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第1回 トッド・グリム氏からの提言

独フランクフルトで開催されたEuroMold(11/25-28)や JIMTOF(東京国際工作機械見本市)など国内外の展示会で3Dプリンターの新製品が続々発表された。製造業における3Dプリンティングの本格活用は新しいステージに確実に立っている。20年来、世界の先進テクノロジーの進展を年ごとに発表する米国ガートナーの「ハイプ・サイクル2014年」においても、初めて「3Dプリンティング」が登場するなど話題にことかかない。

トッド・グリム氏
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ただ、これまでも何度か3Dプリンターに対する認識不足のために過度の期待が寄せられた事実も記憶に新しい。ここでは、先日来日した3Dプリンティング動向の世界的なエキスパートであるトッド・グリム氏のコメントを交えながら、正しく理解するためのトレンドと課題をまとめた。

 トッド・グリム氏は23年間3Dプリンティング業界に携わってきたエキスパート。この夏「未来型デジタルファクトリー 3DプリンティングDDM」セミナーの基調講演に来日した際に、今後我が国の製造業が3Dプリンティングをさらに活用するために必要なポイントを尋ねた。同氏は、「3Dプリンティングは社会問題を解決する」とこのテクノロジーとポテンシャルを高く評価しながらも、個々の企業が成果を上げるためには機会と課題があることを指摘した。

3Dプリンター市場は着実に成長。 導入にあたっては3Dプリンティング市場の正しい理解が必要

このほど発表されたWohlers Report 2014によると、5000ドル以上の3Dプリンターは昨年9,832台出荷され、1988年からの累計出荷台数が66,702台まで伸びた(図1)。この1年間だけでも、3Dプリンターの導入ユーザーが大幅に増えていることを裏付けるデータである。

図1 3Dプリンター市場動向~年間販売台数~ ※5000ドル以上のマシンに限定 出典:Wohlers Report,2014
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 また、20年にわたり毎年先進テクノロジーの進展をレポートしている米ガートナーの「ハイプ・サイクル2014」にも「3Dプリンティング」が初めて取り上げられた。同レポートによると、企業向け3Dプリンティング技術は過度の期待と幻滅のプロセスを経て、今後2~5年後には、「主流の採用」フェーズに到達するものと見込んでいる。いわば、いよいよ本格定着をこれから迎える段階に入ったと考えられる。(図2)

図2ハイプ・サイクル2014 出典:ガードナー「ハイプ・サイクル2014」
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 ただ、ここでグリム氏はこれまでの歴史を踏まえながら注意を促す。「過去2回、3Dプリンターに関するハイプ(過度の期待)の時期がありました。90年代初頭のラピッドプロトタイピングに対する過剰な期待、そして、2000年代中盤にあった製造業界に革命がおこるというもの。いずれも様々なテクノロジーを混在させてしまい3Dプリンターとして括ったために起きた混乱といえます。企業のものづくりにおいて3Dプリンティングを導入する場合には、個人向けプリンターを除いた産業用の装置としてのジャンルに絞って把握する必要があります」(グリム氏)。

 製造業における3Dプリンティングは「Additive Manufacturing(付加製造技術)」と同義語である。

 現在、3Dプリンターと呼んでいるものは、「付加製造装置」と「パーソナル向け3Dプリンター」に大別できる。この二つを混在させてしまうと、あたかも「3Dプリンターは魔法の箱」のような誤解を生みだしてしまいかねない。これまで、設計・試作段階での活用のイメージが強い3Dプリンティングであるが、着実に製造分野においても利用が広がっている。ストラタシス社が同社のユーザーに実施したアンケートによると、2009年には製造での利用が全体の12%に留まっていたものの、2013年には30%まで拡大している。同社が提唱するDDM(Direct Digital Manufacturing)は、従来の設計・試作領域に加え、治具/金型の製造(Rapid Tooling)や製品そのものの製造(Rapid Manufacturing)の活用が大きく広がっているという。※DDMについては第2回以降に解説

図3 Primary Global AM Market 出典:Credit Suisse
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 グリム氏も、「まだまだ製造分野での活用は30%ではあるが、これをスタートとして製造分野での発展には大きな期待がかかっている」と語る。図3は、昨年Credit Suisseが発表した「Primary Global AM Market」の試算。Additive Manufacturing市場の予測である。着目すべきは、今後はプリンター本体(System)の伸びを大きく上回る形で、材料(Materials)、製造した部品(Direct Parts)、サービスビューロー(Service & Parts)の市場が拡大すると見通している。ちなみに、経済産業省の「新ものづくり研究会」は、2020年には全世界で約21.8兆円市場になると試算している。内訳は、装置・材料などの直接市場1.0兆円、関連市場(付加製造技術で製造した製品市場)10兆円、生産性の革新(付加製造技術による製造などの効率化)10.1兆円。

日本のリーダーシップに期待、 ユーザー自身の変革と教育体制の確立が必要

 こうした3Dプリンティングの発展を確信するグリム氏は、「3Dプリンティングは少子高齢化や省エネルギーなどの社会問題を解決する」とまで言い切る。ただし、その可能性を最大化させるには課題も多いと指摘する。サプライサイドの技術・製品力の向上は言うまでもない。だた、ユーザー企業自体の努力も必須であると説く。「3Dプリンティングを活用して自社の成長・発展を遂げるためにはユーザー自らが組織体を変えたり、ものづくり自体の取り組み方を変えることも必要です。それからもう一つ大きな課題があります。それは、教育・研究の問題です。Additive Manufacturingをどのように行っていくのか、3Dプリンティングの優れたオペレーションはどうあるべきかなど、新しい知識・知見の共有も不可欠です。関係者が協力して教科書やカリキュラムを作っていくべきでしょう」(同氏)。

 そして最後に日本の製造業に対する期待も語った。「現在、世界の中で日本市場はちょうど1割程度のシェアに位置付けられています。もともと日本は1990年代からラピッド・プロトタイピングの開発に取り組まれています。それに3Dプリンティングの活用に強みを発揮する中堅・中小の製造メーカーも沢山あります。今後世界でリーダーシップをとる可能性は大いにあります。何より私の講演を1200人の方が聞きに集まってくださったことが日本の皆さんの3Dプリンティングに対する関心の大きさを物語っています。ここ数年で最も聴講者の強い意欲を感じたセミナーでした」と締めくくった。

協力:ストラタシス・ジャパン

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