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MLCCを大幅削減する電源ソリューション

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来2018 Vol.4

セラミック・コンデンサの供給不足を設計でカバー
高効率かつ低ノイズな電源ソリューションが
電源周りのMLCCを大幅削減

深刻な供給不足が続く多層セラミック・コンデンサ(MLCC)。需給のバランスが戻るにはかなりの時間が掛かる見込みで、調達に苦労しているサプライヤーも多い。そこでアナログ・デバイセズが提案するのが、MLCCをできるだけ使わない設計への転換だ。EMIノイズを抑えたSilent Switcher®アーキテクチャの電源ICを、2M㎐など高めのスイッチング周波数で動かすことで、MLCC個数の大幅削減を実現する。

石井 純 氏
石井 純 氏
アナログ・デバイセズ株式会社
パワーシステムズ
ジャパン マーケット マネージャー

電子部品業界ではセラミック・コンデンサの供給不足が大きな問題になっています。

石井:MLCC(Multi-layer Ceramic Capacitor)とも呼ばれる多層セラミック・コンデンサは、ノイズの抑制や信号のカップリングに欠かせない部品のひとつですが、2016年の終わり頃から供給が不足し始め、価格の上昇やリードタイム(納期)の長期化が顕著になってきました。数年前の市場低迷で一部の部品メーカーが生産の縮小や撤退を行ったことで供給力が大きく低下した一方で、スマートフォンの需要回復やクルマの電子化を背景に需要が急増したことが原因です。供給不足が解消するのは2020年以降と見込まれるなど長期化は確実で、調達が思うようにいかず最終製品の減産を余儀なくされている機器メーカーも少なくありません。

MLCCを使わない設計へ転換

自動車メーカーやサプライヤーはどのような取り組みが必要でしょうか。

石井:それぞれの調達部門は必要数量の確保に相当の努力をされていると推察しますが、そもそも絶対的な供給量が不足していることを考えると、いい特効薬はないのが現実と思います。

 そうした状況の中でアナログ・デバイセズが提案するのが、MLCCをできるだけ使わない設計への転換です。ノイズの少ない回路を採用することによって各ECUあたりのバイパス・コンデンサを数個でも減らせれば、クルマ全体ではかなりの個数を省略できるからです。供給不足の問題を明日にでも解決できるわけではありませんが、必要量を抑えることで需給のアンバランスの緩和が図れます。また部品コストの削減、回路面積の小型化、マウンターでの実装時間の短縮などのメリットも得られます。

設計のポイントを具体的に挙げてください。

石井:ECU内部でMLCCが最も使われているのが、鉛バッテリが出力する+12V電源や、マイルドハイブリッドシステムの+48V電源を+5.0Vや+3.3Vなどの低電圧に変換するスイッチング・レギュレータ周りです。スイッチング・レギュレータは名前のとおり、スイッチング動作によって一次側のDC電圧を二次側のDC電圧に変換するためノイズが発生しやすく、ノイズのデカップリングや電圧の平滑化に数多くのMLCCが必要でした。

 そこで、ノイズの少ないスイッチング・レギュレータICを使用すれば、かなりの数のMLCCを省略できるのではないか、というのが当社の考えです。実際に、例えば+12Vを5V/4Aおよび3.3V/4Aに変換する電源回路の場合、競合ベンダーのスイッチング・レギュレータICでは32個のMLCCが必要ですが、性能に優れる当社のLT8650では14個で構成できるため、18個もの削減が可能です(いずれも各評価ボードの搭載個数)。

高fswかつ低ノイズな電源を実現

アナログ・デバイセズのソリューションはなぜMLCCが少なくて済むのでしょうか。

石井:スイッチング・レギュレータの役割はSoCや周辺素子に安定的に電源を供給することですが、近年はSoCなどの消費電流が内部動作に応じて瞬間的に大きく変動するようになっており、そのような負荷電流の変化に対して電圧をいかに維持するかが課題になっています。負荷変動への応答性を高めるには、出力コンデンサの容量を大きくしたり、スイッチング・レギュレータの制御ループを高速化する、などの手法がありますが、MLCCの削減に有効なのがスイッチング周波数(fsw)を高めに設定する方法です。出力リップル電圧が小さくなるため出力コンデンサの容量を減らせ、同時に、負荷変動に対する応答性も良くなります。一般にはスイッチング周波数を高くすると損失が増大して発熱が増えてしまいますが、当社のソリューションは高効率を維持できるのが特長で、AMラジオと干渉しない2M㎐前後でも90%以上の変換効率を実現しています。

ほかにも特長があれば紹介してください。

石井:当社のソリューションが優れているもうひとつの理由が「Silent Switcher」と呼ぶ低ノイズ・アーキテクチャの採用です。スイッチング動作に伴う電流ループ(ホット・ループ)をICパッケージ左右対称に配置することで、磁界を閉じ込めて電磁界ノイズを大幅に抑えたのが特長で、従来品に比べてEMIノイズは20㏈以上も小さく、自動車のEMC基準のひとつである「CISPR 25 Class 5」も満足します。そのため、ノイズ・デカップリング用のMLCCを大幅に削減することが可能です。実際にお客様からも「他社の電源ICから切り替えたところ、ノイズが収まった」とのご評価をいただいています。

 このほか当社では、無償のアナログ・シミュレータ「LTspice®」やループ補償などの設計を簡易化する無償ツール「LTpowerCAD®」などの提供を通じて、MLCC をできるだけ使わない設計への転換をサポートします。

Silent Switcherアーキテクチャに基づく高性能な電源ICを展開

 最小限のMLCCで電源回路を構成できるソリューションの一例が6A出力の「LT8640S」(内部補償)または「LT8643S」(外部補償)だ。第二世代のSilent Switcherアーキテクチャに基づいて開発されており、伝導/放射ノイズはきわめて低く抑えられている。スイッチング周波数は最高3M㎐で、その場合でも変換効率は90%以上と高い。推奨レイアウトの場合で、必要なMLCCはわずか6個である(入力Cinと出力Coutは除く)。

図1.第二世代のSilent Switcherアーキテクチャを採用した6A出力の「LT8640S/LT8643S」
図1.第二世代のSilent Switcherアーキテクチャを採用した6A出力の「LT8640S/LT8643S」
図2.高いスイッチング周波数でも90%を超える変換効率を実現
図2.高いスイッチング周波数でも90%を超える変換効率を実現
図3.20㎜×35㎜程度のサイズで構成された「LT8643S」の推奨レイアウト(使用部品数などは電源の要件に応じて変わります)
図3.20㎜×35㎜程度のサイズで構成された「LT8643S」の推奨レイアウト(使用部品数などは電源の要件に応じて変わります)
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  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

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