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日本シーバ

携帯電話のベースバンド処理や先進運転支援システム(ADAS)での画像処理などに用いる超低消費電力DSPコアを提供するシーバ。スマートフォンなどの市場拡大に乗って、絶好調といえる事業実績を記録している。日本でも画像処理の応用システムを中心に、順調に採用を増やしている。機能安全を必須とする車載機器など現在注力している応用分野の動向と今後の取り組みについて、日本シーバ 代表取締役の日比野一敬氏に聞いた。

――ワールドワイドでの事業状況をお聞かせください。

日比野 当社のDSPコアを搭載したチップの世界での年間出荷数量は、10億個を超えるまでになりました。7、8年前には3億個でしたから、順調に利用を増やしています。特に、2015年第3四半期には、ロイヤリティー収入が前年同期比45%増で、過去最大の売り上げを記録しました。世界的に売り上げが増えている理由は2つあります。1つは、LTE対応のチップの出荷数量が主に中国で伸びて、ロイヤリティー収入が飛躍的に増えたこと。Samsung社、Intel社、Spreadtrum社やLeadcore社などのチップに搭載されています。もう1つは、画像処理とコネクティビティの分野で新規のお客様を獲得し、ライセンス収入が伸びたことです。これまでお付き合いのなかったお客様を獲得できたことで、携帯電話以外にも楽しみな分野ができました。

――日本市場の状況はいかがですか。

日比野 日本のお家芸と呼べる画像処理の分野での利用が急速に拡大しています。またM2Mなどインフラ系の通信の分野での採用も増えています。これらの分野は、シーバも応用拡大したいと考える分野であり、方向性が合致しています。先ほどお話ししたように、シーバの世界での売り上げは急増しており、日本のシェアはここ数年15%以上をキープできています。同時に、日本で最も売り上げの大きなお客様は、毎年替わっています。多くのお客様に支えられる事業構造になったことは、着実に強い会社になってきている表れだと考えています。

日本の画像処理ニーズで作った新コア

――特にどのようなアプリケーションが伸びたのですか。

日比野 画像処理では、先進運転支援システム(ADAS)、監視カメラ、デジカメ、アクションカメラ、ドローンなどでの採用が進みました。ゲームやテレビを上回るほど新しいアプリケーションが伸びました。特に社会インフラや安全の確保に向けた機器への応用が増えています。こうした用途では、技術的には高度な画像処理能力が求められ、画像処理用のDSPコア「CEVA-MM3101」の採用が進みました。そして、日本での成功がシーバの開発チームを動かし、日本のユーザーの意見を取り入れて開発した新しいコア「CEVA-XM4」を2015年に発表しました。画像をキレイにする技術と認識技術に関しては、日本企業は他の追随を許さないレベルにあります。こうした業界をリードする技術に合ったアーキテクチャーのDSPで、これからさらに採用を広げていきたいと考えています。

――画像処理への応用に向けて、コアのどのような部分に工夫を盛り込んだのですか。

日比野 例えばADASの開発最前線では、ディープラーニングの利用が進んでいます。そこで使用される膨大な畳み込み演算を効率よく実行できるようにするため、並列度の高いプロセッサーアーキテクチャーや画像処理に特化した命令セット、データのトラフィックやメモリーの消費を減らす工夫などを盛り込んでいます。その結果、CEVA-XM4では、一般的な汎用性の高いGPUに比べて、33%高い性能、1/9の消費電力、1/17のコアサイズを実現しています(図)。こうした、特定の用途に特化したコア開発は、画像処理だけではなく、コネクティビティ、オーディオ、コミュニケーションの分野でも行っています。

図 CEVA-XM4の演算性能、コアサイズ、消費電力の一般的なGPUとの比較
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応用拡大を後押しする開発環境を整備

――IoTシステムのデータを吸い上げる側(エッジ)にも、トラフィックを削減するための高度な処理能力が求められています。応用をさらに拡大していくため、どのような施策を採っていますか。

日比野 お客様が使いたいアルゴリズムを、どのようにシリコンやシステム上で実現するか。そしてやりたいことを反映したコードをどのようにDSP上で効率的に動かすか。そのための開発環境を用意することがとても重要になると考えています。コンパイラ、デバッガ、シミュレーターなどを含む統合開発環境だけではなく、アプリケーションの開発キットの充実にも力を注いでいます。お客様は、SoCの中にあるCPU向けのプログラムは開発するのですが、固有のプログラミング手法が求められるDSPのプログラムは、できれば開発したくないと考えています。私たちはOpenCV、OpenVXに対応したライブラリやCNN向けライブラリを用意し、お客様がフィルターやフォーマット変換などの基本的なソフトウエアモジュールを開発しなくても済むようにしています。また、開発中の画像処理システムを実際に動かしてアプリケーション開発を進めるために、今後は当社のコアを搭載したチップを載せた開発ボードも用意していく予定です。

――2016年には、どのような点に注力していきますか。

日比野 CEVA-XM4を前面に押し出して、自動運転の分野を開拓していきたいと考えています。また、サイドミラーやフェンダーミラーなどに取り付けたカメラで、自動車の周囲を確認するような運転補助機器が、これからコモディティ化してきます。搭載数はこれまでよりも一桁増えるでしょう。そこに向けた市場開拓が大きなテーマになります。直接のお客様は車載用SoCを供給する半導体メーカーになるのですが、開発要件を決めたり、開発環境を使ってアプリケーションを作りたいと考えているのはシステムメーカーです。このため、システムメーカーと話す機会が増えており、今後はより密接に連携していきたいと考えています。

 日本には、画像処理や特殊な通信の処理などに高いレベルの技術を持っている企業が多くあります。いままでソリューションがなくて実現できなかったことが、私たちのDSPコアならば実現できると考えています。日本のお客様のものづくりに貢献できることを目指してまいります。

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