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第3回 フレッド・フィッシャー氏 インタビュー

3Dプリンタの利用は、試作用途から実際の商品製造へと確実に範囲を広げている。工具や鋳型などは適用の事例が特に増えている分野であり、その他にも新製品の採算性を確認するために初期ロットを3Dプリンティングで製造する例も登場しているという。米StratasysのApplications Product Director、フレッド・フィッシャー氏は、3Dプリンティングの普及になぜ弾みがつき始めたのかを解説。その理由は、ものづくりの効率化追求に加えて、「設計者がアイデアを自由に表現できるようになるため」と指摘した。

 フィッシャー氏は「3Dプリンティングは、設計現場で機能を確認するために使われる技術という点は、今も変わりません」と指摘する。設計の初期段階でコンセプトモデルやプロトタイプを、試しに数点だけだけ作るという使い方が、現在も3Dプリンティングの最大の用途であるという。

 しかしそうした現状の一方で、「実際の製品を作るという分野での使い方も増えています」とフィッシャー氏は言う。その製品は大きく分けて2つある。一つは製造現場で使う工具や治具などのツール。もう一つはエンドユーザ向けの製品だ。後者は実際に製品として市場に出るもの、または市場に出るものに組み込まれるものであり、ユーザに提供する商品と見なすことができる。従来から主流である試作という範ちゅうを超えて、3Dプリンティングが使われる用途が拡大しているというのである。

 フィッシャー氏はその傾向を示すデータを提示した。3Dプリンティングの代表的な手法であるFDM(熱溶解積層)の用途は、2009年時点では設計のために行われるケースがほとんどで、実際の製品を作るのは12%に過ぎなかった。しかし2013年には、実際の製品作りの比率は30%に高まっている。30%の内訳は商品としての生産が14%、工具や治具が16%であり、いずれも2009年の4%、8%から大きく伸びている。

製造にも乗り出したい設計者の声に応える

 3Dプリンティングが試作から実際の製品作りへ用途を拡大してきた背景には、プリンティング技術の高度化や素材の改善に加えて、ユーザの認知度の高まりもあるとフィッシャー氏は指摘した。「設計者やエンジニアが自由な考え方で問題解決を図ろうとする中で、旧来の手法にとどまらず、設計に加えて製造にも乗り出したいと考えてくれるようになりました」(フィッシャー氏)。設計者やエンジニアがものづくりに対し、新しい考え方を持つようになったことが、3Dプリンティングへの追い風になっているという。

 設計者やエンジニアの新しい考え方に3Dプリンティング技術がマッチした理由として、フィッシャー氏はまず製品開発のコスト削減や期間短縮など効率化を挙げた。製品を一個単位で作ることが、3Dプリンティングで現実的なコストで可能になり、個々のユーザに最適化したものづくりが実現している。

 また「3Dプリンティングの世界では、デザインの複雑性とコストや開発時間には相関関係はありません」とフィッシャー氏は言う。通常のものづくりであれば、デザインが複雑であればあるほど、設計や製造は難しくなり、コストや時間が増大してしまう。しかし3Dプリンティングによるものづくりにその制約はなく、「その分設計者の自由度が高まり、思うままのデザインを実現できます」(フィッシャー氏)。ものづくりによる付加価値創造に直接関係しない非生産的な作業に煩わされることなく、データから直接ものを作り出せるという点も、ものづくりの効率化に大きく寄与すると強調した。

リードタイムやコストが約90%減

 フィッシャー氏はこうした3Dプリンティングの効果が表れた事例を紹介した。一つは適用が進んでいるという工具や治具を用意するための利用だ。ある自動車メーカでは400種類の工具や治具を生産ラインで使用しているが、それらの多くをFDMなどによる3Dプリンティングで製造しているという。取り付けだけでなく検査や搬送の工程まで含めて、3Dプリンティングによる工具や治具が幅広く使われているとする。

 二つめの事例は、ロボットのアームに取り付ける工具の製作事例だ。米Genesis Systems Groupと共同で開発に取り組んだもので、従来はNC制御により複雑な形状の工具を作り出していた。その作業には4週間のリードタイムと8000ドルのコストを要していたため、3Dプリンティングの技術の採用による改善を検討。同社とStratasysが共同で、従来の部品をFDMでの製造向けに最適化する作業を行った。工具の中の不要な部分などを取り払うことなどで全体の体積を半減。一方で堅さを高めながら、リードタイムは3日間、コストは500ドルへ、それぞれ90%前後削減できたという。

 三つめに紹介した事例は、自動車用部品を製造する米Melronのケース。同社はもともと、ドアやウインドウのラッチなどの試作のシーンで3Dプリンティングを活用してきたが、新たに砂型鋳造での部品製作を始めることになり、その型を製造するのにも利用することにした。従来、切削加工機で3週間、5000ドルを要していた型の製作は、3Dプリンティングによりアウトソーシングすることなく自社で可能になったこともあり、1週間半、2000ドルで可能になったという。

 四つめには独Robert Seufferの自動車制御用ハウジング製造での適用事例を紹介した。Stratasysの3Dプリンティング技術であるPolyJetにより、実際の製品で使用するものと同じ素材を使って製造。コストは5万2725ドルから1318ドルへ、リードタイムは56日から2日へそれぞれ大幅な削減を実現したとしている。

●試作から実際の製品作りへ、3Dプリンティングの用途が拡大した4つの要因
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3Dプリンティングで採算性確認

 一方、エンドユーザ向けの製品では「市場性を確認するために、量産の設備を整える前に10個や20個だけ、3Dプリンティングで作るというのは有効な方法でしょう」とフィッシャー氏は言う。その具体例として紹介したのがPeppermint Technologyの事例だ。

 電力供給が安定していない地域でも電力を得られるシステムを目指し、同社はスーツケース型の太陽電池ケースを開発。実際に3Dプリンティングで試作品を作ったものの、その時点では商品が市場に本当に受け入れられるか自信がなかったという。その状態では量産へ移行することができないため、同社は最初に10台だけ3Dプリンティングで製造し商品として販売。買った顧客からの反応を見て事業の採算性を確認したうえで、本格的な量産化への投資を決断したという。

 フィッシャー氏は「先進的な企業ほど、3Dプリンティングの効果を既に体感しています」と強調。「みなさまのものづくりに3Dプリンティングがどんな利益をもたらすのか、当社にはそれを提案できるノウハウがあります」と自信を見せた。

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