日経テクノロジーonline SPECIAL

未来型デジタルファクトリー

ストラタシスの片山浩晶社長

 片山氏が特に意義を強調したのが、三つめの「ビジネスモデルの変革」だ。その具体例として片山氏は米Airbusのケースを挙げた。Airbusは既に1機につき1000種類以上の部品を3Dプリンタで製造している。従来、それらの部品は各空港に在庫として持つ必要があったが、物理的な部品の代わりに部品の設計データを各空港で「デジタル在庫」として持ち、必要に応じて現地で3Dプリンタで作ることにした。そこでAirbusでは、物理的な部品の代わりに部品の設計データを各空港で「デジタル在庫」として持ち、必要に応じて現地で3Dプリンタで作ることにした。それにより部品管理のサプライチェーンを大幅に簡素化できたという。

 DDMが可能にするデジタル在庫という考え方は、「作った分だけ売るというビジネスを可能にする」と片山氏は言う。「販売中止になった製品についても、DDM(3Dプリンタで生産する)ことを前提にした設計をしておけば、金型の保管が不要になるだろう」(片山氏)。

自分のクルマを飾るパーツをDDMで作る

 DDMによるものづくりのビジネスモデル変革のもう一つの事例として、片山氏はマスプロダクションとマスカスタマイゼーションの融合によるイヤホンの開発の例を挙げた。イヤホンはどの製品も基本的に同一サイズだが、実際には一人ひとり耳の形は異なる。耳にフィットしたイヤホンを製造するために、イヤホンの基本的な部分は従来工法による量産で生産し、耳の形に合わせる部分だけDDMで生産する。それらを組み合わせることで、マスプロダクションの効果を最大限残しながら、マスカスタマイゼーションを可能にしたという。

マスプロダクションとマスカスタマイゼーションを組み合わせたイヤホン開発
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 片山氏は日本国内での事例も紹介した。ダイハツ工業の2人乗りオープンカー「コペン」の着せ替えパーツへの応用事例だ。コペンは「DRESS-FORMATION (ドレスフォーメーション)」と呼ばれる着脱構造を採用しており、ユーザがバンパー部などにオリジナルのパーツを貼り付けることで、外装を自分の好みに合わせて装飾できるようになっている。昨年発表された「Effect Skin」は、世界に一つだけのパーツをデザインし、DDMによるパーツの製作が可能となっている。

昨年発表された「COPEN Effect Skin 3DP」プロジェクト

 プロのデザイナが制作したベースのデザインが15種類用意されており、ユーザはその中から選択して色などパラメータを変えながら好みのパーツをWeb上で作る。それがストラタシスの3Dプリンタから作り出される仕組みだ。国内自動車メーカ初の本格的なDDM活用事例で、内装やアクセサリなどにも拡大させることを検討しているという。

オープンイノベーションで新素材開発

 こうしたDDM活用を拡大させながら、ストラタシスは新たな活用の方向性も目指している。さらなる軽量化や高強度化、より大型のパーツへの適用などだが、その中でも特に業界に大きなインパクトを与えそうなのは、電子基板のDDMでの製造だ。基板に部品を載せて作るのではなく、部品を埋め込んだ3D形状の基板をDDMで作るという考え方で、「アセンブリなしで作ることができ、大幅なコスト削減が期待できる。しかも今では実現できないデザインが可能になる」(片山氏)。

 一方で同社は、DDMをさらに普及させるための試作にも取り組んでいる。3Dプリンティングの弱点とされる精度や再現性、生産スピードなどの改善や、環境負荷の低減などだ。ただ「もともとDDMは、素材の90%以上が廃棄される除去加工と違って、素材を有効活用できる加工法。環境負荷を重視する日本の製造業には向いていると言える」(片山氏)。

 DDMの普及のために、片山氏はDDMに取り組む開発者への支援を強化していることを強調した。オープンイノベーションによる課題解決や3Dの出力サービスなどだ。オープンイノベーションでは、DDMで作りたいものの特性に合った素材の開発で既に実績があり、機械特性や導電性、耐薬品性や耐熱性に優れた3Dプリンティング用樹脂の開発例があるという。また3Dの出力サービス「Stratasys Direct Manufacturing」(SDM)は、グローバルで拠点を拡大中で、出力前の見積もりサービス「SDM Factory Portal」は近く日本語化を行う予定だ。

世界中に3D出力サービス拠点を持つ「Stratasys Direct Manufacturing」(SDM)
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 さらに3Dデータを使いこなせる人材の育成やコミュニティプラットフォームの構築にも取り組んでいる。開発者同士の情報共有や120万点以上のCAD素材共有を行う「GrabCAD」や、フリーの3Dデザインデータバンクの「Thingiverse」はその例。いずれもクラウド上に設けたコミュニティで、GEはGrabCAD上でジェットエンジンのブラケットの設計コンペを行い、部品の大幅な軽量化を実現したという。またストラタシス子会社が提供する小規模向け3Dプリンタ「MakerBot」をグローバルレベルでつなぎ、学生向けに工場のシミュレーションシステムとして機能を提供するなど、学生の教育にも力を入れている。

 3Dプリンタは、最終製品を作る機械としては、まだ機能的に不十分なところがあるのは否めない。しかし片山氏は「3Dプリンタは、1日で使い始めることはできるが、使いこなそうとすれば5年かかる」と指摘。「一方で3Dプリンティングの技術は日進月歩で発展している。まずDDMとして取り入れやすい治工具の活用や、人材育成からスタートし、今のうちから使い始めてノウハウを蓄積しておくべき」(片山氏)と強調した。

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