っています。ただ、LTspiceはもともと旧リニアテクノロジーの半導体の販売をサポートするために開発されたツールですし、開発者のMike Engelhardt(マイク・エンゲルハート)さんが「とんがって」いるからこそいいモノが生まれると思っているので、CADベンダーの都合で変更してもらえないことは承知しています。とはいえ、先ほども述べたようにLTspiceは自動車業界や電源業界などではデファクト・スタンダードになっていますので、これからも改良を重ねて、さらにいいツールにしていただきたいと願っています。

戸上:CR-8000でLTspiceの連携をサポートしていただいたおかげもあって、商用SPICEからLTspiceに乗り換えてくださるお客様も増えていて、対応にとても感謝しています。LTspiceの体験会なども含めて、プロモーションなどを共同で進められれば幸いです。LTspiceの活用に関しては、当社以外の半導体製品のデバイスモデルを誰がどう作るか、といった問題などもありますが、開発者のマイクにも頑張ってもらいながら、日本の工レクト口ニクス産業にとってなくてはならないツールのひとつとして活用がさらに進むように、LTspice Users Clubとしても取り組んでいきます。本日はどうもありがとうございました。

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