日経テクノロジーonline SPECIAL

第5回 ジェフ・ハンソン氏 インタビュー

デジタルデータから直接ものを作り出すDDMが、ものづくりの世界にどのような新しい可能性を広げるのか。それを展望するうえで参考になるのが、米Stratasysの子会社、Stratasys Direct Manufacturing(SDM)だ。米Stratasysの子会社であった旧RedEyeのサービスに、2014年に買収したSolid ConceptsとHarvest Technologiesを統合して発足したSDMは、全世界で600台以上の3Dプリンタを稼働させる世界最大規模のサービスビューロ。SDM部門を担当するディレクター、ジェフ・ハンソン氏は、短納期に加えて物流削減がSDMにより実現できると指摘した。

ジェフ・ハンソン氏
Director of Global Network Stratasys
Direct Manufacturing

 Stratasys Direct Manufacturing(SDM)は米Stratasysの子会社として、DDMによるものづくりのサービス「SDM On Demand」を展開している。Stratasysの3Dプリンタを多数設置した工場で、顧客であるメーカから3Dの設計データを預かって出力する。単なる出力サービスのセンタではなく、ISO9001や航空宇宙産業企画のAS9100、医療機器規格のISO13485なども取得し、顧客が製品に求める品質を保証することで、DDMをものづくりに活用しやすい環境を整えている。さらにFDM(熱溶解積層法)や光硬化性樹脂を使ったPolyJet、SLS(粉末焼結積層造形法)やDMLS(タイレクト・メタル焼結積層造形法 )など、さまざまなDDMの手法に対応し、顧客のニーズによって使い分けている。

 ハンソン氏によると、現状「SDMに持ち込まれるものの90%はコンセプトデザイン」という。しかし「その段階でエンドユーザのためにどのような製造をすべきか、先を考えながら作っている」とハンソン氏は強調する。コンセプトデザインではなく実際の製品への応用も始まっており、例えば「製品の最初の5%だけDDMを適用すれば、出荷後のデザイン変更のリスクに備えることができる」(ハンソン氏)という。最初の5%が市場で十分受け入れられるの見極めてから、通常の射出成形など大量生産に適した製造手法に移行するのが効果的で、SDMはそのための支援も行っているとしている。

出荷先に最も近いところで製造

 SDMのビジネスがユニークなのは、北米だけでなく世界各地にDDMのサービスを提供する拠点を構えていることだ。欧州の拠点として2003年にベルギーにセンタを設立したのを皮切りに、2004年にオーストラリア、2010年にトルコ、2013年にはブラジルと中国、2014年に中東のドバイに、相次いで拠点を開設している。

 いずれの拠点も、自動車や航空宇宙などの分野でDDMを活用するための支援を行っており、ドバイの拠点では石油やガスの業界に向けてサービスを提供している。2010年に米カンザスに設けたセンタでは、航空分野を対象にしたDDMのサービスを行っているが、試作ではなく最終製品の製造にあたっているという。

 さらにSDMはこれらの拠点をネットワークで結び、顧客に最適な場所で製造する体制も整えている。もともとは拠点ごとの繁閑の差を埋めるために始まったものだが、各拠点を結ぶコミュニケーションツールを開発し、相互に機械を有効利用するようになった。「設計データをある国で処理し、それをネットワークで別の国に送り、出荷先に一番近いところで製造するような体制ができている」(ハンソン氏)という。

DDMは「橋渡し的な技術」

 ハンソン氏はこうしたSDMのDDMのものづくり体制が効果を発揮した事例を2つ紹介した。一つはイギリスの自動車関連メーカの事例だ。同社ではPC/ABS素材でクルマのフロントグリル100個を、14日間という短納期で製造しなくてはならなかった際、SDMのサービスを活用した。STL形式で用意されたフロントグリルの設計データを、3Dプリンタでの出力用にCMBファイルとして変換し、それを3つのSDMの拠点へ送信。それぞれの設備から並行して出力できるようにした。これにより14日間という短納期に間に合わせることができたという。

 もう一つは米国のインターネット検索プロバイダの事例。FDM用の熱可塑性プラスチックであるABS-M30を素材に使って、ハンドヘルド機器を1000個作るという案件だ。それをSDMが担当することになったものだが、製造にあたっての重要な要件の一つが、製造後に組み立てを行うトルコのイスタンブールへ発送するというものだった。

 そこでSDMでは、発注を受けた米国のSDMの拠点で3Dの設計データをCMBファイルに変換し、それをイスタンブールのSDMの拠点へ送信。現地で直接出力し製造したのである。これにより「配送業者に工場まで引き取りに来てもらい、トルコまで空輸するような必要がなくなった」とハンソン氏はその利点を強調した。

 ハンソン氏によるとこのようなSDM流のものづくりは、欧州では「Green Manufacturing」と呼ばれているという。製品を工場で作ってから納品先に送り届けるのではなく、製品を納品先に近いところで作ることで、物流削減を進めてエコなものづくりが可能になるというわけだ。また物流を削減できるということは、配送時のリスクやコストを低減するという大きな利点がある。

 一方でハンソン氏は「こうしたDDMのプロセスは、従来のものづくりを破壊するとは思っていない」とも指摘する。DDMは「橋渡し的な技術」(ハンソン氏)であり、ものづくりの手法を広げることで、新しい価値を創り出す製造業を支援していくという。

Stratasys Direct Manufacturing(SDM)は世界各地にDDMの拠点を置き、ユーザに近いところで製品を作る体制を整えている
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