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日本サイプレス

米Cypress Semiconductorと米Spansionが、2015年3月13日に経営統合し、新生Cypressが発足。マイコンやプログラマブルSoC、多様なメモリー、アナログやパワー半導体までカバーする、極めて技術の引き出しが多彩な半導体メーカーが誕生した。日本法人では、充実した人的リソースを背景に、旧2社の製品の潜在能力を引き出せる体制が整った。日本サイプレス 代表取締役社長の長谷川夕也氏に、統合後の事業体制と今後の戦略を聞いた。

――スパンションとの経営統合で事業体制が大きく変わりました。

長谷川 新生サイプレスの世界での売り上げは、旧2社の単純合計で考えると年間約20億米ドルになります。その33%を日本での売り上げが占めます。ほとんどの外資系半導体メーカーでのその比率が10~15%程度ですから、日本市場の重要性は他社以上に高いと言えます。

 半導体業界の一般的な合併では、市場を絞り込み、そこに投入する製品の品ぞろえを増やすことを狙う場合が多いと思います。これに対して新生サイプレスは、品ぞろえだけではなく、市場も拡大できました。旧サイプレス製品は通信と民生、旧スパンション製品は自動車と産業機器が強く、それぞれの製品を違う市場にクロスセールスできるようになりました。

統合の効果は日本が最も大きい

――統合後の日本法人の体制は。

長谷川 新生サイプレスの人員は、グローバルでは7500人です。そのうちの約1000人が日本にいます。営業だけではなく、富士通、スパンションから引き継いだ開発部隊、マーケティング部隊もいます。外資系メーカーの日本法人で、このように充実した人的リソースを持つところは少ないでしょう。

 川崎市の武蔵小杉に本社を置き、国内に合計7拠点を持っています。特に日本の自動車市場で重要になってくる、品質保証、密接したお客様へのサポート、国内でのソフト開発を実現するため、川崎、あきる野、大阪、名古屋2拠点、仙台に拠点を置いています。

――日本での統合の効果は。

長谷川 統合の効果は、日本が最も大きいかもしれません。ソフトを開発できる開発部隊がいれば、特に旧サイプレス製品の販売で大きなバリューを提供できます。ファームウェアやソフトでチューニングできるプログラマビリティ性を持つ製品が多いからです。例えば、USB 3.0 Type-C関連チップでは、規格自体が策定段階にあるため、都度仕様が変わる可能性があります。当社の高い競争力を持つUSB 3.0 Type-C製品はプログラマビリティ性を持っているため、早期市場投入した後に、ハードを変更せずに仕様変更を加えることができます。開発部隊があれば、お客様のこのような開発においても丁寧に支援できます。

 統合の効果をいち早く発揮させるため、統合後すぐに、営業、技術サポート、代理店を対象にして、クロストレーニングを行いました。同時に、新しく展開していく製品では、短期市場投入できる体制を整備しました。

日本企業が強い市場を攻める

――日本では、どのような市場での事業に注力していくのでしょうか。

長谷川 新生サイプレスでは、大きく3つのカテゴリーの製品を提供しています。「マイコン製品」、フラッシュやSRAM、不揮発性など「メモリー製品」、「USB関連の製品」です。日本での売り上げを市場別に見ると、4割強を車載向けが占め、そこではマイコンとフラッシュメモリーを中心に多くのお客様にご採用いただいております。車載向け市場はさらに伸ばしていきます。自動車メーカーとティア1サプライヤーと議論の上仕様を盛り込んで開発した、車載マイコン「Traveoシリーズ」を次世代車に向けて投入していますが、メーター(クラスター)、ボディ系、先進運転支援システム(ADAS)など、それぞれの用途に合わせたラインアップをそろえており、2016年後半から2017年にかけて、この製品が一気に立ち上がると期待しています。

図 新生サイプレスの製品ラインアップ
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――自動車はマイコンが中心ですか。

長谷川 マイコンを中心として、車載のインフォテイメント系では、液晶タッチパネル・コントローラーや、100 Wの電源供給が可能なUSB 3.0 Type-Cの採用が検討され、マイコン以外の製品の引き合いも増えています。また、これまで指紋認証チップは民生機器を中心に使われてきましたが、自動車分野のキーレスエントリーやエンジンスターターなどの認証手段でも利用される可能性があります。新生サイプレスなら、プログラマビリティ性と厳格な品質管理体制を生かして、このような製品も車載向けに展開できます。

――新市場についてはどうですか。

長谷川 IoTに向けて、「Bluetooth Low Energy(BLE)」に対応したSoC製品「PSoC 4 BLE」を投入しており、ウエアラブルやネットワークにつながる白物家電などの開発を支援します。

 新生サイプレスは、マイコンおよびPSoCなどの頭脳部を担う製品から、DRAM以外のほぼすべてのメモリー製品、アナログパワー系の製品など、幅広くラインアップしており、当社製品だけで電子機器を構成できます。システムの大部分をカバーする品ぞろえを背景にして、お客様の製品開発でファーストコールをいただき、最初に提案できる有利な立場になってきました。

 また現在、ARMコア、アナログ回路、パワー系回路など個々の機能を、検証済ブロックで用意し、それらを短期間で組み合わせて、製品を開発する体制も整えています。既に、ARMコア搭載のカスタムチップをわずか49日でお客様に納品した実績があります。こうした、先進的な開発体制を駆使して、お客様のタイム・ツー・マーケットでの製品リリースをお手伝いします。

――2016年の目標は。

長谷川 日本市場での売り上げを2018年までに20%アップする布石を打ちます。自動車はこれまで種をまいた案件が2016年、17年に花が咲いてきます。ロボットや産業機器向けも、現在の十数%から20%へと増えるでしょう。またIoT関連市場は確実に拡大すると考えられるので、そこでのPSoC 4 BLEの応用案件の獲得が勝負どころです。こうした目標を達成するため、日本では、営業、技術サポートの人員を10%以上増やします。新卒の採用も進め、世代交代を視野に入れて、盤石の体制で臨みます。

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